第17話 恥ずかしい体験

再び僕らは、トンを探し始めた。

だが、中々見つからない。いったいどこへ行ったのか.....

道中、モンスターに何回も出会った。


「ア”ア”ア”ア”ア”-ッ」


「アアアーじゃ」


「耳が痛い......うるさくないんですか?」


下級悪魔類のアアアーが襲ってきたり。


「ルーッ」


「下あごがない....キモッ」


「マレ....久しぶりに見たな」


下あごがない猿人系モンスターのマレに出会ったり。


「うわっ!!何こいつ眩しいッ!!目が痛い」


「うぉっ....これは流石にきついな.....」


アーセテカなんとかと言う見ているだけで目が潰れるぐらいの光を発するヤバいモンスターにめぐり合ったりした。

このモンスター達は、全てジジイに討伐された。


結局見つからないまま、夜になってしまった。辺りは真っ暗で、足元もよく見えない。ていうか松明とかそういうのも持って来てない。こんな状況でモンスターに襲われたら大変である。


「困ったのう......足元すら見えんくなった....」


月の光も木の枝や葉っぱにさえぎられている。


「こりゃいかんな、ハハハハハッ」


「笑ってる場合ですか、なんとかしないとモンスターに命取られますよ」


帰ろう、という気は、夕方になっても全く起きなかった。一人頑張ろうとするトンに、心が引っ張られていたのかもしれない。いや不死身だから、そういう感覚がぶっ壊れてただけかもしれないが。


「おい、いい考え思いついたぞ」


「なんですか?」


「お前のボッカス・ポーカスって、魔力関係無しに無限に唱えられるんじゃろ?」


「そうですけど......」


嫌な予感がした。爺さんが今考えてることが、なんとなく分かっているからだ。


「だったら唱えまくって、その時に出る魔法陣の光を使えばいいじゃないか?」


魔法陣から出る光は結構強い、着眼点はいいが、危険すぎる。


「ダメですよ、危険すぎます」


「暗闇でモンスターに襲われる方がよっぽど危険じゃ」


「でも....」


「いいからやるぞ!!、お前不死身じゃろ?何を恐れる?ワシの身か?ありがたいが、そこら辺は覚悟できてる。もしこれでワシが死んでもお前を呪ったりしない。約束するよ」


強い押しに負けて、使うことになった。ああ....最悪だ。

恐る恐る唱える。


「ボ....ボッカス・ポーカス....」


唱えた瞬間、魔法陣からの光で周辺が明るく照らされる。


「おー、こりゃあいいぞ!!」


爺さんは辺りを見回して、次に進む方向を決めようとしていた。

さて、問題は出てくるものだ、でできたのは.......かなりまずいものだった。


魔法陣から、煌びやかなデマンターの防具や剣らしき物が出てきていた。おっいいの出たじゃん、ラッキーと思って手を伸ばし、取るその瞬間。

僕の手の甲に切り傷ができた。最初は意味が分からなかった。誰に切られたか、最初は分からなかった。ガシャンガシャンと音がする。はっ、となって数歩下がった。


鎧が勝手に自立している.....この防具、モンスターなのだ。


このデマンター製の防具の正体は、ヨータンクイチャーと呼ばれるモンスターである。こいつの特徴を一言で言うなら自立行動する鎧、と言ったところである。非常に面倒なものを出してしまった。

魔法陣が消えゆくこの状況、真っ暗になれば奴の姿は見えない。その前にここを離れなければ。

僕は爺さんの後ろに姿を見かけると、声をかけながら一目散に走った。


「チャウさん!!モンスター出ました!!早くいきましょう!!」


「何!?どこじゃモンスターは?早く照せ!!」


声は別の方向から聞こえた。爺さんの服装がみすぼらしいから木の幹と見間違えたわ。

もうこれ以上唱えたくないが、やるしかねぇ。


「照らせこの大地!!ボッカス・ポーカス」


再び魔法陣が現れ、森林はその光に照らされる。ヨータンクイチャーも暗視能力はなかったのか、元の位置から動いていない。爺さんは....クイチャーを挟んで向こう側にいる。


「こいつかぁ!!」


「チャウさん!!ここは無視で行きましょう」


僕は爺さんの攻撃を辞めさせて、全力で走った、クイチャーの移動速度は遅い、巻くのは簡単だった。

爺さんに合流した後、僕はそのままボッカス・ポーカスを唱えながら走った。魔法陣から枕、ボンシャン・アンボンシャンクスダマ、縄文土器とかでたが、全部スルー。もったいない。


