第14話「超絶ウルトラ有能コミュ障!世界一の幸運を無駄に浪費して、それでも幸せになった!の巻〜」

ナレーションが唐突に流れる。

 「この世界は個人の幸福を追求するということが当たり前になった現代において、個人に「幸運値」というパラメーターがあるとするならば、この「幸運値」が高いか低いかで幸福になれるかどうかが決まってしまう。

 そして、ここに幸運値が史上最高の人間が一人…」


 「私は、運がいいんだ!」

男は叫んでいた。

 「私は!全てを手に入ることができる!なんでも買える金も!うまい食い物!他人の時間!性格が良く綺麗な女!やりたいこと叶える力!いままでなんでも手に入った!だから…」

男は、ベットの上でやさしい家族に囲まれて最後に力んだ!

 「だから!私は!もう一度!新しい人生も手に入れてやる!神がいるのなら私に忖度を!!!…」

 ピーーーーーー

 ベットの横にあるよくわからない機械から男の命が尽きた音が響いた。


またまた唐突なナレーション

「この世界といった世界の異世界の物語!は〜じま〜るよ〜!次の世界は、人類が魔王に怯えながら住まう世界!そして、あと1年で魔王が人間を滅ぼす模様!!…だが!安心してくれ!もちのろんで、最強の異世界召喚者がいるんだよ!これで安心!異世界召喚者は絶対魔王を人間のために滅ぼしてくれるよ!…きっと!多分!と思う…くれるよね?」


 「ふははははは!!!」

 「さすがラキさんだ!こんなむずかしいことも常人の十倍早くできてしまうなんて!さすがです!」

 煽てる男たちと煽てられる男

 「金!」

 「「はい!またお願いします!」」

 …


 「お?賭け事屋か…」

 カランコロン…

 10分後

 「お前のまけだぁああ!ロイヤルストレート!!!!」

 「は?…お前の負けだよ。はい、ロイフラ(ロイヤルストレートフラッシュ)」

 「ひぃいいい」

 男は、舌打ちをして金を持って出ていった。


 「神官様!こんなところに」

 「はあ?俺がどこにいようとお前らには関係がねえだろ?」

 「今日も信徒たちが貴方様のお力をいただきたいと…」

 「はあ?!めんどくせぇ!お前がやれ!これ神託な!!」

 …


 煽てられた男は、颯爽と帰路に着く。

 ダンッ!!バキィイイ…

 男の一撃で部屋内の机が真っ二つに割れた。

 「俺は、なぜ煽られる!もっと俺の能力の高さを一般人たちが崇拝してもいいはずだ!なぜ!望まれていない!新しい世界に生まれ変わっても!頭脳も能力も容姿も性格も人脈も誰よりもあるはずなのに!なぜだ!!」

 「二度目の人生も手に入れたのになぜ?!」

 …

 「あ…」

 「なんだ!!お前は、部屋にいろ!」

 「はぃ…」

 声を出した小さい生き物が一歩下がり、その場でウジウジしていた。

 「…」

 「…」

 「…ふぅ〜…ああ、なんだ…アイ、こっちに来なさい」

 小さな生き物だったアイが小走りでラキの目の前まで来てから一歩下がって下を向いた。

 ラキはアイの頭に右手をおいてわしゃわしゃと撫でた。

 「わるい…アイはいい子だからな。怒って悪かった」

 「あの、ラキさん…ご飯できてます」

 「そうか、一緒に食べよう」

 「はい!」


 1年後…某世界最恐悪災魔王の王宮

 「おまえ…何者だ…なぜそこまでの力がありながら、他人に組みする?」

 「しらね」

 「…我も、まさか私よりも強いやつが…いや、我よりも幸運なやつがいるとは思わなかった」

 「そうか、俺は生まれる前から誰よりも幸運だったから…な」

 「…我は…我は、ただ幸せになりたかった…」

 「…そうだろうな…」

 「…お前は…なぜ…」

 「俺もだ…」

 「…」

 「お?死んだか…」

 …


 ラキの家

 少し空いた窓から緩やかな冷たい風が吹き込む。

 「ラキさん!!!」(バッ!)

 アイはベットから飛び起きた。

 「え?さっきの夢は…」

 窓が風に揺れてまた少し開いた。

 「よ!アイ!」

 「ラキさん!」

 アイはラキに走り寄り、一歩手前でピタッと止まりラキの顔を見上げた。

 「どうした?アイ、泣いていたのか?」

 「ラキさん…」

 アイはさらに一歩、ラキに近づいた。

 「…」

 アイは下を向いた。

 「アイ、ありがとう」

 アイは、頭にラキの手が乗った気がした。


〜ナレーション〜

 男は2回目の人生を終えた。男は2回目の人生も死ぬ前に幸せを感じていた。1回目は幸せにしてくれる者がたくさん近くにいて幸せを感じた。だが、2回目は幸せにしてくれる者がたった一人しかいなかった。そして、近くにもいなかった。しかし、男は1回目よりも2回目の方が幸せを感じた。他人の幸せを願いながら。

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よわい三十の魔法使いが語る 拳パンチ! @kobushipanchi

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