ヌラジセミャーナ

道端に一枚の小さな紙切れが落ちていた。

そこを通りかかったのは、この日たまたま散歩をしていた男だった。

男は、足元の紙切れに気付いた。

しわくちゃになったその紙切れには、何やら文字が書かれているようだった。

そこに何と書かれているのか気になった男は、そのまま素通りすることができず、紙切れを拾い上げた。

すると、そこにはカタカナで「ヌラジセミャーナ」とだけ書かれていた。

それは男にとって全く聞き馴染みのない言葉であった。

だが、不思議とどこか魅力的に感じられた。


それ以来、男は「ヌラジセミャーナ」と書かれた紙切れを必ず持ち歩き、この言葉は常に頭から離れなかった。

ヌラジセミャーナとは一体何なのか。

そういう名前の店、あるいは外国の地名が存在するのだろうか。

男には全く見当がつかなかった。


ある日、男は散歩をしていると、あの言葉がふと脳裏をよぎった。

やはり、いつまで経ってもそれが気になって仕方なかった。

男は何気なく、初めてその言葉を口にした。


「ヌラジセミャーナ」


その瞬間、男の姿は煙となって消えた。

後には「ヌラジセミャーナ」と書かれた紙切れ一枚だけが残った。

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