究極の愛

時刻は21時を過ぎた頃。

とある大学内の建物の地下1階の真っ暗な廊下に、一つポツンと明かりの灯った実験室で、二人の理系大学生がこの日の研究結果をまとめ終わり、帰り支度を始めていた。


「やっと終わったぜ、今日の研究」

「そっちも終わったんだ。僕もちょうど今終わったところだよ」

「本当に毎日疲れるよな」

「そうだね」

「ん?どうしたんだよ。ちょっとにやけてないか?」

「いや、別ににやけてないよ」

「そうか?絶対にやけてただろ。あっ、さては、同棲してる彼女が待っててくれてるから帰るのが嬉しくてにやけてたんだろ?」

「まあ、そんなところかな」

「くそー、いいなあ。お前、彼女のことを考えてる時に、にやける癖があるぞ」

「うわっ。それは恥ずかしいなぁ」

「俺はこの前、彼女に振られちまったばっかりだよ」

「それは残念だったね」

「なあ。愛って何なんだろうな。」

「ちょっと、いきなりどうしたのさ」

「次の彼女ができた時のために考えておくんだよ。ああ、究極の愛って何なんだろうな」

「究極の愛……」

「やっぱり相手を一番に考えて、一途に想い続けることなのかねぇ」

「それは普通というか薄っぺらい気がするよ」

「そっか。じゃあ、お前は究極の愛って何だと思う?」

「究極の愛……。より深く……。相手と繋がること……。相手と一体になること……。相手と全てを共有する……。相手の一部を……。いや、相手の全てを自分に取り入れること……。取り入れる……摂取する……」

「まあ、こんなのいくら考えても答えは出ないよな。それよりさ、この後、飯でも行かないか?」

「ごめん。今日はすぐに帰らせてもらうよ」

「そっかそっか。お前には彼女が作ってくれた食事があるもんな」

「いや、それは食べないことにしたんだ」

「なんだよ。せっかく彼女が作ってくれてるのに食べないのかよ」

「うん。ついさっき、別の物を食べることに決めたんだ。きっと相当な量になるはず。それで、お腹いっぱいになりそうだからね」

「お前、すごいにやけてるぞ」

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