第21話 牧場生活

一か月後の朝、牧場からトラックが走り出した。

運転しているのはジェニーで、横にはケンではなく少女が座っていた。

彼女は佐紀と言い研一郎の兄、雄一の娘だ、佐紀を高校へ送り届けるのだ。

ケンとジェニーの二人が島に越して来て一週間後、牧場に佐紀がやって来た。

研一郎が兄に連絡を取り、兄が長期の仕事で家を空ける時は娘を預かる事になったのだ。

佐紀は兄の仕事の為、転居が多く当然、転校も多く、そのせいか、人との付き合いに非常に慣れていた。

別に人に取り入る訳ではない、新たな環境への適応が早いのだ。

叔父の研一郎とは久しぶりの対面だったが頭の良い佐紀ははっきり覚えていた。

顔は髭で覆われていたが目が父親とそっくりで直ぐに思い出した様だった。

ジェニーは佐紀に取って叔母に当たるのだが、ジェニーは、叔母さんと呼ばれる事を拒み「ジェニー」と呼ぶ事を断固として強要した。

二人の生活が三人になり、長閑な牧場生活が続いていた。

そんなある日の日曜日の朝、牧場に外国人の青年がやって来た。

街で女性に声を掛け車で送って貰った様だった、騒々しく別れの挨拶を交わしていた。

青年はジェニーの弟のヘンリーだった。

何事にも動じない様な佐紀もほかーんとするくらいの美男子だった。

彼は、それを意識もせず、全く普通に接していた。

彼もジェニーと同じく日本語が話せた。

夫が日本人のジェニーに比べれば日常会話程度と言えた。

こうして、二人の牧場が三人になり四人になった。

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