第41話 負けられない戦い

早速囲まれる僕ら。一言言えることは、自身がないということだけだ。

槍をもった連中が、僕らに突撃を仕掛けてくる。

僕はよけられず体にぶっ刺さったが、ダビッドは上手く掴んで奪い、逆にそれで三人ぐらい一気にいった。

ただ、このまま戦うのはつらいとでも考えたか、リーダー格の男を捉え、人質みたいな感じで扱った。が、奴らはひるまず突撃してきたので盾にしかならなかった。

僕らは一旦走って竹藪の中へ逃げ、そこで戦いに挑むことにした。

竹藪の中の戦闘でも、ダビッドの動きに隙はなかなか無い。彼は敵を投げ飛ばしたりして同士討ちさせるようにして戦っていた。


「ボッカス・ポーカス!!」


出てきたのは、巨大マグマスライム。二度目の登場だ。またもや連中は混乱に陥り、逃げることができた。

が、川沿いにきたその時。


「はぁっ!!」


突然現れた一人の剣士の手によって、ダビッドの右肩に剣が、刺さってしまった。

突然の不意打ちに、ダビッドも思はず膝を作く。


「ダビッドさん!!」


「は...ハハハ!これで終わりだな!」


だが、ダビッドは立ち上がり、肩から剣を引き抜いた。


「ここで...終われるかよ...こんなんで、死ねるか!!」


彼の戦いに対する執念は、恐ろしいものだと思った。


「ば、化け物か....」


敵も思はずドン引きだ。そのすきを逃さず、ダビッドは奴の腹におもっきし剣を刺した。


「がはっ!!」


それだけに止まらず、ぐりぐりと、奴の腹に剣をじっくりと味合わせた。


「まだ....まだいるな」


刺すのを止め、再び立ち上がりながら、戦いがまだ終わらない事を察していた。

まあ実際、数歩歩いたらまた敵とエンカウントしたのだ。

しかも、ルーミンの腹心ときたもんだ。

のこぎりのような刃をした薙刀を構え、ダビッドに襲い掛かる。

勝負してみると、案外ダビッド優勢。この腹心、大振りで隙だらけであり、更に薙刀を振りかぶった際、地面に上手く刺さってしまい。飛び蹴りを食らう羽目になった。


「こうなったら.....」


なんとか薙刀を拾い上ると、持ち手部分を急に叩いた。

なんだ?と思っていると、なんとのこぎりのギザギザが飛んできたのだ。

急な飛び道具、だがダビッドには通用しない。彼はその刃を指の間で挟んで受け止め、投げ返したのだ。

投げ返した物は、彼の腹に全てささってしまう。


「なっ.....!?」


奥の手が通用せず、ダメージまでくらった腹心。

それでも諦めず、挑んでくる。が、ダメージの影響で上手く力が出せず、取っ組み合いで首の骨をへし折られ、死亡した。

これで、大体の敵は片付いたか.....。あとは.....。


「素晴らしい、貴方こそ、稀代の英雄だ」


拍手しながら、カムカイが木陰から現れる。


「素手でここまで食い下がった男は今まで見たことがない、それに、隣におられる魔術師も素晴らしい魔法をお持ちのようだ」


ダビッドが構える。僕も、奴の動きを警戒して見た。


「まぁまぁ落ち着いて、私はここであなたと戦うのつもりはない。怪我人と戦うのは、私の道理に反する」


「あのボケどもと手を組んで、散々追い詰めといてよく言うぜ」


「戦いを見ていただけさ、私の部下は誰一人連れてきていない」


それを聞くと、ダビットは彼から目を離して、先へと向かう。


「最後に教えてほしい、あなたのその強さは、一体どこから生まれるのか」


カムカイはダビッドの方を見て言った。だが、ダビッドはそれを無視して進む。それに遺憾の意を感じたのか、カムカイはダビットの前に飛んできて聞く。


「教えてくれ」


「そんなの言葉じゃ表せねぇーよ、失せろ」


このつかみどころのない男、カムカイのことが怖くないのだろうか。

ダビットは彼を押しのけ、先に進んだ。


「.....気をつけたまえ、その道の先に"大白虎”のリーダーチャーロンがいる」


「そうか....そいつは良かった」


ダビッドは一瞬足を止めていった。

散々嗅ぎまわって探したあのチャーロンがいるのだ。願ってもないことだろう。

