第4話 クソパーティー

ええ......?

僕は耳を疑った

ギルドの人は僕の手前のテーブルにクエストの条件・報酬が書かれた紙を置いた。

何で僕なんかに依頼が来るのだろうか、僕なんかにこんな高いクエスト報酬をかけてまでわざわざ頼み込む必要があるのだろうか。


「何で.....僕に頼むんですか?」


僕はこの疑問を聞かずにはいられなかった。ギルドの名誉のためにも、ここはギルドの名誉の為にも、ギルドに所属するパーティーが行くべきだと僕は思う。


この疑問の答えは、聞いて呆れるレベルのものだった。


「それがですね.....会議で誰が助けに行くかというのをパーティーの代表者たちに聞いたんですが....誰も名乗り出なくてですね、それで、とある女性の冒険者の方が貴方を推薦したんですよ。なんかその冒険者から聞いた話によれば、凄い魔法が使えるとかなんとか.......」


まじか。

確かに凄い魔法だけどこういうクエストには向いていないものだ。

下手したらその子の母親も魔法の効果に巻き込まれて死ぬかもしれないのだ。

ていうか誰だよ僕を推薦した奴は。


「でっかいマグマスライムを出してジャイアントスネーキーを倒したとか.....」


ああ、あのカップルパーティーの女冒険者だったのか。

覚えてろよ。

何もしないけど。


「そういう訳で.....受けてもらえませんかね....報酬はこの通り高く払うとのことなので」


僕は迷った、ギルドの奴らに従うのは気に食わないが、女の子のことを考えると断るのも癪に障る。父親が殺されてしまったとなると、母親は無事にあの子の元へ帰してあげたい。

そう思った、だからプライド立てて断るなんて駄目だ。

このクエストは受けよう。

でも、やっぱり一人では不安だ。

人の命を運の魔法に委ねる事は絶対に出来ない。


「わかりました、受けましょう」


「本当ですか!?ありがとうございます!!」


男は深々と俺にお辞儀をした。


「ですが、一つ条件があります」


「は、はい何でしょうか....?報酬の件ですか....?」


「いや、そうじゃないです。むしろ報酬は下げても構わないので、このクエストを緊急クエストとしてクエスト掲示板で募集をかけてください。受ける方がいましたら、この部屋に呼んでください.......以上です」


「.......わかりました....?」


男はこのクエストの紙を持って部屋から出ていった。

多分、ギルドに所属している冒険者は誰もこのクエストを受けようとしないが、僕みたいなギルドに所属していない冒険者が何人か受けるだろう。

最低でも一人は入って欲しい。出来ればじょ...いや、そこそこ強い人で。


二時間ぐらいたった頃、この部屋のドアを叩く音がした。

僕は女の子の父親が持っていたという地図を見るのを止めて、応対した。


「どうぞ」


「失礼します」


ドアから出てきたのは、背が高く、白い道着をきた好青年で、体は鍛えているのかガッチリしている。

男は部屋の入り口から歩いて椅子の横にたった。


「あ、面接とかじゃないんで座って構いませんよ」


「は、はい...」


男は緊張しているのか、座る時動きが若干ぎこちなかった。


「は、初めまして、私は武術家のトン・タオと言います、よろしくお願いします」


タオは深々とお辞儀した。

ここまで丁寧に接してくれるとは思わなかった。

だって今もパンツ一丁だもん。


「えー私は役職魔法使いのカイ・サカグチです。こちらこそよろしくお願いします」


僕は深々と頭を下げながらこう思った。

「武術家かぁ~」と。

だってあまり強いイメージ無いんだもん。

いまこの本を読んでる転生者の中で武術家の人っている?


