第16話 山登り

 朝起きた恋也は、腰に激痛が走ってうまく立ち上がれず苦しんでいたが、レンが癒しの力で痛みが引いて、走ってモノレールの駅に向かうが、乗れずに遅れる可能性大。

「レン、どうしよう?」

「モノレールの電線を走ればいいだろう?」



 レンの提案で、恋也は恋愛勇者の姿になり、電線を走り抜ける。今日はほとんど乗る人がいないようで、上を通ったとしても怒られることも無い。まず高速で走っているので見えないと思う。

 そして、モノレールが到着する前にホームに降り立ち、ホームに入ってから扉が開くタイミングで駅前に向かう。そこでは全員がそろっていた。

「恋也遅いよ!みんなもうそろってるよ!」

 実花は怒りながら言う。

「ごめん、寝坊した」

「時計は?!」

「電池をまだ入れてない」

「早く入れなさいよ」

 呆れる実花に苦笑いをする岩太。

「全員そろったね。お父さん、行こう?」

 片目を眼帯している父親に言う。

「君たち、よろしくね」

「よろしくお願いします」


 恋也たちは車に乗り込む。運転は未来の父親。片目怪我していても運転はできるようだ。岩太が助手席に乗り、実花と真保が真ん中、恋也と未来は一番後ろの席に座る。

「みんな、狭くない?大丈夫?」

「平気だよ。未来も大丈夫?」

「未来は慣れてるから平気だよな?」

「お父さん!」

 恥ずかしそうに顔を赤らめる。彼ははっはっはっと笑う。

 そうこうしていると、彼らは例の山に到着する。窓の外から見ていると、いまだにあの光の柱が立っている。周りには見えてないようだ。未来には見えてるようだ。

 車を降りると、神職服を着た男たちと巫女服を着た老婆が立っている。自分たちに気づくと、振り返って見てくる。

「未来、勝人。来たのか」

「母さん」

「おばあちゃん。友達も連れて来た」

「友達は連れてこなくて良かったぞ」

 困ったような顔をする。

「だって、頼りになるから…」

 もごもごする未来。恋也は山を見る。山からは光の柱が立ってるが、眩しくない。だが、山からは異様な気配がする。

「どうしても入るんか?」

「もちろんよ」

「しょうがない。君たち、手を出しなさい」

「恋也くん、こっちに来て!」

 未来に呼ばれたので、恋也は走っていく。手を出すと、白い花を渡される。

「これはユキヒロンと呼ばれる危険を知らせてくれる貴重な花。それと一度だけ自分の身を守ってくれる払いの力を込めたお祓い塩を小瓶につめた。これを持っていれば一度は大丈夫だ」

「ありがとうございます」

「さて、そろそろ行くよ」

「勝人、あまり危険なことはするなよ」

「大丈夫だよ。母さんの弟子より払いの力は強いから」

 彼は自信満々で言う。

「それに私だっているよ。大丈夫だよ」

 未来も自信満々で言う。

「気を付けて行けよ。何かあれば、すぐに戻ってきなさい」

 おばあさんは恋也たちを見送る。


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