第10話 救出作戦の終わり

やっちまった。

何で僕はこんな大事なことを忘れていたのだろうか。

伝説の剣を出したときにこの先十回分の運をすべて使い果たしてしまっていたのだ。

いいものが出るはずないのだ。


魔法陣は赤く輝いた。

通常の魔法陣の色は黄色で、赤と言うことは運がない事を示している。


心の中で思うことはただ一つ


”頼む!なるべく軽いものにしてくれ”と。


悪いことと言っても最悪レベルの物とそうでないものがある。最悪なのはどんなものなのかというと、


この辺一帯が爆発で消し飛ぶ。


もしそうなったらヤオグは殺せるかもしれないが、自分以外全員死ぬだろう。

それだけは避けたい。


魔法陣が消えていく.....ということは何かが出る直前の印だ。

この時僕は魔法陣に目が釘付けで、周りの様子など一切気にしていなかった。

トンの攻撃する準備は整ったか、それも見てなかった。


出てきたものは_____木のぼっこだった。


コロンと、そんな効果音が聞こえてくるかのような出かただった。

最悪な物が出なかったことにホッとしたのも束の間、トンがヤオグに切りかかった。が、


「馬鹿め!!貴様らの作戦は見破っておったわ!!」


ヤオグはすぐさま魔法を唱えた。そういやさっきからこいつは無詠唱で魔法を唱えやがる。

トンの体に、鎖がまとわりついた。


「ぐっ!!しまった.....」


鎖に体を締め付けられ、苦しい表情をするトン。


「ぐははははは!!いい刀を持っていたのに....使い手があれじゃなぁ」


ヤオグはのしのしとトンに近づく。

まずい!!このままでは剣を奪われてしまう!!


