第12話 話したい事

 実花は驚いた顔をしたが、すぐに落ち着きを取り戻す。

「うん、聞くよ」

「ありがとう」

 恋也はお礼を言うと、上の服を少しだけ上げる。その下から青あざや切られた痕。火傷の痕が深く残されている。

「これ全部、母さんと母さんが連れてきた男がやった痕。父さんが死んでからすぐにやられた。母さんの思い通りにならないと、やられる」

 言葉が詰まりながらも、恋也は全てを話す。自分はあの女の第二の人生ゲームのキャラクターなのだから。

「そうだったんだ」

「じゃあ、この学校に入学した理由って」

「母さんが入学できなかったからさ。だから自分の考えは正しいと思っているうえに自分に間違いはないと思っているみたいな感じ」

「なにそれ!子供はもう一人の自分じゃないのに!」

 真保は頬を膨らませながら怒る。

「母さんはそう考えてるんだよ。父さんが死んだときだって、うれし涙を浮かべてたし」

 恋也は絶望したかのような顔つきになる。

「恋也!私たちであの人を地獄のどん底に叩きのめしましょう」

「それがいい!学校の友達にも話して協力してもらおう!」

「いや、そこまでしなくても…」

 恋也はそこまで物事を大きくしたくないのでそういう。

「いいんじゃないか?友達がお前を助けようとしてくれるんだ。いいことじゃないか」

 レンは氷をゴリゴリと口に含んで食べる。そんな姿を恋也は眺めていた。



 恋也たちは学生手帳を使って会計をする。

「もしよかったら、一階にあるクレープ屋でおやつ食べて帰ろ?」

「そうだね。その方がいいね」

 真保がガラスでできた手すりにもたれかけた瞬間、そこの部分が消える。体勢を崩した真保はそのまま倒れる。

「真保!」

 恋也は落ちていく真保の手を落ちながら掴み、でっぱりに恋也は掴む。腕を壁に打ち付けて二人は宙づりになる。

「恋也!」

「真保!」

 岩太と実花は手すりからぶら下がる二人を見る。

「なんで手すりが消えたんだよ!」

「知らないよ!早く救急隊員呼んで!」

 岩太はスマホを取り出して、電話を掛ける。

「早くかかってくれ!」

 必死に電話をしている岩太。

 ぶら下がってる恋也の腕もそろそろ限界に近い。

「れ、恋也、くん!」

「真保!絶対離すなよ!」

 恋也は異空間に居るレンに声を掛ける。

「レンって飛べたりする?」

「俺が飛んでいるところでも、見たことあるか?」

「ないね」

 下の方で、人が騒いでる。この状況を見て慌てているようだ。

「れ、恋也くん私の手、離してもいいよ。運が良ければ、あの噴水の水の中に落ちるから」

 真保はそんなことを言ったが、絶対無理だろう。

「だめだ!こんな高さだ!噴水の中に入ったところで自殺行為だ!」

「でも、このままじゃ!」

「恋也!今救急隊が来るからもう少しの辛抱だ!」

 岩太はそういうが、今掴んでいるでっぱりもそんなに長く持ちそうにない。恋也は三階に居る人たちが目に入る。真保の体勢からして丁度いい場所。恋也は覚悟を決める。

「真保、今から身体を大きく揺らす。だから、俺が手を離した瞬間、真保も手を放して。大丈夫、俺を信じて」

 真保は不安そうな顔をしたが、恋也を信じることに。

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