悪魔の苦労
「うわああああ!!!誰だ!!!」
俺を見て、目の前の男が叫んだ。
「俺は悪魔。願いを3つ叶えてやろう。その代わり、死後、魂を頂く」
俺は、いつものように説明した。
そして、男は真剣な顔でしばらく悩む。
人間は皆、この話を聞くと、願いが叶うという魅力と、魂を奪われるという想像のつかないリスクとの間で、気持ちが揺れ動くらしい。
「悪魔様がいたとは。ぜひ、私と契約をお願いします」
長考の末、男は答えた。
その顔にはニヤニヤとした笑みが浮かんでいる。
俺は嫌な予感がした。
「そうか。では、契約の前に……」
「やった!さっそく願いを叶えて下さい!」
「もちろん願いは叶えよう。ただし……」
「1つ目の願いは、願いの数を無限にする、だ!」
男は勝ち誇ったように宣言した。
「こんな願いは予想していなかっただろう、悪魔め。これで私はやりたい放題……」
男がべらべらと話し続けているが、途中から俺の耳には何も入って来なかった。
はあ。
やはり、嫌な予感が的中したというわけだ。
そんな願いなど、一体これまで何度聞いたことか。
もちろん、我々悪魔たちの中で、この願いは対策済みである。
この願いを言った者は、即座に記憶を消され、契約を解除されるのだ。
この事は、契約前に人間に伝えることになっているのだが、また、今回も伝えることができなかった。
このように、話を聞かない人間からは魂を貰えない。
話を聞く人間の場合であっても、願いに制限があると分かると、契約をしてもらえず、魂を回収できない。
全く、どうしたものか。
そうだ。
提示する願いの数を10個にできないか、今度上司に掛け合ってみよう。
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