すると爺さんがトンに目掛けて飛びかかり、剣を使って、チェーンをといた。


「あ、ありがとうございます.......」


「お礼はいい、とりあえず距離を取るぞ」


二人は高く飛び上がって、ヤオグと距離を取った。

するとヤオグは歩みを止め、ビックリしたような様子で


「ほう....そんなことまでできるのか.....その刀、ますますほしくなったぞ!!」


伝説の剣に対する興味を深めた。

剣が奪われたら確実に負ける........このことはトンや爺さんも分かっていたのか、2人ともヤオグから一定の距離を置き始めた。


「どうした......もう根を上げたのか?ならばこちらからいくぞ!!」


ヤオグは手で丸を書くように動かした。すると、二人の周りに金属で出来た柵が立ち始めた。


「いかんっ!直ぐに逃げるぞ!」


「は、はいっ!!」


二人は再びジャンプして逃げようとしたが、遅かった。


「ぐおおおおおおおおっ!?」


二人の体に電流が流れたのだ。

二人は耐え切れず、その場に膝をついた。まずい、まずいぞこれは、主力二人が閉じ込められてしまった。


「がははははっは!、同じ手で逃げられてたまるか!その柵の中では動くと電流が流れる。これ以上苦しみたくなければじっとしているんだな」


ヤオグが再びトンに近づいていった。なんとかせねば。

運が無いので気が進まないが、あれを使わざるを得ない。

僕はヤオグの背後に近づいて唱えた。


「なんとかなれ!!ポッカス・ボーガスッ!!」


すると、目の前がいきなり真っ白になった。

そうなった瞬間、僕はちょっとビックリしたが、こうなったことが前にもあったことを思い出した。

そう、何が起こったのかというと、”爆発”したのである。


「ドガーーーン!!」


直後、物凄い轟音が僕の耳の中に響いたかと思えば、その爆音は直ぐに聞こえなくなった......鼓膜が破れたのである。

体もぶっ飛んだ、僕の体は常に五体満足であるように強く作られているので手足は吹っ飛ばなかったが、死ぬほど痛い。

痛みというのは、いつになっても慣れない、この時は痛すぎて、死んだ方がましだと思った。

僕の体はそのまま、さっきとは別の民家に突っ込んだ。


ヤオグは、二人はどうなったのだろうか。


僕は体の痛みよりも、そのことを心配した。

だが、確認することはできない、この時の僕は聴覚、視力共に失ってしまっていたからだ。

だか、偶然にも僕が突っ込んだこの民家の中にはワンが隠れていた。彼はこの時、真っ青になって冷や汗をかいて恐怖に震えながら、僕に声をかけた。


「さ、サカグチさん........だじょ、大丈夫ですかか.......」


大丈夫なわけないだろ。彼は多分、目の前の現実を受け入れていなかったのだろうか。

ワンはそう言いながら、恐る恐る僕の体に触れた。


触れられた時、僕は恐怖を感じた。

誰に触れられたのかわからなかったからだ。

さっきの爆発でヤオグは死んで、味方に助けられているのか、それとも爆発に耐えたヤオグが僕を叩きのめそうとしているのか、でも触り方が恐る恐るだった為に、味方が触っているのがなんとなくわかった。

消え入りそうな声で、僕はなんとか答える。


「ボ....ボクァ..ダ、ダジョウブダ......」


耳が聞こえないから正確に喋れていたかとても心配だったが、ワンにはこう聞こえていたらしい。

ワンはこれに安心して


「よ、よかった......それよりも何が......二人はどうなったんですか!?」


僕が偶然にも質問に答える形の発言をしてしまった為に、ワンは更に僕に質問をした。

だが、その質問は僕の脳までとどかなかった。


その時、外から叫び声がワンの耳に届いた。


「おのれええええええええええええっ!!」


叫び声の主はヤオグ、彼はなんだかんだいって爆発には耐えていた。モクモクと立っていく煙の中から、ゆっくりと立ち上がる。

だが、背中は思いっきり真っ黒こげでダメージは大きく、このことは彼にとって耐えが固い屈辱だったらしい。


「くそ....やっぱりあの魔術師は意味不明だ.....ボッカス・ポーカスがどういう魔法か未だに理解できん......」


部下(女オークだと思う)から色々聞いていたのかこんなことを呟いていたらしい。

この魔法の全てを理解するのは、僕にだって無理だ。


トンと爺さんは、迫りくるヤオグが盾の役割を果たしたのか、なんとか無事だった。

ヤオグがぶっ飛んでどっか行った隙に、伝説の剣で電流を我慢しながら柵を切って脱出し、二人はお互いを支えあって、ヤオグがぶっ飛んでいった方向を見る。


「やったかのう.......?」


その発言は駄目だ爺さん。


「サカグチさん....」


トンに心配かけさせすぎだろ自分......


「なあに心配はいらない、あいつは脳天にお前さんの飛び蹴りを食らっても平気なつらしてた頑丈な男だ」


それとこれはレベルがちげーよ。


するとこちらに、歩み寄ってくる3mの物体を二人は見た。ヤオグである。


「お前ら....許さんぞマジで..全員まとめて殺す!」


ヤバイ、本気で殺しに来てる。

ドスドスと大きな足音を立てて向かってくるヤオグ。


「こうなったらやけくそじゃ!!」


爺さんは、そのヤオグに向かって伝説の剣を投げた。


剣は............


