冷凍保存
コスギサン
第1話
10年ごとに"そいつ"はオレの前に現れる。初めては10歳の時だった。
夢の中に"そいつ"は出てきて
「お前の望むものを何でも冷凍保存してやろう。」
って言うんだ。
その時のオレは離婚しそうだった両親の関係を冷凍保存してもらった。家族がバラバラになるのは嫌だったんだ。
20歳の時には当時付き合ってた彼女との思い出を冷凍保存してもらった。絶対に忘れたくなかったから。
そして30歳の時、財布にあった5万円を冷凍保存してもらった。財布から出しても次見た時には財布の中は元通り。働かなくてよくなった。
でも何一つ上手くいかなかった。両親は離婚していないが喧嘩の絶えない日々。
彼女にはフラれて眩しい思い出だけが頭から離れない。
もうすぐ紙幣も変わる。5万円も使えなくなる。仕事もやめたから金を稼ぐこともできない。再就職も考えたが両親と彼女の記憶がその気力を奪い去った。
冷凍保存は文字通りその瞬間で時を止めるだけ。むしろそこから良くなる可能性を潰すってことなんだ。
今日は40歳の誕生日。冷凍保存を頼むものはもう決めている。
オレはすんなり眠りについた。
そして"そいつ"が出てくるや否やオレは頼んだ。
「オレを冷凍保存してくれ。」
冷凍保存 コスギサン @kosugisan
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます