第2話

「ほんっとに、全然出れねえ!」

「さっきから何回同じことやってんの?ちょっと落ち着こうよ」

猿のようにジャングルジムの中を駆け回るキョウタをたしなめながら、エレナも落ち着かない様子でグルングルンと前回りを繰り返している。あとの2人は、ジャングルジムのちょうど中心で向かい合って腰掛けている。チハルは、ぼんやりと校舎の方を見る。確かに、檻のようなジャングルジムはどこまでも続いているように見える。それ越しに見る校舎は、いつもよりずっとずっと、手の届かない別の世界にあるように感じられた。

「ミツキ、そんなに詳しいんだったら出る方法、知ってるんだろ?」

半分飛び降りる勢いで降りてきたキョウタが言う。

「別に、詳しくなんかないよ。キョウタたちが教室で大声で盛り上がってるレベルのことしか、知らない」

「じゃあ意味ないじゃーん」

エレナがまた、呆れたように声を上げる。

「早く帰らないと……ママが心配する」

チハルが遠慮がちに呟くと、エレナは首をかしげる。

「そう?まだ17時じゃん。それに今、時間も止まっちゃってるんでしょ。大丈夫だよ!」

「オレん家もどうせ誰もいないしなー」

キョウタは笑って、ミツキん家は?と聞く。

「今日は18時から塾」

「ふーん、そっか」

4人の間にしばらくの沈黙が訪れる。生ぬるい風がジャングルジムの中を通り抜けて、木々のざわめきが遠くに聞こえた。

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ジャングルジムくぐって 三条 かおり @floneige

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