第3話 本体
「ついたよ。ここに僕の本体がいる。」
「病院?」
連れてこられたのは、立派な大学病院だった。
陰宮は具合が悪いのか?謎は深まるばかりである。
それにしても、僕が小さな炎に囲まれ、勝手に身体が動いていく姿は誰にも見られていないのだろうか。
「あ、そういえば、陽太くんを囲んでいるその鬼火は、他の人には見えないよ。だから安心してね。」
「う、うん。」
陰宮が俺の心を見透かしたように淡々と答えた。
安心も何も、こんな状況に巻き込まれている時点で安心はできないのだが。
そもそもこれが鬼火と言われるものなのも今気づいた。
こんなに何も把握しないでふわっとした状態のまま、俺は待ち受ける状況に耐えることができるのだろうか。
「僕がいる病室に案内するね。そこで少しお話させて。」
「うん。」
さっきから緊張で口が渇いて声が掠れる。
どんな話が待っているのか、どんどん不安が募っていく。
入口を通り抜け、無言のままエレベーターに乗り、ついに彼の本体がいるという病室についた。
「これだよ。僕の本体。」
「えっ。」
横たわっている陰宮は、身体全体に包帯がぐるぐると巻かれていた。
たまに痛そうに眉間に皺を寄せている。
「僕ね、全身火傷しちゃったんだ。弱かったから。」
そう言って儚く微笑む陰宮の顔は、全てを受け入れて悟りを開いたかのように優しかった。
「でも、陽太くんが今からする話をきちんと理解してくれたらすぐ良くなるよ。」
「本当か?」
「うん。僕は陽太くんのことも助ける義務がある。大丈夫。信じて。行方不明になった人たちみたいに声が奪われる前に、僕が解決するから。」
「俺を助ける?」
「そうだよ。陽太くんは、君自身の先入観と僕自身の弱さのせいで、行方不明になった他のクラスの人みたいになるところだったんだ。この街に伝わる言い伝えにのっとってね。」
まさか、この街の言い伝えが現実に起こったというのか。
しかも、自分が当事者となって。
「分離できるほど
「へ?」
もう完全に思考がついていっていない。
なんだかえらいことになっていることだけは、なんとか飲み込んだが。
陰宮、正確には陰宮の生き霊が何をしようとしているのか、全くわからなかった。
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