この世界は誰のもの

第1話 神隠し

夕闇の迫る通学路。

木々の葉たちが赤く色づき、カサカサと風に揺られて音を立てる。

高校生活も残り僅かとなった今。

俺が通う高校では妙な事件が起こっている。

よくある学校の怪談とでも言おうか。

この高校のクラス委員長たちが順番に姿を消しているのだ。

しかも、行方不明になった生徒は、しばらくしてから必ず声が奪われた状態で戻ってくるという。

そしてまた気づいたら次の人が忽然と消えている。

ちなみに、行方不明者が出たのは今日までで5人。

1年A組、1年B組、2年A組、2年B組、3年A組の委員長だ。

身体は元気そうでも、声が戻ってきた人はまだいないらしい。

詳しいことは何もわからないが、幸い俺のクラスではまだ被害が出ていない。

が、このままいくと次狙われるのは我らが3年B組だ。俺らが最後の1クラス。

しかも標的は流れ的に俺だろう。クラス委員長と生徒会長を兼任しているからだ。

この高校の生徒会長である俺の力で、なんとかして食い止めたい。

今まで、勉強や運動は駄目でも、陽気に振る舞い、場を盛り上げ、空気を読んで読んで読み尽くした結果、絶対的地位と多くの信頼を勝ち得てきた俺のことだ。

不可能なことなんてないだろう。

今回だって簡単に俺の力で犯人を見つけ出し説き伏せてみせる。

俺の行動はいつも完璧なんだ。あっという間に解決してやる。


陽太ようたくん、ちょっとだけ我慢してね。」

「なんだ!?」

「あの時みたいに僕は折れない。……僕が君の暴走を止める。」


考え事をしている最中。

背後から声が聞こえ、驚いて後ろを振り向いた瞬間。

俺は、一瞬にして色とりどりの小さな炎たちに囲まれ、金縛りに遭ったかのように動けなくなった。

最後の方の言葉は、よく聞こえなかった。

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