第14話 霊能力者、未来

「もう少ししたらバイト終わるからちょっと待ってて。色々話したい事あるから」

 彼女はそういうと、店の中に戻っていく。



 恋也たちは一階のエレベーターホールで未来を待つ。

「真保、未来のことなんだけど」

「あの子?何かあるの?」

「あの子、見えないはずのレンの姿を見たんだ」

「もしかしたら、霊媒師だからかもしれない。何なら聞いてみたら?答えてくれると思うよ」

そんな話をしていると、私服姿の赤黒い長髪の未来が走ってくる。

「お待たせ!ごめんね待たせて」

「全然いいよ、ていうかバイトしてるの?高校に入ったの?」

「違うよ。今うちの家計が厳しくてね。バイトしないとやっていけないんだよね」

 あははと笑う未来。

「ねえ、少し聞かせて」

 恋也は未来に訊く。未来は「なに?」という。

「君は俺の隣にいる男が見えるの?」

 未来は少し顔を強張らせて小さく頷く。

「その様子だと、悪霊じゃないみたいね」

「悪霊ていうか生きてるし」

 そのこと聞いて未来は表情が固まる。

「マジですかいな」

「マジだよ。ね、レン」

 レンは頷く。

「ごめんなさい!見えないものは全部幽霊に見えてしまって…」

 慌てる未来に恋也は首を振る。

「大丈夫だよ。レンってそういうやつだから。ところで未来が普通の人には見えないものが見えるようになったのはいつ頃なの?」

「えっとね、小三の時かな?うちの家に多額のお金を持った人がやって来て、お祓いを頼んできたの。それで、私のお父さんが行ってきたの。そして帰ってくると、頭から血を流していたの。私びっくりして腰抜かしちゃって。でもどんな奴なのか気になって気になって、思わずお祓いする場所に行ったの」

 長々と話す未来に真保が口を挟む。

「未来、その祓う場所に向かったの?」

「危険じゃないの?」

「結構危険だよ。でもばれなければ大丈夫だって思ってたの。それが失敗だったの。

中に入った私は異様な空気に身震いしたの。本当に危ない場所だって。でも引き返したくなかったの。ここで引き返したら、霊媒師になんてなれないって。そして進んだの。この場所は危険な空気が閉じこもってしまってて悪い物がたくさん寄り付いてしまっていたんだって」

「それで、見つけれたの?」

 未来は頷く。

「見つけた時、思わず息を呑んで物陰に隠れたの。そいつからはと同じ気配がしてたの。こいつは幽霊じゃないって。だからお父さんの祓いの力が通用しなかったの。私も怖かった。私は声を押し殺していたんだけど、見つかってしまったの。その時は無我夢中で逃げた。捕まらないように。その時に声がしたの。『こいつを倒す力が欲しい?』って。私は心の中で欲しいって願ったの。そうしたら『私と契約しましょ』て言われて…」

「契約したのか?」

 レンの問いに、未来は頷く。話を聞いていると、初めのレンとの契約の仕方が似ていると感じる。

「それで、契約したら、右腕に真っ赤なタトゥーみたいな意味不明の文字が主されて、私は奴を祓うことができたの。その後におばあちゃんたちがやって来て、こぴっどく叱られたの。その後に九尾の狐が人間に化けたみたいな女の人が私の部屋の中に居た時はひっくり返るようにびっくりしたよ。本当に焦った」

「それは焦るね。恋也はどうだったの?」

 実花は恋也に振る。

「俺もそうだよ。疲れて帰ってきたとき、レンが居座ってたからね。そう考えると、そいつもレンと同じ世界からやってきたことになるね」

 レンに目をやると、嫌な目つきで未来を見る。

「どうしたの?」

 声を掛けるが、答えてくれない。彼女にいる誰かが気になるのだろうが。

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