恋愛勇者~人を守れなかった勇者がもう一度戦う~

太刀川千尋

恋愛勇者、成長編

第1話 始まりの朝

   ある日の朝。

 台所で母親が食事の支度をしている。母親は掛け時計を見て、ため息を付く。母親は二階に上がり、息子の部屋の扉をノックする。

「恋也!!いつまで寝てるの?!早く起きなさい!」

 寝室では、不満そうな声を上げ、身体を起こす。

「う~ん…はーい…!」

 青年の名は水樹恋也みずきれんや。高校一年生。髪は灰色で、黒い瞳が特徴的。彼はベッドから起き上がると、ひとあくびをする。そして、カーテンを開け、日の光を部屋の中へ入れる。そして時計を確認する。時計の針は六時を指している。秒針が無いタイプなので動いているかは分からない。

 恋也は部屋から出て、下に降りる。

「眠~い…ゲームやりすぎた。一時に寝たけどやっぱり眠いものだな」

 恋也はダイニングに行くと、朝食が用意されている。パンとスクランブルエッグ、ベーコン、サラダと牛乳。

「早く食べて学校に行きなさいよ。お母さん出るからね。食器も洗って出るのよ」

 母親はバタバタと部屋を行き来している。

「はーい、分かっているよ」

ー母さんはもう仕事か。こんなに早く出ることは、今日は遅くなるかな?-

 母親はスーツ姿で部屋から出てくる。

「じゃあぁ母さん行くね」

「いってらしゃい」

 母親は家から出ていく。一人残った恋也はさっさと食事を済ませて、食器を洗う。

「さてと、母さんも行ったことだし着替えるか」

 恋也は学生服に着替える。彼の通う学校はこの国、『策恋さくれん国』の高校は離れ小島にある、学生島と呼ばれる世界最大の高校とも呼ばれる。そこまではモノレールに乗って向かうようになっている。

 恋也はタッチパネルが入ったカバンを持ち、頭に桃色のカチューシャを付けて、家を飛び出す。この学校は制服さえ着ていれば髪型や髪色、アクセサリーなど付けていても怒られたりしない。

 だが、まだ誰も知らない、恋也の本当の姿は『恋愛勇者』だとことを。



 『=間もなく、学生島へ行きモノレールが出発いたします。学生の皆様はお早めに=』

 ぞろぞろと生徒は乗っていく。一番最後に遅れる形で乗り込むのは恋也である。

「あっぶな!時計が壊れているの忘れていた…」

 周りの生徒は恋也を見てくすくす笑う。毎日見ている者からしてみると、いつもの恒例だ。

 恋也は上着のポケットからスマホを取り出す。ただ今の時間は八時を表している。この後のモノレールの時間は八時半に出発。入校時間は八時五十分まで。入れなかったら職員室に行かなければいけない。そうなると面倒くさいことになる。

 ここから学校まで約二十分。これに乗れなければ遅刻になる。後は落ち着いて、教室に入ればいいだけ。

ーさて、今日は何があるかな?-

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る