大臨会編
第11話 財宝を奪........守れ!!
転生者の諸君!!あれから二ヶ月ぐらいたったが、私宛の手紙とお金が全く来ないではないか!
私はどうなってもいいのか!、そうかそうか。不死身だから大丈夫ってか。
私の肉体は確かに不死身だ、だが精神は普通の人間ぐらいだから疲れもするし病みもする。
君たちに人の心があるのなら、一刻も早くお金と励ましの手紙と君たちのハーレムの中から女を一........
何でもないです、お金だけでいいだす。
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女の子は無事に母親と再開することができた。
ギルドの冒険者どもは僕たち4人が無事に、ましてや誘拐された女の子の母親を無事に救出するなんて思いもしなかったようだ。皆、目を丸くして驚いていた。あの洞窟カップルもね。
ちなみにジジイが持ち帰ったヤオグの首は鑑定の結果、魔王軍幹部でも何でもないただのオークの群れのリーダーだろうという結論が出た。人間をさらった理由を一切話さなかったヤオグ一味の謎は、より深まった。
あいつらはなぜ人間をさらったのか、魔王軍との繋がりがないとなると、何処で魔法を覚えたのか。
「魔法を扱うオークがいた」
この話はじわじわとボベダ村から周りの村や都市に伝わり、転生者をはじめとする冒険者がそこそこ村にやってきて、森を調査したり、ジジイやワンさんに話を聞いたりしていた。
誰も僕に話を聞こうしないのでと寂しさを感じる中、僕はこう考えていた。
魔法を使うオークは全部倒しただろうし、時期に冒険者は減っていくだろう。
しかし一週間後、ボベダ村に来る冒険者、いやそれ以外にもやって来る人は増えた。
なんで増えてんだよ、僕がこの村に滞在している理由は人が少なくて静かだからだ、それに冒険者以外余り村の中を出歩かないから僕を姿を見る人は大体決まっていて、もう見慣れているから驚いたり笑ったりするやつはほぼいない。
寂しさをたまに感じることがあったが、それでまあ、よかったのだ。
だが今は一本外に出歩けば村の中には人、人、人、前までいなかった商人もいるし、露店だって立ち始めた。
おかげでクエストを受けに行くときなんか白い目で見られまくりである、これは非常に気分が悪い、つらい。
ワンに話を聞いたところ、最近この村が賑わっているのは、「この村の北の山に財宝が隠されている」という噂が流れているようだ。
こんな胡散臭い噂で多くの冒険者やら商人が町に来るのはおかしいと君たち転生者はおかしいと思うかもしれない、だが、僕には彼らの気持ちがわかる。村にやって来た冒険者のほとんどはみすぼらしい格好をしている。僕のようにパンツ一丁まではいかないが、ぼろい服だったり、穴が空いた兜を被っていたり、お粥の露店に行列を作ってたり。
彼らはなぜ貧乏なのか、それは我々”転生者”が原因となっている。
この世界にやって来る転生者は大抵、といっても自分以外だが凄まじい才能をもってこの世界に転生してくる。剣技・魔法の才能がずば抜けていたり、商才があったりと......とにかくどいつもこいつもすごい奴ばかりで今の有名人の大半は転生者ばかり。
様々な国の王族・貴族はそんな転生者との繋がりを得ようと、自分の娘を嫁がせているから女もウハウハ、異種族との間を取り持つ奴もいる。正に人生ネット小説の奴が沢山いるわけである
んで、そんな才能がない原住民冒険者のほとんどは貧乏、美人だったりイケメンな奴は転生者の子分として力を持てるケースもあるが、そうでない奴は噂を真に受けてこんなシケた村へ宝探しにやって来るというわけだ。
とにかく、この噂を信じないで家に籠るという手段もあるが、冒険者たるもの、少しぐらい調査はせねばなるまい、別に財宝の存在を信じているわけではない..............違うもんっ!僕信じてないもん!!
