第9話 現在地
佐紀が目覚めてまず感じた事は「ここは何処?」だった。
佐紀は寝る時にリサに願い極々弱い光を残してもらっていた、そのせいで目覚めた時に何時もと違う天井に戸惑ったのだ。
ここは宇宙船なので光が全く無い真の真っ暗闇も可能なのだ。
佐紀は宇宙船にいると自覚すると再度目を瞑り昨日の出来事を思い出していた。
とても刺激的だった、・・・でもこれからがもっと刺激的かもと感じ飛び起きた。
トイレに入りルイに教えて貰った無重力でのトイレ用具を見ながら重力の有難さを実感した。
顔を洗い歯を磨き・・・無重力での歯磨きって・・・と考えながら身支度をして管制室へ向かった。
「おはよう」
佐紀が管制室に入ると皆の挨拶に迎えられた。
「おはようございます、皆さん・・・何処へ向かっているの、お父さん」
「さーすが、雄一兄さんの娘ですね」
「そう・そう」
「じゃーヘンリーに説明を頼もう」
「はい、雄一兄さん・・・佐紀ちゃん、予定通り8時間で光速になりました。
それから徐々に速度を下げ撮影可能速度で写真と動画を全方位撮影しました。
そしてF型恒星が密集している星域を発見したので現在そちらに向かって1Gで飛行中です」
「ヘンリー、それで我々は銀河内にいたのですか?、太陽系からの距離は?、それは太陽系で間違いないの?、これから向かう恒星系への距離は?、現在のこの船の速度は?」
「うへー」・・・これはヘンリー。
「ほー」・・・これはケン。
「さすがーー」これはルイの返事だった。
ジェニーは余りの驚きに言葉はなかった。
「お父さん、私何か可笑しなことを言ったかしら?」
「多分、余りにも適切な問いにおどろいたのさ・・・説明はルイに頼もうかな」
「はい、私達は幸いにも銀河系にいます。全周を撮影し星座の配列から我々は一直線に飛行した様で太陽系を確認しました。距離は・・・・・500光年です・・・・・。」
ルイは500光年と言う距離を佐紀がどの様に感じたかを確認する様に間を取った。
佐紀は全く意に介さない様に他の問いの回答を小首を傾げて待っていた。
ルイ「向かっている恒星は30光年先で現在の速度は光速の10倍よ」
佐紀「3年も掛かっちゃうの」
雄一「佐紀、やっぱりまだ寝ている様だね」
佐紀「どうして、お父さん・・・・・あー1Gでずっと進んでいる・・と言う事ね」
雄一「目が覚めたかな」
ジェニー「佐紀ちゃん、残りの燃料を考えながらできるだけ速度を上げる事になったの」
佐紀「光速の何倍まで出るのかしら」
ジェニー「100倍でも3カ月以上かかるわね」
ケン「我々は300倍を目指している・・・・んー・・・光速の10倍、100倍なんて言い難いなぁー」
雄一「そうだね、新技術に伴って今までに無い言葉を考えようか」
ルイ「光速の10倍、100倍、300倍・・・それに最新防御フィールドの名前ね」
ケン「良し、皆で良いのを考えよう。」
ヘンリー「それも良いけど食事にしようよ」
佐紀「御免なさい、私が待たせたのね、お詫びに皆さんの食べたい物を私が作ります」
雄一がお茶漬けを希望し、皆が賛同したので朝食は全員でのお茶漬けとなった。
食後が面白く、なんと日本人がコーヒーでアメリカ人のジェニーとヘンリーの兄弟は緑茶だった。「面白いなぁー日本人が珈琲でアメリカ人がお茶とはね」
「私は朝のコーヒーが無いと目覚めないんですよね」
「ルイさんもですか? 私もです」
ルイの言葉に佐紀も賛成した。
「ジェニーもヘンリーも知り合った頃は珈琲じゃなかったっけ」
「そうですよ、ケン」
「ヘンリーも同じだと思うけど私も以前は珈琲を飲まないと朝が来たとは思わなかった。
でも、ケンと知り合ってから家族が日本に興味を持ったの。
特に母が日本食に嵌ってしまって我が家の食事がどんどん日本食になっていったの。
今では日本人のシェフを雇っていて毎日が日本食よ。
父も祖父母も最初は嫌がっていたんだけど今では母と同じで日本食以外は受付けないみたい。それはヘンリーも私もほとんど同じ、殆どと言うのは私もヘンリーも時々ステーキが無性に食べたくなって食べているからよ。
そんな母がお茶にも嵌って・・・特に緑茶に嵌って結局家族全員が嵌っちゃったの」
「なんで日本人の私達は珈琲なのかしら、お父さん」
「そうだなぁー、お茶に慣れ過ぎて味に飽きているのかなぁー」
「季節に合わせて夏は冷やした番茶にするとか自然に飲みますねー」
「ルイの家も夏は番茶か、日本人だなぁー」
皆は広い宇宙に漂流している事も忘れまったりとした気分に浸っていた。
「良し、では今から我々は設備・装備確認を行う、ヘンリーと早紀には上層階の植物の確認を願おう、ケンとジェニーは隔壁の補修状況確認を頼む、私とルイは下層階の倉庫の確認とエンジンと燃料の確認をする、良いかね・・・・良し行動開始」
「ラジャー」
リサを含めた全員が答え其々の持ち場に散って行った。
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