第3話 2話 表
翌日。私が教室に入って席につくと、待ち構えていたように
「うーん、『バンドマンとして見てくれてありがとう』、とかかな?」
そう言ったのは、クラスメイトで友達の美癒 江瑠ちゃんだ。
「あぁ~、バンドの人だったかぁ。読みが外れたなぁ。」
それに反応したのは、同じく友達でクラス委員をやっている生真面 メナノちゃんだ。
メナノちゃんはいかにも真面目そうな外見のせいで、先生から指名でクラス委員にされてしまったちょっとかわいそうな人だ。
「読み、って?」
「
「ふっふっふ、勝負は私の勝ちね。ジュース一本忘れないでね。」
「江瑠ちゃんは最初から分かっていたの?」
「オタクなら、何かしらキャラグッズをカバンや文房具につけたりするものよ。
そう言いながら、江瑠ちゃんは水着の男の子達の絵が描かれた下敷きで自分を扇いでいる。
「そう言うあんたは全然隠してないよね。」
「隠す? 何故、このほとばしる愛を隠さねばならないのか!?」
「いや、だってその下敷き何なの? 男同士? 不潔よ。」
「メナノは真面目ねぇ~。今の時代、性の多様性は隠すべきものではなくなっているのよ? 同性同士の結婚だって認められている国が増えているんだから。」
「そうかもしれないけど……、あんたの趣味嗜好と性の多様性は関係ない気がする……」
「美しいってことはそれが正義なの。同性だからこそ、プラトニックなピュアさがあるんじゃない。分かる?」
「う、う~ん?」
江瑠ちゃんは楽しそうにメナノちゃんのリアクションを見ている。
メナノちゃんは江瑠ちゃんにいつもからかわれているなぁ。
チャイムが鳴り、先生が入ってきた。皆が席についた。
今日の日直は私なので、号令をかける。ちなみに相方は隣の
「ホームルームを始める。さっそくだが、今日から転校生がいる。入ってきなさい。」
ガラッと教室の扉をあけ、入ってきたのは金髪で碧眼の男の子だ。
「イタリアのローマから来ました、ジィウスティーツィア・クローネです。ジィスと呼んでください。どうぞヨロシク!」
そう言って彼はウィンクをした。女子からは「きゃ~!」っと黄色い悲鳴が上がった。
男子はケッっと悪態をついた。転校生が女子じゃなくて残念そうだ。
「ローマ? まさかバチカンからの……。」
思案気につぶやき、ジィス君を見つめている。
私はそのまなざしに何か熱っぽい物を感じた。
ホームルームが終わるとジィス君はさっそく女子に囲まれていた。
「趣味は何?」
「どこに住んでいるの?」
「何で日本に来たの?」
そんな女子たちの反応をジィス君は笑いながら、如才なく受け答えしている。
「趣味は……音楽かな?」
「近くの知り合いの家に厄介になっているよ」
「親族の仕事の都合……かな?」
ジィス君は一通り質問に答えると「ちょっと失礼するよ」と言い、立ち上がった。そしてそのままこちらの方へ歩いてきた。
何となくその動きを視線で追っていた私に気が付くとジィス君は軽くウィンクを返してきて、そのまま私の前を通り過ぎて隣の
「……なんだ?」
探るように見つめるジィス君に
「何、君に興味があってね。」
そう言い、ジッと
「……俺もお前に興味がある。」
「……放課後だ。」
「だな。」
二人は頷き分かれていった。
「白米がうまい!」
お昼休み、江瑠ちゃんが
「あの二人、そうなのかしら……。確かに海外では日本より性の多様性が進んでいるって聞くけど……」
「時折、お互いを探るようにチラチラ見ているのよね。あれは間違いないわ!」
江瑠ちゃんは気分が高揚しているのは少し頬が赤くなり、目が血走っている。
「リアルのBLは無いな……って思ってたけど、あの二人凄く絵になるのよ。明るく人当りのいいさわやかなイケメンのジィスに、どこか影のあって人から距離を取っている
江瑠ちゃんはどちらかというと普段は聞き役であまりしゃべらないのだけど、今日は凄く熱く語っている。
「
ブツブツとあれこれ呟く江瑠ちゃん。
「道子、江瑠は放っておいて、ご飯食べたら? 手が止まっているわよ?」
「あっ! いけない!」
メナノちゃんに促され、私は慌ててお弁当を片付けるのであった。
お昼休みが終わりに近づき、予鈴がなる。席に戻り、
「
「うん? あぁ、甘いのは少し苦手なんだ、コーヒーはブラック派だな。」
おお! 新情報ゲット! これも
そのあと、授業が始まるまでの短い時間、
ふと、視線を感じて顔を向けてみるとジィス君が私達のことをジッと見ていた――。
放課後になった。
「
「あぁ、少し待て。並日、済まないが日直の日誌任せていいか。」
「うん、構わないよ。ジィス君の学校案内? 」
「……まぁ、そんなところだ。」
二人は連れ立って教室から出ていった。
普段の
日直の日誌くらい帰宅部の私に任せてほしい。
……日誌を担任に届けに言ったら、やれコピーを取れだの、配布物を分けろだのあれこれいいように使われてしまった。最後に倉庫の掃除……と言われた段階で用事があると言い、強引に逃げてきた。
すっかり遅くなり教室に戻るとそこにジィス君がいた。他のクラスメイトの姿は無い。
「君は
凄い唐突な質問だな……。そんなことを気にするなんてジィス君は江瑠ちゃんが言った通りやっぱり……。
ここは誤解を解かないと!
