ないもの探し
朝起きたら、胸にぽっかりと穴が空いていた。
なにかを明確に失ったのに、何を失ったのかはわからなくて、もやもやとした感情だけが自分を満たす。
それが何なのか考えていると、今度は寂寥感が胸に募る。正体のわからないものにさみしさを感じる理由は、やはり確実になにかを無くしてしまったからなのだろう。
結局それがどのようなもので、どんな影響を僕にもたらしていたのかはわからないけれど、こんなにも懐かしさのような、さみしさのようなものを感じるのだ、きっと大切なものだったに違いない。
でも、やはり何かはわからない。
物ではないのは確かだ。精神的な、形のないなにか。思い返してみても、それが何なのかはわからず、やはり胸に穴が空いているという実感だけが襲いかかる。
そもそも失ったものなんてないのかもしれない。唐突に、ぽつりとなにかを無くしたという漠然とした、しかし確かな感覚だけが現れたのかもしれない。
もしそうなのだとしても、僕はその失った何かを探さずにはいられない。
だって僕の胸には、明らかな空白が出来てしまったのだから。
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