「おおっと!?」


寸前のところでかわされた。


「ほぅわっ!!」


ショックの余り変な声を出してしまうトン。

直接切りかかりに行く体力がないからって投げるのはいかんでしょ。

剣はそのまま、村の外のどっかに突き刺さった。

剣はどっか行ったのをはっきり見届けたヤオグはニヤニヤしながら。


「ふふふ.....おろかな奴らよ.......」


歩んでくるスピードを落とした、余裕ができたのだろうか。


「ど、どうしよろ.......」


「なに急に弱気になってるんですかビリーさん!!早く逃げましょう」


「投げなきゃよかったわい......」


ジジイはこの失敗からすっかり戦意を失った。

トンはジジイを背負い、回れ右してその場から逃亡した。


「逃がすかっ!!!!」


後ろを見ると、遠くの方でヤオグが右腕を突き出している。

魔法を繰り出そうとしている、と判断したトンは、大きく跳んで村の家々の中に隠れた。

直後、爆発音がさっきいたとこらへんから聞こえた。トンの予想は的中していたのだ。


こうして、彼らの命をかけた鬼ごっこが始まったのだ。


「貴様らあああああ!!この村からは絶対に逃がしはしないぞ、全員見つけ出してぶっ殺してくれるわ!!」


この叫びは、逃げていた二人だけでなく、ワンの耳にも届いていた。これを聞いてワンは、決意した。


____一方、僕。


視界と、聴覚が少しずつではあるが復活してきた。体の痛みもだいぶ収まった。

こうして体が治って行くことに喜びを感じる一方で、まだ死ねない事に心が傷んだ。

でもまあこんなところで死ぬのは勘弁なので、とりあえず神には感謝しておいてやる。

ゆっくりその場に起き上がる。誰か周りにいるかと思っていたが、トン、ワン、ジジイ、誰もいなかった。

皆、無事なのだろうか。体が痛すぎて動けなかった時ずっと考えていたことを再び考えるが、埒が明かなかったので、家の壁に出来た大きな穴から外へ出た。

周りを見回して見ると、うっすらと所々煙が上がっているのが見えた。

恐ろしい光景だった、皆やられたんじゃないかと思ったぐらいだ。

僕は急いで味方を探しに行った。


トンとジジイは、必死にヤオグの攻撃から逃れていた。

跳んで逃げて家の中に隠れて見つかっては逃げての繰り返し、休む暇もない。

そうしてついに、追い詰められてしまった。

ゼー、ゼーと息をつきながら、トンは向かってくるヤオグの顔をしっかり睨む。たとえ絶対絶命の状況でも、悪を憎む気持ちは捨てない、トンらしい抵抗だ。


「ふふふ.....観念しろ....今のお前らには戦う力も、逃げる力も残されていない......!」


ヤオグは迫りながら、右手を前にかざした。魔法を繰り出そうとしている。


「一思いにやれよ.......チクショウ....」


トンは悪態をついて強がったが、心の中では泣いていた。

恐ろしさで泣いているわけではない、自身の無力さを悔いていたのだ。

ジジイは.....心の中で天国に行った時の自分を思い描いていた............戦犯行為に対する悔いはないのかよ。


「死ねぇ!!」


トンがくそっ、と思ったその時。


ヤオグの首に、縄で出来た輪が掛かった。

首は後方に引っ張られ、ヤオグは若干、体制を崩す。


「グエッ!」


トンとジジイはもうチャンスは今しかない、と一気に畳み掛ける。

まずトンは、足元を思いっきり蹴り飛ばした。出せる力を出せるだけ出す。

さっきのヤオグならピクリともしなかっただろうが、今は爆発のダメージが響いている。

ヤオグは耐えられず、仰向けに倒れる。


「ぐわああああっ!?」


「今だ!!ぶっ叩け!!」


ワンが叫んで、引っ張っていた縄を手放し、木の棒でヤオグの頭を殴り始めた。二人もそれに続く。

トンはヤオグの胸の上にまたがって首元に手刀を繰り出し、ジジイはなんとか抵抗しようとするヤオグの手を捻って持っていた圏とか言う武器を奪った。


「く、クソッタレドモガァ!!」


喉を潰され、手首を折られ、頭をぶん殴られながらも必死に地面を転がって抵抗するヤオグ、だが。


「ビリーさん!!トドメをっ!!」


「ああ!」


喉元に、奪われた圏での一撃が入った。切れ味は鋭く、ヤオグの頭と体は分断された。


「ゲッ......!?」


ヤオグは踏んづけられたカエルみたいな声を出して、必死に動いていた手足の動きが、ピタッと止まる。

魔王軍幹部ヤオグは、倒されたのだ。


「ハァ.........ハァ......ハァ.....」


3人とも息を切らし、お互いを見合った。気持ちの高まりっぷりが、皆の顔に出ている。


___勝ったのだ。


あの魔王軍幹部の化け物に、3人で、一度は諦めた化け物の討伐、3人の協力で成し遂げたのだ。この時の達成感は僕では上手く表現できない。

呼吸を整えた後、3人はこの感情を共有し始めた。


「や、やりましたね.......」


トンは首と胴体が離れ離れになったヤオグの遺体を横目に見ながら話す。


「ははは......皆さんのおかげですよ....」


ワンはその場に座り込んで、顔に笑みを浮かべて言った。


「いやいや、ワンさんが助けに来なかったら....今頃私とビリーさんはどうなっていたか.....本当に、ありがとうございました.....」


トンはワンに深々と頭を下げた。


「いえいえそんな......おふたりの逃げる時間さえ稼げればと思ってたので.....わたしは死ぬ気でいたんです。だから、トンさんと、ビリーさんのおかげですよ。感謝を言うべきなのは、わたしの方なんです....」