財宝は確か北の山に隠されているとかいってたか、そういえばトンが住んでいるのも北の山だったか。
トンから何かしらの情報が得られるかもしれない.......というわけでトンに会いに村中を探したがトンはいなかった。思い返せば、外からやってきた多くの冒険者が村にやってきてから彼の姿を見ることはなかった。
これは......絶対にトンが何かを知っているに違いない。
僕は北の山に向かった、トンの家を見つけるまで帰らない事にした。不死身だから飢えて死ぬことはない。たとえ他の冒険者が見つけるのを諦めたとしても、とりあえず探してみるつもりだ。
山に入ってから一週間ぐらいたった日の昼
「へへへっ.......持ち物全てここに置いて行ってもらおうか........」
最悪だ......
川沿いを歩いていた昼頃、僕は山賊に出会ってしまった。山にやってきた貧乏な冒険者は、こいつらのいい餌だろう。身ぐるみ剝がされて刺殺された冒険者の死体を見てから僕もなんとなく気を付けていたが、ついに見つかってしまった。
黒い布を顔にまいた5人の山賊が僕の周りを取り囲んだ。手には小刀が握られている。
こんな事自分で言うのもなんだが、僕から奪えるものなんて何もないはずだ。相変わらず服はパンツ一丁、ボロボロの布きれをマント代わりに羽織っているだけである。持ち物はボッカス・ポーカスで出た木の棒一本。
言ってて悲しくなるが、こんなの奪ってもしょうがないだろう。
僕は手を挙げて、無抵抗を示した。山賊相手じゃ無意味だと思うんだけどね。
「あなた達に差し上げられそうな物は持っていません......どうかお見逃しください......」
その場にひれ伏せて、祈るように言った。僕は無駄な争いを好まない、このやさすぃ性格は転生者特有の日本人の血が......
「そう言ってぇ!!そのパンツの中に金でも隠しているんだろぉ!!おれの目はごまかせねぇ!!!!」
駄目だこりゃ
こいつらは飢えで頭がおかしくなっている。所詮貧乏人からしか身ぐるみを剥げないからこの連中の懐はいつまでたっても豊かにならない。それ故に彼らは山賊行為を続けるのだ。
「やっちまえっ!!!」
連中が飛びかかってきた、彼は小刀を僕の体目掛けて振り下ろす。奴らの思考は単純だ、こんな攻撃などひらりとかわせる........はずだが、僕の思考に体の反応が追いつかない、一週間何も口にしていない影響なのだろうか。
背中と後頭部が切られた。いてぇ
「満身創痍だ!!トドメをさせっ!!」
僕にトドメを刺そうと飛びかかってくる山賊に、すかさず振り向いて唱えた。
「ちきしょう!!ボッカス・ポーカス!!!」
人相手に使うのは未だに抵抗があるこの”ボッカス・ポーカス”、果たして今回はどんな結果になるのか。
「なんだありゃ!?」
切りかかってきた山賊の一人が指を指して言った。その指の先を見ると、そこには「くす玉」のような物が宙に浮いている。
戦闘には役に立たないが、非常にいいものがでたっ!!やった!!うまくいけば財宝が手に入るっ!!!
読者の諸君!!!あれはボンシャン・アンボンシャンクスダマと呼ばれる(神曰く)物で、あのくす玉が割れると「財宝」もしくは「爆裂魔法」が出てくるくす玉だ。
財宝が出れば.........最高だ、「デマンター」「スグワルド」「クリマダ」等の高価な鉱石が沢山出てくる。出てくればの話だが。
一方、爆裂魔法の場合はそこら辺に爆裂魔法の魔法陣が展開されて、次の瞬間、吹き飛ぶ。僕はこれでとある貴族の屋敷を一軒ダメにした。
山賊どもは突然現れたくす玉に目が釘付けになっている。今のうちに逃げればいいのだが、この時僕自身もくす玉に目が釘付けになっていた。
宙に浮いたくす玉の真ん中に線が出た。これはもうすぐで割れることを表している。果たして中から現れるのは”幸福”か”壊滅”か、一同唾を飲んで見守る。
くす玉が線を中心に真っ二つに割れた。中から出てきたのは..........