走っていると、木々の間から光が見えた。


「チャウさん、なんか光が見えます」


「おお、もしかしたら民家かもしれぬ、行ってみよう」


少量の光、僕たちは蚊のように、この光に引き寄せられる。こんなモンスターがまあまあいる山奥に家を建てるなんて、怪しさを感じる。

近づくと、話し声が聞こえた。家の中から、と思ったら、以外にも近くから聞こえたので、僕らは草むらに隠れながら移動した。


「ハハハ....イェン様の作戦はうまくいきそうだな」


「早くヤッてくんねぇーかな、こんなモンスターだらけの場所に待機なんてキツすぎるぜ」


ヤッて、とはどういうことだろうか、注意深く顔を上げて声の主を見ると、その正体は赤服だった。となると、もしかしたらトンが絡んでいるかもしれない。


「誰じゃった?」


「赤服でした」


「そうか、なら早いこと倒して家の中を覗くとするか」


爺さんは静かに近づき、赤服どもを音を立てずに成敗した。

僕らはそのままほかの見張りも同じように撃破し、家に近づく。

窓をそーっと開けて、中を見た。中にはベットに仰向けに寝そべっている上半身裸のトンと服を脱ぐ女性の姿があった。ああ、ヤバい、色仕掛けだ。


「アノ.......ヤッパリヤメマショウコンナコト」


「イインデスヨトンサン.....シバラクダレニモアワナクテ....サビシイオモイヲシテタンデスカラ....オネガイシマス」


ヤるってこういうことかよ、トンは困惑している、まあ彼は童貞だろうからね、戸惑っちゃうよね。

こんなシチュエーションで気持ちよくやれると思ったら大間違いだ、僕はこの世界では当然童貞だが、あっちの世界ではそうではない。絶対にこれは怪しい、女の顔がしめしめと言わんばかりのニヤつき顔だ。自分のことを19だと言っておきながら17歳だった脅迫ビッチを思い出す。


「このままやらせるか?」


「とりあえず、様子を見ましょう」


ちょっと興味があるのでみる事にした。童貞の筆おろし、一度見てみたみたかった。


「ジュンビデキマシタ.......」


女が薄着でベッドの方へゆっくりと向かう、よく見ると、後ろで組んでる手に、ナイフが握られていた。


「やっぱ助けます。ボッカス・ポーカス唱えるんでそれを合図に家ん中に突入してください」


「気の毒じゃなトン........」


殺そうとしていた証拠が取れそうなので、やっぱりおっぱじめる前に助けることにした。


「ボッカス・ポーカス......」


小声で家の中に唱える。頼むから程々なの出てくれ......


「な、何なのこれ!?」


家の中に急に魔法陣ができたので、驚くイェン。


「サカグチさん.....」


流石トンさん、僕が魔法を唱えるのを間近で見ていた経験があるからか、すぐに僕だと分かってくれたみたいだ。

僕が唱えたのに合わせて、爺さんが家に入る。


「トン!!そいつは大臨会のメンバーじゃ!!」


「なっ!!?」


イェンはばれた!!と言わんばかりの驚き顔を見せ、ナイフでトンに襲い掛かった。だが直前でトンに交わされる。

一方魔法陣から出たのは、青銅でできた防具だった


「ハハハ、残念だったなぁ、色仕掛けとはお主も考えたもんじゃがな」


「フン、たとえ作戦が失敗したとしても、あなたたちを殺せばいい話よ」


イェンは近くにあった包丁をとり、ナイフと包丁の二本で爺さんと戦い始めた、だがイェンの攻撃は交わされ、爺さんに隙をつかれて腕をねじられ、蹴り飛ばされる。


「グッ.......」


「遅い遅い、それじゃワシに傷一つも付けられん」


爺さんは青銅の兜を手に取りながら言った。僕も家に窓から入る。


「サカグチさん.......あの....」


「謝らなくていいさ、気持ちは分かる。次気を付ければいいさ」


童貞だからね、しょうがないよね。恥ずかしいのか顔が赤くなっている。落ち着いたのか、しょげくれた様子もない


「部下も全部やられたのね.....覚えていなさい!!大臨会は財宝を決して諦めないからね!!」


イェンは家から出ていった、あの様子じゃフェイより雑魚だ。


「ハハハ、いつでもかかってこーい!!」


爺さんは兜を被って、イェンに手を振りながら言った。余裕があるっていいよな。

僕らはこの後、この家に止まった。トンは考えが変わったのか、僕らを避けようとはしなくなった。

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