ワンは頭をかいて、照れくさそうに言った。


「まあ、お互い様ということじゃな」


ヤオグの首を拾って、布に包み終えたジジイが戻ってきた。


「ワン、よくやったよ、お前が最初ヤオグの前から逃げた時はめちゃくちゃ腹が立つ糞デブ野郎だったが、わしらを助けるために出した勇気は、誇っていいぐらいじゃ」


「ハハハ.....ありがとうございますぅ.....」


ジジイの若干暴言の混じった褒め言葉に、ワンは苦笑いした。


「いやー本当4人それぞれ頑張らなかったら負け.....!?」


ワンは立ち上がりながら、ある事を思い出した。

自分が隠れていた所にぶっ飛んできたサカグチこと僕のことである。ワンのドキッとした顔を見て、二人も思い出した。


「そういえばサカグチさんは.....」

「ここですよ」


トンが僕の名前を言った時、僕はちょうど三人を見つけていた。

体の傷がある程度治り、視覚も聴覚すっかり元通り。3人は僕の無事姿を見て驚いた。そりゃまあ、驚くだろう。


「サカグチさん!!無事...?だったんですね!!」


トンが僕の無事に若干首をかしげながも喜んでくれた。

ワンは驚きっぱなしで口が空いている。


「さ、サカグチさん...どやって怪我を直したんですか....??」


「魔法ですよ」


とりあえず適当に答えた。この本を見てもらうまでは僕が不死身の存在であることは誤魔化しとく、説明がめんどいからね。


「はぇ~魔法かぁ......」


「さぁ皆さん、塔の中に入りましょう、恐らくさらわれた女の子の母親はそこにいると思います」


ワンが納得してない顔をしているのを尻目に、僕はヤオグが出てきた黒い塔を目指して歩き始めた。


「さあ、行ってみるかのう....」


僕の仲間たちも、それに続いた。


黒い塔の目の前まで歩いた時、塔の中から二つの影が見えた。まさかまたオークなのだろうか、それは勘弁してくれ、僕も仲間たちもめちゃくちゃ疲れている。今戦ったらワンとか死ぬんじゃないか。

戦いに疲れたのは仲間たちも同じ気持ちで、うんざりしながら身構えている。


「まさか、また魔王軍幹部とかいうんじゃないでしょうね.....」

「そんなことはあるまい、よく見てみろ、さっきと比べて影が小さい」

「より魔法にとっかした感じだったりするかも.....」


後ろからブツブツと会話がかわされた。


二つの影の正体は、トンとワンを洗脳したあの女オークと人間の女性だった。女オークは女の人に肩を貸して、ゆっくりと歩いている。

体をよく見ると、お腹にナイフが突き刺さっていた。人間の女性の方は、さらわれたあの母親と見て間違いないだろう。ぐったりしている


「おぬし....あの時の....」


ジジイが声を掛けると、女オークは歩みを止め、僕たち四人を見た。


「お前たち......あのヤオグを倒すなんて....まああのインチキ臭い剣があれば当然か.....よくもヤオグ様を....と言いたいところだが」


「何のつもりですか?」


女オークは息を切らしながら話していた、もう倒れそうな様子からして腹のナイフは嘘ではなさそうだ。顔に若干、笑みを浮かべている。


「ちょうどよかった......お前たちにこいつを返すよ......」


「ええっ!?」


若干曲がり気味だった背筋が、完全に伸びた。

意味が分からん、そんないい話があるかよ。


「そ、そんなの信じられませんよ....」


ワンの言う通りだよほんとに。


「そうかよ.......」


女オークはそれを聞いて、涙を流しながらジジイから逃げた後のことを話し始めた。

話が長かったのでまとめると。


この女オークはヤオグの妻だった。

彼女はジジイとの戦闘時に必死に交信魔法を使ってヤオグに助けを求めたが、助けは来ず。

村に逃げ帰ってみると、ヤオグは別の女オークとイチャイチャしていた。これを見て、女オークは激怒した。別の女オークとしていたことではなく、緊急事態なのにこんなことをしていたことに激怒したのである。

