無敵?の剣士編

第38話 襲撃

どうも、カイ・サカグチでございます。

あの出来事からもう何年たったか....もう数えられないぐらいたちましたね。

不死身であることにおいてつらいことの一つです。こうどれぐらいたったかわからなくなることは。


あの本はまぁまぁ売れましたね、おかげで散々な目にあったことも多々あった。もう最悪でした。

カイ・サカグチは僕の本で唯一仮名じゃないからね、しょうがないんだけどね。


最後にこうやって本を書いたのはいつだったか.......。とりあえず、あの出来事以降でもこう.....僕の身には色々あって、それでまた病んでということでなかなか執筆に手が付きませんでした。

心の整理がようやく最近ついたとこなんで色々書きたいと思います。まだ僕の本を楽しみに待ってくれている人はいるのかな?

てかどれから書いたらいいかな、時系列でいくか。


これは、あのローカーウェイでの出来事から3ヶ月たったころだ、僕はとある町でとあるクランに日雇いで雇われた時だった。

仕事内容は襲撃の対応、一体何が起こるのか、精神がおかしくなって変に積極的になった僕はその日、クランの門の前で襲撃を待ち構えていた。

周りのクランの下っ端だか、雇われた連中だかも、緊迫した表情で待ち構えていた。


バン!


門が突如蹴り開けられた。白い服を身にまとった剣士らしき男が、門の前に立つ。

つかつかと中に入ってくる男には、誰も手を出そうとしない。恐らくだが、滅茶苦茶強い剣士なのだろう。

もう目が、オオカミのような鋭く切れのある目をしている。

取り囲むだけで精一杯だ。


その男は、クランの看板に一瞬目をやったあと、そこに飛びつき、看板を真っ二つに切断した。

何が目的なのだろう、よくわからない。

するとようやく、クランの主要メンバーかなんかが建物の中から現れた。

男はそれをみて剣を鞘に納め、やっと物を言った。


「チャーロンはどこだ?奴に用事がある」


誰も何も返さない。武器を構え、じっと彼を見ていた。

チャーロンは、このクランのリーダーだ。


「奴に.....決闘を挑みに来た」


ゆっくりと、その男は主要メンバーの前へと歩み寄る。


「なぜ決闘を....?」


震えた声で、誰かが聞いた。


「仇討だ」


はっきりと、彼は言った。


「ハァ!」


誰かが意を決して、彼に飛びかかった。

だが彼は目にも止まらぬ速さで剣を抜き、腹を切った。

取り囲んでいた連中は、今の早技におそれ、一方引いた。


「誰の....仇討ちなんだ.....?」


また誰かが聞いた。


「ああ、それはチャーロンに聞いてくるといい、とりあえず、奴をここに出せ、出さないのなら俺から行く、邪魔をするのなら切ってやる」


彼の目には、覚悟が写っている.....。多分だけどぜってぇ勝てねぇ。


「ふん!合わせるまでもない.....貴様はここで死ぬからな」


これを聞いた時、周りの連中は皆(まじかよ.....)みたいな苦悶の表情を浮かべていた。報酬がやけに高かったのはこういうことか。

何人か、既に逃亡している。賢い選択だ、残りは自分の実力を知らない馬鹿だけだ。


「やれ!」


号令と共に、一斉に全方位から切りかかった。だが、彼の力強く素早い斬撃に、剣の先端部分が折れ、色んな方向に飛んでいった。

破片が、僕の太もも辺りに刺さった。痛い。


「ええい!」


事前の打ち合わせ通りに、建物の近くにいたやつらが槍を投げて男の周りにいる奴に渡した。が、奴らは受け取った瞬間に切られた。

この作戦、意味あったかなぁ....。ちなみに僕は切りかかる役をやってた。

槍をもった瞬間、腹を思いっきり裂かれた。痛い痛い。


「死にたくなければチャーロンを出せ!」


下っ端は全滅した。建物の前にいる主要メンバーに詰め寄る男。

もうこれ駄目だわ、素直にチャーロンを出した方が身のためだと僕は思う。


だが、奴らは無謀にも挑みかかった。なんかもう馬鹿らしいので、僕はこいつらの味方として戦うことを止めた。

血の池で立ち上がり、観戦を始める。

飛びかかったり、真っ正面から挑みかかったりしているが、すべていなされている。

背中切られたり、さやで剣を抑えられた後腹を刺されたり、振り上げで切られてそのままの勢いで建物に突っ込んだり散々だ。

とりあえず、見ているだけというのもアレなので、ボッカス・ポーカスを唱えることにした。


「フッ....ボッカス・ポーカス」


自分がこの時誰の味方をしてボッカス・ポーカスを唱えたかは分からん。何というか、変なテンションだった。自分以外の人間が必死に戦っているのをあざ笑うかのような行動をしているということは全く自覚していない。