ただ、剣を持ってないことが残念だ.....。

山道を進み、でかい松みたいな木の根元へ進むと、そこには見覚えのある顔が。

ルーミンだ。その隣にいるおじさんは多分チャーロンだ。


「貴様か....私を散々追い、我がクランを壊滅させたのは」


「ようやく会えたな、チャーロン。直ぐに地獄に送ってやるぜ」


ダビッドはゆっくりと構えた。そこに、ルーミンが剣を構え飛びかかる。

彼はそれを思い切りぶん殴って迎撃した。ルーミンは地面に転がる。

すると今度はチャーロンが、装備している鎖鎌でダビッドを攻撃する。

うまくそれをかわした。ルーミンは心配そうな眼差しで父を見ていた。

その眼差しにチャーロンが気づいたのか、こう言った。


「心配は不要だ、そこで休んでいろ。一人でも勝てる」


ルーミンはそれでも心配だったのか、戦いに入ろうとした。僕も見ているだけというわけにはいかないので、ボッカス・ポーカスをとなえる準備をする。

だが、僕らは突然後ろから現れた男に止められた。

カムカイだ。


「お待ちなさい、彼らは一対一の真剣勝負を行っているのです、邪魔するのは私が許しませんよ」


これにはルーミンも、従わざるを得ない。僕もリスクのあるボッカス・ポーカスを無理に使う必要はないと判断し、彼らの戦いを黙って見ることにした。

2人がまた動き始める。ダビットは上手く懐に入ろうとするが、鎖鎌の攻撃は以外にも素早く、うまく詰められない。

それどころか、腕を傷つけられてしまった。だが、彼は諦めない。


「やはり、このダビッドという男は素晴らしい。惜しむらくは剣を持っていないことだな」


本当にそう思う。剣さえあれば、いくらか有利な状況に持ち込めそうだというのに、残念だ。

チャーロンの鎖鎌攻撃が、ダビッドの肩を襲う。


「ぐっ....!!」


これには彼も怯み、木の枝へ飛び移らざるをえなかった。

するとチャーロンが、その近くの木へと飛び移った。そこから、鎖鎌を投げる。

その紐を、ダビットはうまく掴んだ。それを木の枝へと引掛け、ぶら下がる。チャーロンもぶら下がった。

そして二人は、空中で交差する。

枝は重さに耐えきれず、折れ、二人は地面に激突した。

無理やりな方法だが、これでダビットは距離を詰めることができた。


近接戦、ダビットは縄をつかんだまま、チャーロンに打撃を加えようとするが、奴も鎌の逆の方についている刃の部分で挑んでくる。

ダビットはうまく立ち回れず、蹴り飛ばされた。


「その程度で仇討ちなどできるものか!」


勢いにのるチャーロン。が、物凄い勢いで突っ込んできたダビットに殴られた。しかし、ただ殴られるだけでは済まさず、鎌で背中を切り裂く。

裂けた服から、鎧がチラチラと見えるようになった。これがダビット高耐久の理由の一つか。


「逃さぬ!!」


鎌を投げ、ダビットの腹部分に突き刺し、そのままグルグルと彼の体を宙で回す。

鎧が裂けた。地面に激突した後、彼は鎧を手に持ち、盾代わりに使おうとする。

チャーロンは縄をブンブン回し、攻撃のタイミングを測る。


ブンブンブン......。


三回転回したのち、自ら飛び上がり掛かっていった。

鎌の連撃で、手に持つ鎧を弾き飛ばした。

もはやダビットは転がってよけることしかできない.....。しかしチャーロンに追いつかれ、足で踏まれる。

何度も何度も力を入れて踏み潰す。もうダメだ。


僕はそう思った。彼の体は血が滲みまくりで、限界に達しかけている。


すると後ろから、声が聞こえた。


「ダビットーーー!!」


はっと後ろを見ると、シリーが剣を持ってこっちへ向かってくるのが見えた。

服はボロボロに汚れ、すごい息を切らしている。


彼女は僕の近くまできて、剣を投げた。

ダビットは剣を、うまく受け取る。


「本領発揮か.....」


カムカイが呟いた。確かに、ダビットの戦いはこれからだろう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る