「このクエストはかーなり難易度が高いクエストでしてね......」


僕はトンにこの件のことを全て話した。

トンは姿勢を真っ直ぐ伸ばしながらよく聞いていた。

話の中で女の子の父親が死んでしまったところを話したとき、トンの体はぶるっと一瞬震えた。

そして全て話し終えたあと。トンは俯きながら言った。


「事情は....分かりました」


トンは顔を上げ、自分の拳を握りしめながら言い放った。


「____絶対に、母親を女の子の元へ無事に帰しましょう!____」


トンの真っ直ぐなまなざしに、僕は大きく頷いた。

トンには明日の集合時間と場所を伝え、今日は帰ってもらった。




次に現れたのは、全身から酒の匂いが漂う60ぐらいの爺さんだった。


「ふぅ~~~~ィ」


服には所々穴が空いている。

その爺さんは入るないやな、先ほど好青年とは違って、特に断りもなく椅子にどかっと座った。

そして、僕と目を合わせたその瞬間。


「ぶっ......ハハハハハハッハ!!」


吹き出した。

初対面の人にする態度ではないと思うが、まあ慣れているから別に構わない。

それよりも、このジジイは何ができるのだろか。


「僕はカイ・サカグチと言います、魔法使いです。貴方は?」


「わっ..ワシは....っくくく....ビリー・ウォ...ふふふ..武術家じゃっ」


ジジイは笑いながら答えた。

てかまた武術家かよ。


「と...というかお前っ!なんでそんな格好しとるんじゃっ!?趣味かぁ?」


失礼な質問だ。

この格好は決して趣味などではない、苦労に不幸が積み重なってなったものだ。


「いや、違いますよこれは借金とかが積み重なってなったんですぅ!ていうかビリーさんは大丈夫なんですかぁ?こんなクエストを受けてっ!」


思わず声を荒げて否定してしまった。僕もまだまだ若いかな。


「なにぃ?」


ジジイの目の色が変わった。


「ワシをなめるなよぉ....そこらへんのその日暮らしのやつとは違う....ワシは昔、魔王軍幹部を倒したパーティーの...」


おおっ...これは.....実は強いんですってやつか?


「料理担当だったんじゃ....」


はぁ?

露骨にがっかりしてしまった。その様子がジジイからでも見て取れたのか。


「まぁそうがっかりするな...実力があるのは確かじゃ」


とか言って弁解してた。

胡散臭さすぎるが、本人がいけるといってるのでメンバーに加えることにした。



こうして、二人の冒険者が俺のパーティーとなった。

タオはいい奴だし、ジジイもまあ...悪くはなさそうだが。

このままでは、チームバランスは壊滅的だ。

回復魔法が使える人とか、弓か銃が使える人が入らないと戦うとき色々不便になるだろう。

あと出来ればじょ..


そんなことを考えていると、扉をノックする音がした。

さぁ...どんな人がくるんだ......?

頼むから武闘家は止めてくれ...止めてくれ....。


「こんにちは~」


入ってきたのは若干太り気味で年は40ぐらいのおじさんだった。

服装はなんか....あまり服の種類には詳しくないから分からないが、普通だった。

あまり武闘家という感じではない。

男は僕に軽い会釈をしながら僕の目の前の椅子に座った。

顔をみたら若干ビビった様子で(僕の服装のせいだろうけど)

少し汗をかいていた。


「こんにちは、僕はカイ・サカグチと言います、魔法使いです。貴方は?」


「わっ....私はワン・チェンという物です....」


「役 職 は ?」


「ひっ.....」


ちょっと圧をかけて聞いてしまった。

でも、この反応から考えて...嫌な予感がする。


「じっ...実は私ぃ...先月まで商人をやっていまして~。まだはっきりとは決まってないんですけどぉ~~」


まさか...いや...そんなことが...


「”武闘家 ”です」


ウッ......。

僕は思わずワンの顔を強く睨んでしまった。

ワンは僕から目線を逸らしている。

いや、ワンの問題点はそれだけじゃない。

なんで冒険初めて一ヶ月の奴がこんな危険なクエストを受けているのかという話である。


「わかりました.....でもなんでワンさんはこのクエストを受けようと思ったんですか?」


「実は~私商業に失敗してたくさんの借金を抱えてしまって....今すぐにでもお金が欲しかったです。この辺のクエストって簡単で報酬が安いのが多いじゃないですかぁ。しかも用紙に{どんな方でも可能}って...」


しまった。


「でも大丈夫なんですか?このクエストは確かに報酬はいいかもしれませんが、その分危険も多いですし.....何よりワンさんの実力でオークにかなうかどうか....」


初めて一ヶ月の奴がオークに勝てるわけないだろ。


「それは....でも!そこをなんとかっ!...何でもします!荷物持ちでも何でも!!借金をこの一ヶ月で払わないと利息がヤバいんです...どうか、お願いします!!」


ワンは思いっきり土下座をした、その時みえたワンの背中に覚悟を感じた僕は、ワンをパーティーに入れることにした。

まあ、死ぬのも承知ならいいでしょ。


僕ははワンに明日の集合時間と場所を伝えた。


これで_____救出作戦のメンバーは揃った。

色々アカン気がするが、僕は不死身なので構わないし、3人の勇者たちも覚悟は決めているだろう。


僕はクエスト受注センターから出た時、空の様子は真っ暗だった。

その後僕は家に帰って、あの女の子の顔を思い浮かべながら眠りについた.......。

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