あなたはだれ
ここ数年、全く外に出ていない。世の中がそういう風潮になってきたというのもあるが、インターネットであらゆることが出来るのに外に出るのがバカバカしくなったのが一番の原因だ。世論もそれに付随するものではあるのだけど。
本当に、ここ最近のネットは凄い。通販などは勿論、仕事の会議なども支障なく行える。一昔前だとラグや回線の問題でスムーズにいかなかったらしいが、今じゃネットで行うのが主流と言ってもいいほどだ。
VRの発展によって、ツールさえあれば外にいるのと全く同じような体験も出来るし、会話なども実際にその場にいるかのように行える世の中だ。わざわざリスクを背負って外に出る意味なんてほとんど無い。
それでも、なんとなしに外に出たくなった。私だって人間だ、気まぐれでそう思うこともあるだろう。
しばらく使っていないせいか、玄関の扉は錆び付いていた。まぁそこまで酷くはなかったので、鍵をひねって強引に扉を開ける。
一番最初に入ってきた情報は腐臭だった。
次に、そこら中に転がる死体が目に入る。
それ以上の情報は、脳が拒否した。
あり得ない、あり得ないのだ。
玄関の前で腐っている死体は、先程まで話していたはずの友人なのだから。
吐き気がのどを超える前に、とっさにドアを閉める。
それでも先程の事実が変わるわけではなく、ほとんど靴もない玄関に吐瀉物をばらまく。
不意に、携帯が音を鳴らす。死体になったはずの友人からメッセージがあるという通知だった。
きっと、外の光景は夢だったのだ。
私はそう思い込むことにした。
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