「席が隣だからそれなりに話すよ。でも恋人とかじゃないから! 安心して!」
「う、うん? 安心? ま、まぁ、友達って言っていいほどの付き合いはあるんだね。」
「そうだね。それくらいの付き合いならあるかな?」
「なるほどなるほど。……ところで道子ちゃん、イタリアのお菓子があるんだけど食べるかい? 」
そう言ってジィス君が取り出したのは綺麗に包装されたチョコレートだった。
「イタリアのお土産で定番な物なんだ。よかったらどうぞ。」
そう言えば、日も沈みかけていてる頃合いで、すっかりお腹が空いている。
「ありがとう、一つ頂くね。」
そう言って私は一つチョコをもらい、口にした――。
「並日、おい、並日!」
呼ばれる声に頭を上げた。
「う、う~ん……。あれ?
「あ、あれ? 私……」
窓の外はすっかり暗くなっている。私は自分の机につっぷして寝ていたようだ。
「あれ!? 今何時?」
「今は8時かな?」
そう答えたのはジィス君だ。
「道子ちゃんはチョコを食べたらそのまま寝ちゃったんだよ。疲れているんじゃないか?」
(そうだったのか!)
ジィス君の言葉に私が納得していると、
「すっかり暗くなっているから送っていくよ。な、
「……あぁ、そうだな。これ以上変なことに巻き込まれても事だからな。」
巻き込まれて? なんのことだ?
よく見れば二人の服は汚れている。あ、分かった!
「二人はあれでしょ? 担任に倉庫の片づけを手伝わされたんでしょ? 私もさぁ、さっき日誌もって言ったらコピーだのなんだの手伝わされたんだよね~。」
私がそう言うと、二人ともきょとんとした顔をした後、ジィス君は声を上げた笑った。
「あはははは。なるほど、うんうん。道子ちゃんはそういう子か。」
「え? 何? どうしたの?」
「ううん。なんでもないよ。くくく、道子ちゃんはいい子だなって話さ。さ、帰ろう。これ以上遅くなったらご両親が心配するよ。」
その言葉に私は慌てて、携帯を取り出し、お母さんに連絡をいれたのだった。
家に着くと、お母さんは二人を家に招きいれ、ご飯を振る舞った。今日はたまたまカレーで、うちのカレーは鍋一杯に作り、数日続くので二人増えたくらいは賄えるのだ。
「わざわざ送ってもらってすまないわねぇ、ささ、食べて食べて。お口に会うと良いのだけど……」
「「いただきます。」」
私と
ジィス君は「天におられる私達の父よ……」と何か祈りの言葉を口にしてから食べ始めた。
「……うまい。」
「お口にあって何よりだわ。」
お母さんは機嫌が良さそうに笑顔で言う。
「うん、美味しいね。だけど俺のママの味には負けるけど。」
ジィス君も感想を口にする。
「あら、お母様は料理がお上手なの?」
「ママの料理は世界一さ!」
ジィス君はお母さんっ子なのかな?
二人は食事を終え、帰っていった。
「今日は送ってくれてありがとうね。また明日学校でね。」
「あぁ、また明日。」
「道子ちゃん、バイバイ!」
そのあと、お風呂に入って、寝る前に
・銀髪(マメに染めているようで、プリンになっていることを見たことがない!)
・右目に眼帯
・左手に包帯
・右手は指ぬきグローブ
・赤い目(カラーコンタクト?)
・美少年……でも表情はいつも暗い
・ご両親を早くに亡くしている
・生き別れた妹さんがいる
・犯人は捕まっていない
・ケンカをよくしていて怪我が絶えない
・気象予報士の才能がある
・肩にタトゥ―がある。名前はすてぃぐま
・コーヒーはブラック派 NEW!!
……同性愛については確証が取れてないし、今はまだいいよね。
「これでよし、っと! おやすみなさい!」
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