第28話 理論の神髄
「さて、皆の考えを聞かせて貰えるかな」
雄一が皆に問いかけた。
皆が言い淀みお互いの顔を見合った。
「残念ながら私には実証物理は理解出来ても理論物理は無理みたい・・・発想力がないのね」
ジェニーが本当に残念そうに言った。
「私は新たな仕組みを考え出すのが得意だと思っていたので自信があったのですが駄目でした」
「ルイ、私もよ・・・生物学的に無理なのかしら、ある学説では女性は現在に生き、男性は過去と未来に生きている・・・らしいの、だから女性は仮定する、想像するのが苦手なのかなぁ」
佐紀も駄目だったと述べた。
「僕はどうも男では無いらしい、僕は元々夢想する方じゃ無く行動する方だからね」
運動好きなヘンリーが言った。
「ケンは公式を完成させたのだから知っているのよね」
「ああ~、公式を作る元になる理論は知っているしその元となった幾つかの疑問点も知っている・・・が、いろいろな現象と現代物理学の矛盾点に新公式を当てはめても矛盾が解消できないのだよ・・・式は正しい、答えは合うのだが・・・何と言うか・・・途中の式が無いと言うか、理論の核が無いと言うか」
「あらあら、ケンのもどかしさは私以上ね」
ジェニーが同情した。
「兄さん、何が足りないのだろう」
「良い処に気が付いたね、もう一歩だ、皆もね・・・多分ね・・・だから質問形式にしたのだよ、まず最初に私が感じた様に現代物理と現象の矛盾点を理解してほしかったのだよ」
「矛盾だらけよ・・・泥沼に入ったみたいに・・・不思議な現象のどれを考えても矛盾だらけ」
佐紀が嘆いた。
「それで、兄さん何が足りないんだい」
「その前に・・・リサは矛盾は解消できたかね」
「リサ???」
皆が一斉に口にした。
「はい、あぁ、いいえ解消できていません」
「そうか、ブラック・ホールの矛盾点はどうかね」
「やはり、プラスであれマイナスであれ何かが放出される・・・では矛盾します」
「そうだね・・・では、あれはブラック・ホールでは無くホワイト・ホーだとすればどうかね」
「ホワイト・ホール・・・・・・・・・・・・・・・矛盾しません、ウワーオ」
回りの皆が驚きの顔で雄一を見ていた。
雄一がゆっくりと皆を見回した。
「どう言う事ですか、ホワイト・ホール・・・って」
「リサ、説明してごらん」
「はい、雄一さん・・・でも皆さんより先でよろしいのですか」
「私は構わないわ、と言うよりリサの方が私よりも先を行っている様だから」
皆が肯定する様に頷いていた。
「では、僭越ながら、お先に・・・これまでブラック・ホールと言われていた物をホワイト・ホールとの結合体と言うか両方の特性を持ったものと考えます・・・するとブラック・ホールの特性である全てを飲み込みホワイト・ホールの特性である物質を放出するものになります。但し放出している物体は重力の影響を受けない物でなければなりません、そしてその放出の視角現象を我々は見ているのです・・・と考えたのですが・・・違うでしょうか、雄一さん」
「どう思うね、みんな」
「リサ、君は次の領域に入ったのだね」
ケンが質問した。
「雄一さんに私には理論を組み立てる能力が既にある・・・と言われました」
「凄いはリサ、能力アップもだけど今の理論は素晴らしいわ」
「ありがとう御座います、ジェニー」
「おめでとう、リサ」
皆がリサを祝福した。
「ありがとうございます、皆さん」
「本当に素晴らしいよ、リサ・・・私もそう考えた、但しその先がある、リサは重力の影響を受けない物の正体は何だと考えたのかな」
「はい、出ているジェットは現在の人類が検知できない物質の放出に伴う物であると考えました、では見えない物とは何か、平面で生きる生物は立体が理解できません、では我々の理解できないSF小説で言う処の異次元か・・・と言うとそうは考えません、我々は昔、最小物質は分子と考えていました、が分子が発見され原子、電子、核、中性子とどんどん小さな物が発見されました、その物質は現代人が検知できない程小さな物質ではないでしょうか、「ヒモ理論」が発表されていますが、これが今の私には不思議です、何故、単純により小さな物質と考えないのでしょうか・・・以上です」
「どうかね、みんな」
「兄さん、兄さんもさう考えたんですか」
「ケン、そうさ、お前が考えた式はその物質への変換エネルギーだよ」
「ええ、解っています、今のリサの考えは僕も考えました、でも、それが全てでは無いはずだ・・・違いますか」
「流石は公式化した人間だ、それで何だと思うね」
「それが解らないので悩んでいるのですよ」
「ケンは私達とは悩みの次元が違ったのね・・・少なくとも私とは」
そう言いながらジェニーは皆を見渡した。
それまで黙って聞いていたヘンリーが言った。
「いや、僕もねいさんと同じ次元だよ」
「私も」「私も」
とルイと佐紀が賛同した。
「それで、お父さん、答えはどうなの」
「リサに聞いてみなさい」
「リサは解ったの」
「雄一さん、良いのですか」
「この人達、此処にいる人間は大丈夫だろう・・・と思うよ」
「待って、どういう事、危ない事、怖い事なの」
「ジェニー・・・危なくは無いが・・・怖く感じる人もいるかも知れない、どうするね、止めるすね」
「私は聞きたいわ、皆はどう」
と佐紀が見渡した。
「言ってリサ、良いわね、みんな」
ジェニーがリサに催促した。
「では、小さな物質に終わりは有りません、多分・・・無限です、そして、小さな物質があると言う事は・・・」
「大きな物質が存在するはずだ」
とケンがリサの話に割り込んだ。
「その通りです、ケン」
「なるほど、少し怖いわね」
とジェニーが漏らした。
「あぁ、私、昔読んだSF小説にそんなのがあったわ、今思いだしたわ・・・確か、宇宙船で光の速度を超え宇宙の果てを超えてしまい、より大きな物質の世界に確かテーブルだったかから出でしまう・・・と言う内容だったわ、その作者は凄かったのね」
ルイが驚いた声で言った・・・が恐怖は無かった。
「へえ~そんな小説があるんだ、作家は日本人かい」
「確か・・・違うは、外国の人だったと思うは、へンリー、まだ家に実家にあると思うんだけど」
「リサ、その本はあるかい」
「残念ですが、ありません」
「成程ね、それを聞くと人間の人生の虚しさを感じる人がいるかも知れませんね、僕は何時かテーブルから出てみたいと思うけどね」
「ヘンリー、私も」
と佐紀が賛同した。
「皆に不安は無さそうだね」
皆の顔を確認して雄一が言った。
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