第5話 冒険旅行への出発

<冒険旅行への出発>-----#005

当人の雄一は新たに与えられた自室でシャワーを浴びさっぱりとした顔で管制室に入って来た。

兄がシャワーを浴びたいと言うので雄一の為に用意された部屋に案内された。

加えて重力を得る為にケンは地球の回りを1Gで回る様にリサに頼んでいた。

再度、親子兄弟の再会の喜びの言葉が交わされ、始めて会った義理の妹になったジェニーと挨拶が交わされた。

「噂はかねがねお聞きしていましたが想像通りの方ですね」

「どのような噂やら、はなはだ興味がありますね」

「良いものばかりですよ」

「こちらの女性はどなたかな」

「ルイと言います、今回の計画には無くては為らない存在でした」

「それはそれは、私の命の恩人ですね、ありがとう」

「・・・・大変光栄です、本人に会えるなんて・・・・・凄く、凄く感激です」

「兄さん、気を付けて下さいよ、ルイは兄さんを狙っています」

「狙っているとは・・・・どう言う意味かな」

「お楽しみに・・」

研一郎、ジェニーと本人のルイが同時に言った。

「・・・ふぅーん、でこちらの青年はジェニーの弟のヘンリー君かな」

と雄一は英語に切り替えて聞いた。

「はい、ヘンリーです。よろしくお願いします」

流暢な日本語が帰って来た。

「おや、随分と日本語が上手いね」

「兄さん、この船の公用語は日本語です」

「それは、それは・・・で影の彼女の名は何と言ったかな」

「私、リサと申します、お会いできて光栄です」

「こちらこそ、なぜ光栄なのかな」

「私の基本設計者にようやく会えましたので」

「基本設計だけで、やはり君の生み親は弟だな」

「はい、これからはダディーと呼びましょう、貴方はアンクルですね」

「あぁいいよ」

「私は困ります、今まで通りケンで頼むよ。

リサ、第一私がダディーだとジェニーをマミーと呼ぶ事になるからね」

「私はマミーでもかまいませんよ、何れ自然とそう呼ばれる様になるのですから」

「えぇ、できたのか」

研一郎が嬉しさと驚きの表情で聞き返した。

「いずれです、何れ(イズレ)」

「うむー、可能性はあるな、うん、宇宙での出産か・・・考えておこう」と兄の雄一は真剣に言った。

「兄さん、ところでこれからどうしますか」

「・・・・うーん、ああ、おう、研一郎、船に自信はあるか、空気、水、食料はどれ程の期間分あるかな」

「兄さん、船には自信があります、ルイ後を・・」

「はい、空気、水は循環式で問題は有りません、食料は二ヶ月以上三ヶ月未満と言う所です」

「ルイさんが準備をしてくれたか、ありがとう、ところで船に名前は無いのか、それともリサ号なのか」

「おとうさん、私も賛成よ、リサは船の名じゃ無いものね」

「私も賛成です、でも何と名付けましょうか」とルイも賛同した。

研一郎、ジェニー、ヘンリーも依存はないようだが考え込んでしまった。

「名前は皆の宿題としよう。

これからの行動だが皆に依存が無ければ地球に戻らず火星に向かいたい。

折角ここまで来たのだしね」

「依存はありません」と研一郎が答えた。

他の者たちは目を輝かせて何度も何度も頷いていた。

「リサ、火星へのコース設定を頼む」

「リサさん、どんなコースを選択したか見せて貰えるかね」と研一郎の要求に雄一が追加した。

大画面に現在位置と火星が表示され軌道が追加表示された。

「素晴らしい、このコースは現在の1Gを持続したまま火星へのコースに乗れるね。

ところで火星予定到達位置への直線コースでは地球の火星観測者に見つからないかね」

「兄さんこの船はステルスです、万が一にも発見される事は無いと思います」

「研一郎、人類を甘く見てはいけない。

現に発射台への攻撃は並では無かったぞ・・そうだ後でその話しもしようか」

「確かに、どうしますか兄さん」

「リサさん、一度火星軌道を後方から過ぎ地球から見て火星遠方から接近してはどうかね。

火星軌道通過は後方10万キロで良いだろう」

「解りました、雄一さん、私の事はリサと呼び捨てでお願いします」

「努力しよう」

皆が見る間にスクリーンに新たな火星への接近コースが表示された。

「所要時間は」

「14時間です、雄一さん」

「さて、それまで何かする事があるかね」

「ルイ、兄さんに船内を案内してはどうかな」

「雄一さんが宜しければ」とルイは嬉しそうだ。

「では、お嬢さんお願いしよう」と二人は肩を揃えて司令室を出て行った。

「もう一組が出来るのも案外早いかも、早紀ちゃんは嫌?」

「お父さんの人生ですから、私には文句は有りません」

「でも、兄さんは早紀ちゃんが反対なら諦めますよ」

「まだ、ルイさんが良く解りません」

「ヘンリー、早紀ちゃんもまだ船内に慣れていません、案内しなさい」と姉のジェニーの声がかかった。

「では、参りますか、早紀さん」と二人も肩を揃えて出て行った。

「この組は案外早いでしょうね」と姉のジェニーのご信託が有った。

「さて、二人だけになった、リサのバージョン・アップをしようか」

「ケン、私達は仕事なの」

「リサに愛情の説明はどうかね」

「うふ、大いに賛成よ」

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