女オークはヤオグを問い詰めた。ヤオグから帰ってきた言葉は意外なものだった。


「フン、何をそんなにあわてている?あの程度なら俺だけでやれる」


この言葉で女オークは察した。ヤオグは自分の部下を僕たちの力量を図るのに使ったのだ。

この発言を聞いて、女オークは混みあがる怒りをこらえきれず、ヤオグを思いっきり殴り飛ばした。


「何しやがる糞アマぁ!!」


ヤオグはそばにあったナイフを女オークに目掛て投げ、ナイフは腹に突き刺さった。

こらえきれずその場に倒れる女オーク。


「さて、人間どもを討伐しに行くか.....」

「まてよ......」

「ん?」

「なぜ...仲間たちをこのように扱うんだい.....ひどいじゃないか.....」

「........邪魔なんだよ....他のヤツに向ける情なんて」


気を失う前の最後の言葉は、最低なものだった。

これを聞いて、その場の空気が悪くなった。後ろの3人は何とも言えない顔をしている。

女オークは声を上げて泣いてその場に座り込んだ。泣き声以外、何も聞こえない


とりあえず、女の子の母親を取り返そうと、僕は手を伸ばす。


その時僕の胸に、銀色の刃が突き刺さった。


「か、かかった...ね......」


僕の目の前には、ナイフを強く握った女オークがいた。彼女はニヤリと笑う。僕は驚いた表情をして、その場に倒れ込んだ。


「カイさん!!」


トン達が駆け寄ってくる。ジジイが女オークを蹴り飛ばした。蹴り飛ばされた先で女オークは呟いた。


「お前たちを.......ゆるすはけない.....だろ....」


女オークはそう言って事切れた、そうして、彼女の戦いが終わると同上に、僕たちの救出作戦も終わりを迎えた。

僕はため息をつきながら腹に刺さったナイフをぬいて立ち上がった、腹からはまだ赤黒い血がどくどくと流れてきている。僕の体から流れる血の色は、いつもこんな感じだ、鮮血は流れない。

その様子を見て、ワンは貧血で倒れる直前の顔をしながら口をパクパクさせている、トンも若干引き気味の顔だ。

もうこうなってしまうと誤魔化しが効かない、素直に自分の”体質”を彼らに言う事にした。


「あのぅ...........」


「あっ、大丈夫ですよ、自分不死身なんで」


この一言で、彼らは僕に質問することはなくなった。不死身の人間なんて気味が悪いだろう。


「............ま、そんなところだろうと思ったよ、さあ、村へ帰るぞ」


なんだかんだ言って僕と一緒に戦う時間が一番長かった爺さんは特に気にする様子を見せず、塔の出口へと向かって行った。


「そうですね.....行きましょう、僕が彼女を背負います」


トンは女の子の母親を背負って、爺さんの後に続く。

彼は外に出る際に、一瞬こっちを振り向いて言った。


「サカグチさん......道案内、お願いしますね!」


彼は僕に笑顔で言ってくれた。彼の僕に対する本心はわからないが、少なくとも今は笑顔で僕に接してくれるみたいだ。

ありがとうトンさん、インタビューにも素直に答えてくれてありがとうトンさん、感謝伝え忘れてたからここに書いておきます。


僕は一瞬女オークの死体を見てから、僕の方をびくびくしながら見ているワンと共に塔から出た。


空の模様は曇り空、最後までオークという種族の為に戦った女オークもこんな気分だったのだろうかと考えながら、僕たち4人は雨が降る前にと、急いで山を駆け下りた。

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