第2話 幼なじみ

 恋也は学校内に入るために、スマホを操作して生徒手帳を開く。それを改札口のような物にスキャンする。中の画面に『水樹恋也 入校完了』と出る。

 この学校は完全デジタル化が進んでる学校なので、授業は教科書、ノートは全てタッチパネルで行う。生徒手帳はスマホに転送される。さらに

ーハルブレット計画ーの一環で、ここの学生のみ使える無料サービスがある。自動販売機、食堂、ショッピングモール、スポーツジム、娯楽施設などとたくさんの施設が使い放題。もちろん無料Wi-Fiもある。

 恋也は重い足取りで教室に入る。彼の席は窓側の一番後ろ席。いわゆる特等席。恋也は鞄を置いて席に座り、中からタッチパネルを取りだす。

「恋也!またギリギリのモノレールに乗ったでしょ?!」

 恋也は思わず、ドキッとする。上を見上げると、綺麗な桃色の髪をツインテールに結んだ九条実花くじょうみかが恋也を睨んでいた。彼女は幼稚園からの幼なじみ。親同士が仲が良いため、中学まで毎日会っていた。

「遅刻していないからいいだろ?」

「良くない!」

 実花の攻撃はとても強い。

「二人共は本当に仲が良いんだな」

 二人は同時にそちらを見る。そこには遠藤岩太えんどうがんたがいた。彼は中学の時に恋也たちの学校に引っ越してきた友人。それ以来、三人はずっと一緒にいる。

「岩太!あんたからも言ってあげてよ。もう少し早く来いって」

「別に良いじゃないか。遅刻してないんだし」

 ヘラヘラと笑う岩太。

「そんなんだからダメなんだよ。もう少し早いのに乗らないとだめだよ!」

 プンプン怒りながら自分の席に戻る実花。その姿を二人は遠目で見ている。

「なんか実花って、お母さんみたいになってきたと思わないか?」

「奇遇だな、俺もそう思うよ」

 珍しく二人の意見が合致したため、二人は手を結ぶ。

「はーいHR始めるぞ~。席に着け~」



HRも終わり、午前授業が終わった。今からは食事の時間。

 恋也は食事をする気もなく、誰も来ない屋上で寝そべっていた。誰も居るはずのないところで恋也は口を開く。

「おい、居るんだろう?出て来いよ

 恋也がそう言うと、何もなかった空間から若い男が出てくる。髪は薄緑色の短髪で、桃色のカチューシャに中が赤色の服に、黒がメインのたくさんの絵が描かれている前開きのコート。下はジーパンのスニーカーの履いている。

「よくわかったな。私がいる事が」

「当たり前だろう?お前の気配を忘れるわけがない」

 恋也は風で髪が靡いてる。

「お前、俺から離れないのかよ。俺はもう戦えないんだぞ」

「離れたりしない。まだお前は戦える」

「いやだから戦えないんだって」

 恋也は思わず身体を起こす。

「それじゃあ聞くが、お前が戦え無くなった理由ってなんだと思う?」

「理由?わかんね~よ」

が無くなったからだよ」

「守る者?」

「そう、もとはと言えば私がこの地の来たのは守りたい者の呼び寄せる力があったからだ」

「守りたい者…」

「お前は、父親とあの娘の母親を救えなかったため、それに絶望して戦え無くなっただけだ。いつか元に戻ることを祈っている」

 彼はそう言って姿を消す。一人残った恋也は手を強く握る。

「あれさえ…あれさえなければ…!」

 恋也は奥歯を噛みしめる。


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