第3話 救出作戦

この本を呼んでる転生者の君たちへ。

もしこの本を呼んで僕の事を可哀想に思ったら。

ボベダ村のカイ・サカグチを宛先に手紙とお金をください。

お金はいくらでも構いませんから。




どうも、カイ・サカグチです。

僕は今、深い森の中を仲間と共に進んでおります。

「え、仲間?お前に仲間ができたのか?パンツ一丁のお前が?」って思った人もいるでしょう。

はい、出来ましたよ仲間。それがこちら。


「はぁ~....もうどこまで歩けばいいんですか...もう疲れましたよぉぉぉん」


僕の後ろを歩いているのは、元商人の男。


「全く...もっと頑張らんかい!若者のくせに体力ないのかぁ?おまえわァ」


んで、僕の前を歩いているのは高齢のジジイ冒険者。


「まあまあ、もう少し歩いたら休憩しましょう」


そして僕たちの先陣をきっているのは武闘家の好青年。


もれなく全員男である。

.....いいパーティーでしょ?一緒に冒険したいと思った?

もし思ったのなら変わってくれ、とは言ってもあくまでこのパーティーは”このクエスト ”だけのために組まれた「特別」なパーティーであるのだ。

話は大体、3日前に遡る。


____________3日前



太陽が沈みかけている時間帯。

僕はクエストを終わらせ、家に帰っている途中だった。

まあ家つっても廃墟に勝手に住み着いてるだけだけど。

まあ帰宅途中に、一人の6歳ぐらいの女の子と二人組の男を見かけたんだ。

女の子は目を赤くして、「ヒック....ヒック..」と散々泣いたような後の様子で、二人組の男どもはその女の子のをチラチラ見下ろしながら話していたんだ。

この辺は町はずれで人通りも少なく、僕は怪しいと思って木の陰に身を隠して聞き耳を立てた。

そしたら案の定。


「いや~幸運でしたな兄貴ィ、こんな場所に小せぇガキが一人でいたなんて....」


「そうだな、この子を奴隷商人にうっぱらえばそこそこの金がもらえるだろう。しかし何でこの子はこんな所で一人で泣いていたんだろう...?」


やっぱり、あの二人は誘拐を企んでいるチンピラだった。

少し疑問に思う部分もあるが、こうなっては放っておく訳には行かない。

俺は木の後ろから飛び出た。


「待てぃ!!」


「うな!?」


二人組の男が僕を見て驚いた。

飛び出した事に驚いたのかもしれないが、それよりも驚いたのは僕の風貌だろう。

相変わらずパンツ一丁のガリガリンだ。


「な、なんだお前っ!?」


「お前たちっ!!この10にも満たない少女を誘拐を企てるとは....許さんぞっ!!」


このセリフ、パンツ一丁の男が言ってると思うと笑えるよな。


「聞かれていたか....ならば仕方がない..やれっ!」


「了解!.....てめぇ!そんな可哀想な格好だからといって手加減しねぇぞ覚悟しろ!?」


二人組のチンピラのうち、下っ端ぽい奴が僕の前に立って、指をパキポキ鳴らし始めた。

体格はそこまではないが、気になるのは何故か顔が白塗りだったことだ。

このチンピラの顔がなぜ白塗りなのか、その点に関して俺は今でも疑問に思っている。

話を戻そう、とにかくそのチンピラはベタなセリフを吐いた後、僕に向かって蹴りを放った。


「うらっ!!」


その蹴りがどこを狙ったのかはよく分からなかったが、俺は後ろに下がる事によってその蹴りをよけて、呪文を唱えた。


「ポッカス・ボーガスだっ!!」


あまり人前でこの魔法は使いたくないのだが、こうなった以上使わざるをえない。

瞬発力は高いからよけることはいくらでも出来るが、攻撃技で格闘なんてこのガリガリの体ではできやしない。


この魔法を唱えたその瞬間、視界が真っ暗になった。

最初は気絶したのかと思ったが、戸惑っている時に周りから声が聞えた。


「お、おいっ!なんだこれは!?前がよく見えねぇぞ!?てめぇなにしやがったーっ!!」


「くそ~~っ!私もだぁっ!!」


どうやらあのチンピラたちも同じ状況のようだった。

となると、これは「ポッカス・ボーガス」の効果なのだろうか?

そんなことを考えてると、周りから声が聞こえた。


「ア゛ー」


「ウゥ゛ー」


「これは...アンデットの声だ...」


そうだ、確かこの効果は目が見えなくなった後、周りにアンデットが10匹召喚されるヤツだった........いや、納得してる場合ではない。

早く女の子を助けなければっ!!

どこだっ!女の子!!


「う゛えぇ~ん!!」


幸いにも、女の子は僕の直ぐ後ろで目が見えなくなった事に驚いて泣いているところだった。トラウマを植え付けちゃってごめんね。

俺は女の子の体をペタペタ触って確認した後、すぐさま抱えてその場を後にした。

抱えた時に若干女の子に引っかかれたのが痛かった。

視力は30秒後に元通りになったよ。良かった。

僕はそのまま役所のほうに向かって行った。

あのチンピラたちがどうなったのかは知らないが、無事であることは一様祈っとく。


そして僕は役所に駆け込み、女の子を職員に預けた。

最初は誘拐犯が自首してきたのかと思われてたらしいが、なんとか取り合ってもらった。

今頃女の子は自分の身に何があったか取り調べを受けているだろう.......。


後日、この町の冒険者ギルドのメンバーの一人が、俺を訪ねてきた。


「ちょっと女の子のことで相談があるんだが~.......来てくれないか?」


「はぁ,,,,,,」


僕は曖昧な返事をしながら、ギルドの人についていった。

何の話だろうか、まさか女の子が僕のことを誘拐犯だ!とか言いふらしたんじゃあないんだろうな......。




ギルドの人から聞いた女の子が取り調べで話したことは、衝撃的だった。


その日の午後、女の子が庭で土いじりをしていると、その子の父親がなんと血だらけでクエストから帰ってきた。

母親は驚いた様子で、父親に何があったのか聞いた。

父親は自分がクエストで何があったのか母親に一通り話した。

内容は話が難しかったため、「オーク」という単語がその話に何回も出てきた、という事しか分からなかったそうだ。

そしてその話が終わった直後、家のドアを叩く音がした。

母親が出ると、なんと家の前にでかいオークが立っていて。

それに驚いた母親はすぐさま家の中に逃げ込み、ドアを家具とかで補強して、入らせないようにしたもののうち破られ、父親は殺されて、母親はさらわれた。

女の子は父親がオークに抵抗してるうちになんとか逃げることができたとのことだ。


なるほど、どうりで女の子があんなところで一人でいたわけだ。

それにしても、女の子が可哀想だ。

父親は殺されて、母親はさらわれている。

人間として生きていて、一日でここまで不幸のどん底に落とされるがあるだろうか。

そう考えると、俺の借金地獄や貧乏な生活は浅い不幸だと感じられる。


___金はいくらでも努力すれば手に入れられるが、命は一つ限りだ____


当たり前のことだが、最近は金と生命、優先順位を逆に考えてる人が多い気がする。あのチンピラだってそうだ。


父親はこの辺の冒険者の中でもかなりランクが高い方だったらしい。

これは.....さらわれた母親の救出は難しいだろう。

とか考えたその時。


「それで相談というのはですね.....母親の救出を貴方に依頼したくて....」


__________はぁ?

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