魔法陣からは......なにも出てこなかった。

たまにあるんだよね、こういうこと。

戦っていた連中は一瞬びっくりして僕の方を見たが、なにも出てこなかったのを確認すると、見なかったことにするかのような反応をして戦い始めた。

まぁ、無視するのも無理はない。この時の僕は血まみれだ、時期に死ぬだろうとか考えられていたに違いない。


「ぐぁっ....!」


男はクランメンバーの大柄な男の腹に剣を刺し、それを盾に、建物へ入ろうとした。

その他の連中は、なんとか打ってかかろうとするも、大柄な男の体から剣をぬいて、その男が倒れるのに巻き込まれた。

滑稽なものだ。

僕は一人後ろから見ていて思った。

戦闘の場は建物内に映る。入った先の訓練場の中には、一人の女性が突っ立っていた。使用人か何かかな?とりあえず戦えるような格好では見た感じ違った。

クランのメンバーは、あたふたする彼女を守るような動きを取る。

が、一人肩辺りを切られた。切られた男はのけぞって、尻餅をついた。その男に、彼女が駆け寄る。だが、傷は深い、もう話せる状態ではなかった。

その様子をみて、彼女は遂に覚悟を決めたような表情を見せる。

最後に残ったクランのメンバーは、顔を切られた。のけぞって、僕の方へと下がる。

彼は僕に気づいて、手で自分の顔の傷を抑えながら言った。


「彼女を....助け....ろ」


うーん.....まぁ女性が目の前で切られるのはあまり見たくないもんだ。

彼女は倒れたクランメンバーの剣をもち、挑みかかる。


「分かりました」


クランのために戦うのはあまり気分が乗らないが、まぁ女性のためならいいか。

不死身であることでの利点の一つ、簡単に自分の身を投げ出せることだ。


「ボッカス・ポーカス!!」


まさか連続でスカはないだろう。

何か、なにか出てきてくれるはず......。

出てきたのは、鍬、角スコップ。使えねぇ、これなら剣をもった方がましだ。

しかも彼女の気を引いて、一瞬の隙を作ってしまった。男は彼女の腹に蹴りを浴びせて柱にぶつけ、刺しにかかる。

しまった。

寸前のところで、僕の隣にいたクランのメンバーが彼女の前に立ち、身代わりになった。


「うぐく!!」


おもっきし腹刺された。


「早く.....お逃げください」


彼女は僕らが入ってきた方へと全力で逃げた。

男はまあいいか、みたいな顔をして彼女が逃げるさまを見た後、奥の部屋から現れたクランメンバーと戦闘を開始した。

戦いは一瞬だった。僕も鍬をもってもっかい接近戦挑んだんだけど、また腹を切られた。

もうマジで、相手になってない。一番善戦したのはあの女性だったって思うぐらいクランメンバーは話にならないのだ。


にしても、この剣士の男は一体なぜここまで殺戮の極みを尽くしてまで仇を取りたいのか、僕は興味が湧いてきた。

どれだけ大切なものなのだろうか、家族か?恋人か?僕は彼に聞いてみた。


「貴方、誰の仇を取りに来たんですか?ここまでして、取りたいものなんでしょうか?」


男は僕に背を向けたまま、黙っていが、急に振り向いて、答えた。


「そんなことより、俺は逆にお前に質問したいね......なんで死なねえんだよ、二回切ったぞ、同じとこ」


実際、僕は彼に二回とも腹を切られた。


「まぁそれは一回置いといて.....話してくださいよ、気になるんです」


僕は彼に近づきながら言った。痛みがまだ残っているのでフラフラだ。


「気味悪りぃ、俺に近づくんじゃねぇよ」


そんな僕を蹴り飛ばし、吐き捨てるようにしていった。

僕はなんだか何かにとりつかれたかのような執着心を持っていた。今思えばなぜこんな男にここまで興味を持ったのか、意味が分からない。


男は建物内に誰もいないのを確認した後、外へ出ていった。

僕はそれについていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る