何かの断片
街が浮遊するようになったのは今から遙か昔のこと。その日から世界はちぐはぐになった。
浮遊、といっても実際に飛んでいるわけではない。何というか街が電波になっているイメージで、その入り口が色々な場所に出現しているような、そんな感じだ。どうもあやふやだがそこらは勘弁願いたい。旧文明に向けて説明するにはあまりにも用語が足りないのだ。
現状の説明に戻ろう。
今日、移動に困ることはほとんどない。行きたいところの『門』を呼べばどこにでも行ける。なるほど便利な世界ではある。しかし、人々は利便性を重視したことによってあまりにも多くのものを失った。
景観なんて物は勿論のこと、粋という概念は消失し、人間関係のいざこざは増え、果てには国家間の問題も多発し、犠牲になった者は数知れない。
あの日から、この世界は地獄に近い何かに生まれ変わったのだと、そう思っている。
だが、『門』の本質はそこではない。
人工的人類進化計画。それによって生み出された概念が『門』である。
端的に言うと、おかしくなったのは世界というよりも、私たち人間の方なのだ。
形をあやふやにした私たちに子孫が生まれることは希であり、時間の流れも正常に働かなくなり始めている。
私たちが気づいた時には遅すぎた。こうなることは予想に難くなかったはずなのに、と悔やんで過去が変わるならいくらでもそうするところだ。
だが、そうではない。だからこそ、なればこそ私は意志を託そう。
うまいこと行くかわからない。私は科学者ではないし、こんなのは思いつきに過ぎないのだから。
私がこれ以上できるのは、祈ることくらいだ。
これが過去の君たちに届いて、少しでも人類愛に満ちた誰かが拾うことを願っている。
俺は失敗した。次なんて無いかも知れない。でも、結局次に託すしかない。
最初から気づくべきだった。でも、気づけるわけがないのだ。それに抗うには
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