第2話 正体
「お前は誰だ?こんなことして何のつもりだ?」
静寂が包む中、俺の声に怯むどころか相手が困ったように微笑んだのが見えた。
「そっか、忘れているよね。高3だと大学受験とか就活で今は自由登校だし。」
「どういうことだ?」
俺が忘れている?
今話しているのは知り合いということか。
こんな現実離れした展開を引き起こしているのは、俺の知っている人物なのか?
「僕は
まさか。陰宮透。教室の端の席で、いつもずっと座ったまま何か黙々とやっているやつだ。誰かと話したり、外で遊んでいるのは見たことがない。
でも、生徒会長としてクラスメイトを忘れているなんてなんたる失態だ。
「陰宮!? ご、ごめん! 暗くてわからなくてって言っても言い訳か……。
本当にごめん。でも、何でこんなことになって……。」
「これは僕のようで僕じゃないんだ。わかりやすく言うと生き霊ってやつだよ。僕の本体は別のところにある。」
俺はいつの間にそんな霊感を手に入れたのか?
というか、陰宮はもうこの世の人間ではないのか?
今の状況が分からなすぎて、頭の中がパンクしそうだ。
自分から出る声の温度がみるみる熱くなっていく。
「生き霊!? 陰宮、お前、学校で会わないうちに何かあったのか!? しかも、こんなことになるなんて、俺、もしかして陰宮に何かした?」
「大丈夫。僕はちゃんと生きているから。解決方法もある。ついてきたら、全部わかるよ。それに、こうなったのは僕も悪いんだ。」
「そうなのか……?」
「うん。だからついてきて。」
陰宮は終始いたって冷静だ。
それに、黒く澄み渡った瞳の奥から、感じたことのないくらい強い意志が伝わる。
口調も、従わざるを得ないと思わせるような芯のあるものだった。
「わかった。」
とにかく今は陰宮についていくことが謎を解く1番の近道だ。
俺は黙って彼についていくことにした。
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