聖櫃

■知られた経緯。

 突然噂になった。


 聖櫃は、遙か昔に神より与えられたもので、現在行方がしれない。

 その力は、魔物の群れを一撃で屠ほふり……。

 どのような強固な城壁も崩壊させる。

 これを手にした者は、世界の王となれるだろう。


 今まで見つからなかったのは、悪魔の地に封印されているからではないか……。

 悪魔の地は、聖櫃の力によって死の大地と化し、人を寄せ付けない。

 普通の人は近寄るだけで死に至るが、近寄る方法が密かに伝えられている。


■追加の噂

 聖櫃は1日1万人の食糧となるマナを生みだす。

 それだけの力を持つからこそ、人が立ち入れない地に隠された。

 だがその地の危険が薄れる条件は存在する。

 悪魔の地に掛かっている霧だ

 夏でも寒くなると、霧は一時的に晴れる。

 そのときのみ立ち入ることが出来るであろう。


■教会と冒険者ギルドが知る悪魔の地

 遙か昔に財宝が眠っているのではと、足を踏み入れた冒険者がいた。

 その冒険者には、呪いがふりかかる。


 戻ってきた冒険者が、体の不調を訴える。

 具合が悪くなって途中で引き返したらしい。


 どれだけ強力な治癒術でも治せなかった。

 嘔吐おうとや吐血だけではない。

 頭髪がゴッソリと抜ける。


 アゴが肥大化して腐り落ちる者や、体中に巨大な腫瘍が出来る症例もあった。

 極めつけは全員の体が、夜中でもうっすら光っていたらしい。

 服だけでなく持ち込んだ道具もだ。


 死んだあとでも体はずっと光っていて、全員が恐怖した。

 そして冒険者を治療していた治癒術士も、同じ呪いに掛かってしまった。

 冒険者ギルドと教会が協議した結果、呪われた悪魔の地であると認定し一切の立ち入りを禁じる。

 それでも欲に目が眩んだ者は立ち入る。


 だが隠しようはなく、夜でも体が光るので呪われたとすぐにわかる。

 その者は見つかり次第に殺された。

 遺体は骨すら残さずに焼き尽くされる。


 それで終わりとはならない。

 悪魔の地が存在すること自体、教会にとっては望ましくない。

 だが足を踏み入れると、確実に死ぬ。


 冒険者ギルドに調査を依頼をするも、ギルドは及び腰。

 危険に見合うような報酬ではないこと。


 さらに問題がある。

 教会にとって、不都合なものがあったらしたら?


 これだけ強力な呪いを発する地なら、なにか強力な呪物があると考えるのが自然だった。

 その所有権なども曖昧。

 教会も、その点は考慮したらしい。

 これだけ強力な呪いであれば、その呪物はとてつもない力を秘めているだろう。

 教会としては、世界をそのまま固定したい。

 大きな変化につながりかねない悪魔の地は放置したいのが本心であった。


 ギルドにとって放置して実害はない。

 双方の利害が一致したことにより、放置が決定する。


■パトリックの調査

 知的探究心の塊であるパトリックが自ら調査を志願する。

 困り果てたギルドが、教会にお伺いを立てたところ、短期間の調査が許可された。


 その際、教会との連絡役を務めたのがマウリツィオ。

 なにか問題があれば、責任を取らされる損な役回りであった。


 パトリックは、最初に周辺地域を調査した。

 悪魔の地外周に魔物や動物はいたが、皆奇妙な形をしていた。

 腕や足が多いものや、巨大なもの。

 目や口の位置が、おかしな場所にあるものなどだ。


 悪魔の地は、アンデッドを送り込んで調査させる。

 普通の使い魔では、息絶えてしまうからだ。


 だからこそギルドも拒否出来なかった。

 その結果、ある程度の情報がつかめる。


 アンデッドを通じての視覚なので、はっきりした光景はわからない。


 残念ながら死霊術士が操作できるのは自我のないアンデッドのみ。

 大量に動かすなら操作は出来ないが、一体だけならある程度操作出来る。

 ある意味で危険物の取り扱いには適任である。


 アンデッドは生物が発する体内魔力を察知して動く。

 蝙蝠のようなものだ。


 それでもある程度の景色はつかめる。

 意外なことに、草木が生えていた。

 ただし動物どころか魔物すらいない。


 悪魔の地は盆地となっており、中央に丘がある。

 盆地全体が霧に包まれていて、全体は見えない。

 丘には複数の穴があり、そこから蒸気のようなものを発している。

 しかも丘は不自然なほど奇麗な三角錐で、人工物の疑いが強い。


 調べようとしたが、魔力のつながりが断たれてしまい、確認することは不可能だった。


■パトリックが再調査した結果

 噂の通り霧は晴れていた。

 死体が、いくつか転がっていた。

 どれも体が、おかしなことになっていた。

 とても大きな腫瘍が出来ているとか不自然に頭髪が抜け落ちている死体もあった。

 あとは骨折している死体も多かった。


 遺体が、水辺に集中していた。

 試しに死体に水を飲ませてみたが変化はない。

 生きている者のみに、影響がある。


 悪魔の地に川があり、他の川や池に流れこんでいない。

 同じ悪魔の地にある池に流れている。

 その池は常時沸騰していて、水が溢れないようになっているようだ。


 中央に丘があって、中への入り口があった。

 そこには入れたが、扉があった。 

 魔法ではビクともしない。


 扉の前の通路には、左右に守護者の像が複数体配置してあった。

 扉に魔法を掛けた瞬間動きだしアンデットが破壊されてしまった。


■安全に悪魔の地を調べることが出来る条件

 成長し、自律的に動ける複雑な生き物でないこと。

 ホムンクルスがそれに合致する。


■聖櫃の数

 悪魔の地に存在する聖櫃は7つ存在する。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る