半年後

ある日、必ず当たると評判の占い師の元へ、一人の女がやってきた。

女は、自分の将来の幸福度を占ってほしいと伝え、占い師はこれに頷いた。


「では、さっそく見ていきましょう」


そう言うと、占い師は女の顔を見つめた。

瞬きもせず、まるで睨みつけるかのような表情で女を見つめ続ける占い師。

そのまま、三十秒ほどが経過した。

女は怖くなり、恐る恐る占い師に尋ねた。


「あの、これはもう占いが始まっているのでしょうか。私はまだ、生年月日や星座をお伝えしていないのですが……」

「始まっていますよ。私は、生年月日や星座で占うようなそこら辺の占い師とは違うのです。そのような情報は必要ありませんし、特別な道具を使うこともありません。私が行うのは、ただ占う相手を見つめるだけです。しかし、これによって、私は他のどの占い師よりも正確な未来を感じ取ることができます」

「なるほど。そうだったのですね」

「では、続けますよ」


占い師は、再び女を見つめ始めた。

その真剣な表情や独特な雰囲気を見て、女は、この占い師が本物であることを直感的に理解した。

およそ一分が経ったところで、占い師は女に結果を伝えた。


「あなたは、半年後から人生が大きく変化します。そこを起点として、これまでにないほどの幸せを感じることができるでしょう」

「本当ですか。半年後と言えば、ちょうど結婚生活が始まる頃だわ。きっと幸せな結婚生活が送れるということね。ありがとうございます」


女は帰宅し、すぐに結婚相手の男にこの事を教えた。

男はとても喜んだ。

そして、あの占い師は本物だから、男も見てもらえばどうか、という話になった。



数日後。

男は、女に教えてもらった占い師の元へやってきた。

例のごとく、占い師は何の情報や道具も使わず、男を見つめ、未来を占い始めた。

占いが終わり、占い師は男に話しかけた。


「あなたの未来が見えました。大変申し上げにくいのですが……」

「え、それは一体、どういうことでしょうか」

「あなたは半年後からずっと、不幸のどん底に…」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る