第42話 対話
<対話>-----#042
現生に戻った雄一郎の第一声は
「ルイ、リサ、搭載艇の準備は出来ているか」だった。
「はい」
「はい」
ルイとリサが殆ど同時に答えた。
「リサ、小さな船で一人が行くと伝えてくれ」
「はい・・・待っている、と言っています」
雄一郎が搭載艇へと向かって階層を降りた。
雄一郎が着込んだ宇宙服をルイが点検した。
「お気を付けて」
「大丈夫だよ、ルイ、ありがとう」
「操縦はリサに任せて大丈夫ですから」
「私は宇宙飛行士ですよ、大丈夫、行ってきます」
雄一郎は搭載艇に乗り込みリサに異星人の船に向かう様に言った。
搭載艇が発進して暫くするとリサの声が搭載艇内に響いた。
「この船がビームで引かれ始めました」
「ほう、やはり、その様な事が可能ですか、今後、このビームを牽引ビームと名付けます」
「牽引ビーム・・・牽引、牽引、牽引ビーム、良い命名です、気に入りました」
「そうか、気に入ったか、それで何処から、距離は???」
「100キロ・メートルです」
「100キロとは地上では遠いですが宇宙では些細な距離ですね」
「そうだな、戻ったら直ぐに研究するぞ」
「はい、でも出来るでしょうか」
「難しいだろうね、大変難しいに違い無い、が、世の中にある、可能だと解っているのだから、有るか無いか解らないものより簡単だ・・・と思うがね」
「雄一郎さん、ケンや皆さんが心配しています、答えますか」
「以上無し、追加報告を待たれたい、送ってくれ」
「何だか、大昔しの電報の様な文ですね、了解です・・・伝えました」
「今から内部に入ります、私の親機との接続が切れました」
「通信遮断を止める様にお願いして下さい、いや、通信接続の回復をお願いして下さい」
「成程、雄一郎さんは細やかですね」
「言葉使いは誤解を生む事もありますからね、ルイ」
「接続が戻りました、ケンも遮断を心配していました」
「解りました、船内の空気組成はどうですか」
「酸素含有量が5%高いです、お二人はヘルメット着用が宜しいと思われます」
「酸素酔いになりますね、そうしましょう」
雄一郎とルイは宇宙服のまま出入り口へ向かい、気圧調整室へ入った。
「さぁ~て、ご対面と行きますか、リサ、外部隔壁を開けて下さい」
雄一郎の指示に従い外壁が開き格納庫の様な処の一部が見えた。
雄一郎は首だけを出し周りを眺めた。
奥の壁際に一人の人、人が立っていた。
雄一郎の横からルイが顔を出し、雄一郎と同じ様に周りを眺め、人に目を止めた。
「あれ~、我々人類と変わりませんよ、来ている物はギリシャかローマの様ですね」
その人物は少し青み掛かったゆったりとした服を来ていた。
雄一郎がドアの内側に付いた階段を降り異星人の船に降り立った、ルイも続いて降り立った。
二人は再度周りを見渡し、雄一郎は何か違和感を感じた。
二人が一人の人物の方へ歩き出すとその人物も二人の方へ歩き出した。
近づくに従い、雄一郎は違和感の理由を知った。
三人、二人と一人が向き合った、が、大きさが違った、雄一郎の身長は172センチ、ルイは165センチ、そして、相手の人物は2メートルの間隔があるにもかかわらず二人が見上げる程の高さ、約3メートルの身長だった。
「こんにちは、始めまして」
雄一郎は日本語を選び挨拶した。
「こんにちは、空気が合いませんか」
「はい、残念ですが、酸素率が5%程高い様です」
「船内の率を少しずつ下げます」
「ありがとうございます」
「では、付いて来て下さい、代表に会わせます」
「雄一郎さんにぴったりですね、無駄な事、余計な事は言わない、要点しか言わないのですね」
ルイが小声で雄一郎に言った。
「私の事はキーと読んで下さい、二人の呼び名は」
先頭を歩く大きな異星人が後ろを振り向きもせず言った。
「私はユウ、彼女はルイと読んで下さい」
誰とも会わず何も無い廊下の様な空間を三人は無言で暫く歩いた。
突然、異星人が右を向くとそこの壁に空間が現れ、異星人は中に入った。
二人も後を追って入るとそこはとても広い空間で正面に六人の異性人が椅子に座っていた。
六人が座った席の左に空席が一つあり案内して来た異星人が座った。
「この場合はようこそ、で良いのですか」
七人の真ん中の異星人が話し出した。
「はい、こんにちは、始めまして」
「こんにちは、始めまして、貴方がたにとって初めての異星人との対談ですか」
「はい、初めてです、しかし、貴方がたの生まれは私たちが地球と呼ぶ同じ惑星と聞きましたが」
「地球・・・丸い地面、素晴らしい表現だ」
「ありがとう御座います、貴方がたはテラだと聞きましたが」
「そうです」
「ラテン語でテラは地球であり、ソルは光輝く太陽であり、ルナは夜にソルの光を反射する月です」
「我々は貴方の言うラテン語を話ているようです、貴方はラテン語を話せますか」
「いいえ、残念ですが話せません、貴方がたはどうして日本語を話せるのですか」
「昔、我々は日本語を話していたのです、後にラテン語を学びました」
「貴方は我々の年月の尺度を既に知っているはずです、そこで教えて下さい、貴方の年齢を」
「私は13000年生きています、貴方は100年も生きていませんね、貴方は頭の良い人です、話していた、学びました、で判断しましたか」
「はい、二つともその通りです」
「貴方の船の速さは1時間で何キロ進みますか」
「私たちは光の速度を基準にしています、光は1秒に30万キロ進みます、私たちの科学では光の速さを超えられないと考えられています」
「貴方の船の速さは」
異星人は再度、質問を繰り返した。
「その前に、そちらは慣性制御、動いている船を突然止める事が出来ますね、逆に止まっている船を突然早い速さで動かせますね」
「出来ます、慣性制御と名付けましたか、その慣性制御は出来ます、そちらは光の速度を超える事が出来るのですか」
「出来ます、そちらも慣性制御が出来ると言う事は超えられますね」
「はい、出来ます」
両種族の技術力の把握の駆け引きが始まっていた。
雄一郎は慣性制御の知識がほしい、異星人は雄一郎の加速力がほしいのである。
初回は挨拶だけとして、此れまでとして雄一郎とルイの二人は来た道を逆に帰って行った。
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