第18話 第二段階
翌日から、研一郎はロボット・アームの開発を始めた。
その機能は掴む、溶接する、ハンダ付けする、測定する、磨く、塗装すると多彩だ。
最初の作業を研一郎が画面を見ながらアームを操作し5センチ角の立方体を作った。
それは、発電機のプロトタイプの小型の様にジェニーには思えた。
「ケン、これなあに」
「発電機だよ」
「こんなに小さくて、何に使うの」
「そうだな、車なら電気自動車になるね、1年は持つだろう、他の電気用品に付けても良いし家庭用なら半年は使えるかな」
「凄い、凄い」
とジェニーが言っている間にアームが動き出しアッと言う間に一個出来上がった。
研一郎は、出来上がったばかりの箱の発電量を確認し、ハンマーで叩き始めジェニーを驚かせた。
研一郎は再度、発電量を確認し、今度はドリルで穴を開け発電量を確認した。
ハンマーでは発電量は変わらなかったがドリルの後の発電量はゼロだった。
内視鏡で内部が溶解している事を確認し、研一郎は、コンピューターに指示を出した。
ジェニーが見ていると次々に箱ができてきた、量産を開始したのだ、だが、研一郎は十個で止め、指示を変更し再度スタートさせた、今度は10センチ角、次が50センチ角、次が1メートル角だった。
研一郎は全ての出力テストを行い満足そうにジェニーに微笑んだ。
「君のお父さんには申し訳ないが、発電所構想は白紙撤回し、一家に一台の発表をして貰おう、それと、自動車会社も設立して貰わなければならないな」
「わぉ~、忙しくなるわね、早速、父に連絡するわ」と言って携帯で連絡をし出した。
ジェニーが連絡を終え研一郎を見ると、又、別世界へ行っていた。
ジェニーは「ああぁ~、又、行っちゃった、まぁしょうがないか、今度は何を持って戻って来るかの楽しみもあるしね」
と苦笑しながら、彼を紙と白板のある部屋へ連れて行った。
それから一か月後、早くも電気自動車の一号機が発表された、これは発表走行用で発売用ではなかった、従来の電気自動車の膨大な充電器の替わりに箱を取り付けただけのものだ、その為、重心位置が変わり高速走行には適しなかった、現在、新構想の新型車をデザイン中で名は「ジェニー」に決まっていた、発売予定は二か月後と発表されていた。
あの日、ジェニーから電話をもらった父ジェフは政府との交渉が難航し疲れ切っていた。
政府は、現行の電力会社からの圧力に負け承諾しなかった。
電力会社も送電線の貸し出しを拒んでいた。
ジェフには、理解出来なかった、国民の利益になる事なのだ。
ジェフは家に帰り父に報告した、父は予想しており、親子二代とその妻二人の四人で対応策を検討していた、妻たちもそれぞれに事業を影で支えていたからだ。
そんな中、敷地の研究所にいる娘のジェニーから連絡があり、四人は慌てて研究所に向かった。
「ケンは、何処かな」
父ジェフの問いに娘のジェニーが答えた。
「今、別世界」
「どう言う意味かな」
とのカーターの問いにジェニーが答えた。
「今、新たな考えに没頭していて話ができる状態ではないと言う意味なの」
「あそこにいるじゅないか、おーい、ケン」
とのカーターの問いにまたジェニーが答えた。
「御爺様、無駄ですよケンには聞こえません、皆がいる事も気づいていません」
ヘレン「あら残念、皆で飛んで来たのに、予想通り政府も電力会社も乗って来ないから」
ジェニー「ママ、大丈夫よ、私が説明するから」
ジェフ「何、お前ができるのか」と疑がいの言葉を言った
ジェニー「パパ、馬鹿にしたものではないのよ、私だって、とは言え、中身は解らないけどね、まあ、
見て下さい」
と研究所の作業場に連れて行き、それぞれの箱の用途を説明した。
「貴方、これで政府交渉も必要ありませんわ、家庭電気製品で発売できます」と弁護士資格を持つ妻のヘレンが言った。
「明日、発表せい、何なら儂がやろうか」と祖父のカーターが言い出した。
この光景を見ながらジェニーは思った、私のせっかちな性格は一族の血だわ・・・と。
結局、三日後に発表され大反響となったのは言うまでもない。
その発表には、家庭用発電機の発売と合わせて、電気自動車の発売予定もあった。
因みに家庭用発電機の価格は4LDKの家で1年間用が100ドルで勿論、配電盤との接続ケーブル付きだった。
当然、人体への直接接触による事故防止装置も内蔵されていた。
但し、購入者は登録が必要とされ、装置にはGPSが内蔵されている事、内部を見ようと分解を試みた場合の内部溶解の注意もあった。
他にアパートや大邸宅用に大型もあり、こちらは5〇〇ドルだった。
最も幾つも繋げれば長く持つのだが。
アメリカでの発表の後、世界中の企業から代理店契約の申込みがあったのは言うまでもない。
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