第40話 F型星系-到着
皆がそれぞれの作業をしている時だった「ピンポーン」とスピーカーから音が聞こえリサの声が続いた。
「作業、お疲れ様です、これより10分後に指定位置に到着しますので無重力と成ります、ご注意下さい、なお、雄一郎さんとルイさんは制御室に戻られるとの事です、終り」
この通知が有ってから10分後には全員が制御室に集まって時間になるのを待っていた。
皆の見つめる前の画面には二つの画像が表示されていた。
一つは星系を上から見た物でもう一つは横から見た物だった。
まぁ~宇宙には上も下も北も南もないのだが、便宜上、画面での見た目で話を続けよう。
「あの円の斜め上45度位で光っている処に私たちは居るのね」
佐紀の確認の言葉だった。
「その様ね、この位置に止めた意図は??? お兄さん」
「お姉さん、私は第5惑星に降りる為だと思うの、多分第4には生命体反応があるから避けたんだと思うわ」
「そうなのお兄さん佐紀ちゃんの言った通りなの」
「流石に我娘だね、その通りさ、リサそれで第4惑星の生命体の知的度はどの程度かな」
「はい、それが不思議なのです、生活は石器時代なのですが、遺跡は現在の人類と同程度か越えています」
「面白いね、どう思うね皆」
「はい」
「ルイ、挙手は要らないよ、言ってご覧」
「はい、高度な文明の人たちがこの惑星に植民したが人口が少なくて高度な文明を維持できずに石器時代まで後退してしまったのではと思います、何故入植を止めたのかは解りませんが」
「他に意見のある人は???」
雄一郎が皆を見渡したが他に意見が無い様だった。
「私もルイの考えに賛成だ、進歩は奇跡と偶然だが退化は自然だ・・・処でリサ、人工物の動きはどうだね」
「そうだ、忘れていた」
「私の弟は本当に呑気になった様ね」
「はい、雄一郎さん、こちらに合わせてコース変更しました、50分でこの位置に到達します」
「と言う事は慣性制御ができると言う事かね」
「はい、できます」
「うむ、我々よりも進んでいる様だね、で、我々が燃料を充填するのに要する時間はどれ程かね」
「40分です」
「良し、では初めて下さい」
「はい」
リサがそう答えると画面の光る点が下へ移動し始め皆は身体に圧力を感じた。
「リサ、作業が終り次第速やかに先程の待機位置に戻って下さい。」
「承知しました」
「お父さん・・・逃げないの???」
「皆も逃げた方が良いと思うかね」
「その方が良いのでは???」
「ええ」
「僕もそう思います」
「ルイはどう???」
「私は雄一郎さんに賛同します・・・だって多分相手は攻撃するつもりなら今でも出来る能力がある様な気がします・・・慣性制御が出来る技術力があるのですから」
「僕もそう思うから戻る事にしたのだよ」
「なる程・・・でも試してみる価値はあるのでは、兄さん」
「残念ながら無い、逃走は攻撃を誘発する恐れがある、何故なら逃走する時は最高速度を出す事が当然だ、つまりこちらが向こうより技術が劣っている事が相手に知られてしまう・・・だが逃げずに待ち構えていれば、こちらが技術的に優れている自信の表れと取ってくれるかも知れない・・・それしか、それに掛けるしか手は無いのだよ」
「そんなに悪い状況だとは思わなかったわ、だってお兄さんが凄く落ち着いているから・・・」
「リサ、確率はどれ程かな~」
「申し訳ありません、ヘンリー、雄一郎さんの言われた様になる確率が限りなく100パーセントに近いものです」
「じゃ~打つ手は一つね」
その間に船内が加速度重力とは異なる重力になり燃料補給の状態になった。
「この惑星は地球とよく似た組成と大きさのようだ」
皆の心配をよそに雄一郎は呑気な事を言った。
暫くしてリサの声が聞こえた。
「待機位置に移動します」
声の直後に少しづつ身体が重くなった。
「リサ、大気組成と重力比率、周辺画像撮影はどうだったかね」
「はい、収集しました、重力は地球の0.9倍、大気組成は酸素比率が0.1パーセント低いだけです、画像は上空三千メートルから四方を撮影しました、生物は哺乳類、両生類は検知されませんでした、地球での進化論に従えば昆虫が最高位です」
「では早速再生して下さい、勿論、録画も続けて下さい」
皆が見つめる画面に三千メートル上空からの画面が映し出された。
「海と陸地の比率と海水と淡水の比率と海水の塩分濃度はどうかね」
雄一郎の問いが発せられ、皆が感心の顔を雄一郎に向けた、特にルイは惚れ惚れとした顔で見ていた。
「はい、80パーセントが海です、淡水の比率は1パーセントです、塩分濃度は5パーセントです、勿論、此処から見える範囲での事です」
「ありがとう、処で皆に問題です、地球のこれらの比率を知っていますか」
「陸地と海の比率は30対70です」
ルイが答えた。
「海の塩分濃度は平均3.5パーセントでしたね」
ヘンリーが答えた。
「淡水の比率は確か2.5パーセントだったかな」
ケンが答えた。
「皆、良く知っているね・・・では人体の塩分濃度は、人体の水分比率は判りますか」
それぞれが顔を見合わせ最後に皆の顔がヘンリーに向けられた。
「0.9パーセントと90パーセントでしたかね」
「正解でしょうね、私も文献のデータを覚えているだけですが・・・では地球上で生物の飲料に使える水の比率は知っていねかね」
今度は皆がヘンリーを見つめた。
「0.01パーセントと言われています」
「では、皆は醤油を知っていますね、醤油と海水とどちらが塩辛いと感じますか」
「それは誰だって海水でしょ、海水を飲んだり舐めたりすると「うぇ~」ってなるけど醤油を舐めても平気だから、まぁ大量に飲んだとしたら解らないけど」
ジェニーの言葉に皆が頷いて賛同した。
アメリカ人の二人り兄弟も日本人との付き合いが長い為か頷く様になっていた。
「そう感じるよね、私もそうです・・・が塩分濃度は海水が3.5%であるのに対し普通の醤油は16%位なのですよ」
「えぇ~そんなに濃いの~」
「う~そ~」
「どうして塩辛くかんじないの~」
「そうそう」
皆が雄一郎を見つめ説明を求めた。
「うま味成分であるアミノ酸や糖分、有機酸などのたくさんの成分が含まれていて、複雑に絡み合っていることによって塩からさを感じさせないらしい。醤油に含まれる成分の多様性が成し得る特性という事らしいね」
「ふ~ん」
「昔の人は凄いわね」
リサの声が皆の会話を遮った。
「物体が停止しました」
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