「おい見ろっ!!!玉の中から光った石が出てくるぞっ!!」
「あ........ありゃデマンターにクリマダに.......スグワルドまであるじゃねぇか!!」
「信じられねぇ!!拾え拾え拾えーーっつ!!!!」
空から降ってくる煌びやかで色とりどりの宝石に心奪われた山賊は、僕を無視して一斉にくす玉の真下へ向かった。
この宝石をすべて売れば、お金持ち、いや貴族と張り合えるぐらいの財力は確保できるだろう、まぁ仲間割れ必須だが。
「イヤッホゥ!!」
山賊の一人が石で敷き詰められた地面に落ちたデマンターを拾おうとしたその瞬間。
「なっ.....!?」
サッと横から手が出て、デマンターを横取りされた。
ほかの山賊も横取りされたようで、啞然とした表情で宝石を横取りした犯人を見る。
その視線の先には、激しく息をしながら宝石を拾い集める僕の姿があった。
この時の僕の思考は全て宝石に奪われていたのだ。ここで宝石を拾いに行ったら山賊に刺されるだろうとかは全く頭にない。僕はただただ宝石を拾って、売って、ウハウハすることしか考えていなかったのだ。一種の極限状態というやつである。
僕は羽織っているマントを包みに使って、宝石を拾って、そこに入れた。拾う早さは職人並だ。
山賊どもは当然、激昂した。
「てめぇ何しやがる!!、その宝石は俺のだぞ!!一丁前に拾ってんじゃねぇ!!!!!!」
彼らから罵倒、怒号が飛んでくるが、僕は全く動じない。
「なめやがって!!殺すっ!!」
しびれを切らした一人の山賊が、刀を持って僕に飛びかかってきた。
「オラァ!!」
山賊は僕の脳天目掛けて刀を突き刺した........がうまく突き刺さらない。僕も宝石を拾うのを止めない。
「なっ......!?」
何度も何度も力一杯刺そうとするが、刺さらない。
「どうなってんだ.......」
なぜ刺さらないのか、それは僕の骨は折れない、砕けないようになっているからである。神の不死身の呪いによって、僕の骨はこの世界の物質の中で一番固くなっている。
山賊はその場に尻餅をついた。
「ななな...なんだこいつ!?」
ようやく僕の異常性に気付き始めたようだ。
「おいっ、どうした!!」
仲間たちが駆け寄る。尻餅をついた山賊は震えながら語る。
「ああああいつおかしんだ......さ、ささらんん........」
「なにおかしなこと言ってやがんだ、お前ら!!あいつを殺せっ!!」
三人の山賊が再び僕の周りを取り囲んだ。
「覚悟しやがれッ!!」
直後、僕の体を三本の刀が貫いた。赤黒い血が噴き出て、山賊の服はやや赤く染まる。
僕の体からは血が流れ続け、地面の宝石を赤く飲み込んだ。もはや全てが赤く染まり、宝石と石ころの見分けがつかない。
だが、僕は石だか宝石だかわからない丸い物体を、僕は拾い続けていた。
「え...........」
その場にいた山賊全員が固まる、生きている、いや動いているのは有り得ないと考えていたのだろうか。
「なんあななんで死なねえんだよ......」
顔が青ざめる。
「ば、化け物........ウォエッ......」
吐く。
「こいつは.........貧乏神だ......俺たちにとりついてきやがったんだ......そうに違いねぇ!!」
僕を貧乏神呼ばわりするもの。山賊たちはそれぞれ違う反応をみせた。
「貧乏神なんて.......冗談じゃねぇ!!不幸の極みだ!!ずらかるぞっ!!」
5人のうち4人は川沿いから山の方へ逃げ去った。残りの一人は宝石を諦められないようで、おろおろしている。
そして
「よこせっ!!」
僕の元から宝石とかが入った包みを奪い取り、逃げ始めた。
「がえ”ぜえ”え”え”え”え”っ」
僕は奪われたショックと痛みからこの世の終わりを迎えたかのような叫びを上げる。
走ろうにも体が上手く動かない、滅茶苦茶痛い。
(誰か......誰か助けてくれ........)
そう思ったその瞬間。
草むらの中に入っていったはずの山賊が、宙に浮き、地面に叩き付けられた。
彼が持っていた包みも川の方にぶっ飛ばされて、中の血みどろの宝石が宙を舞う、血に包まれながらも太陽の光を反射して魅せる耀きは、残酷で、美しいものだった。まあその後川にドボンだけど。
草むらの方も見ると、見覚えのある男がいた。
「サカグチさん!?サカグチさんじゃないですかっ!!大丈夫ですか!?」
彼の名は......トン。心優しき青年である。
まあ、知ってるだろうけど。
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