第6.5話 中立とは争わない。それは術がないから
「いや~。思った以上に買ってしまいましたね~。まさかセールで全品3割もお得になっているとは。ついついお財布の紐も緩んじゃいますね~」
相当買い物が楽しかったのだろう。一段と足取りが軽い。
対してお供の私はとてつもなく重い。できれば歩きたくない。
予想通りというべきか、やはり買い物は軽い拷問と化していた。
喋りを止めない死神に喋られ続け、着れない服を持たされ続け、知らない大人たちから白い目で見られた。
挙句の果てに、下ろしてきた分だけでは足りず、一度下ろしなおす羽目になった。
総額8万4730円。ファミリー層に向けた服を販売しているこの店でどうやれば8万円も使える。
「そうそう、なんでクレジットカード持ってこなかったんですか? あればまたATM行く必要なかったのに。」
「入ってなかったものは分かりません。家にあるんじゃないですか。」
軽く気にしてない体で受け流すも、内心はストレスが煮立って仕方ない。
よくもまぁ、この人は他人のお金をいけしゃあしゃあと使えるなと感心する
そうだったこいつ人じゃない。
「さて、無事1つ目の『やるべきこと』終わったので、この調子で2つ目もサクッとやっちゃいましょう! 」
「あの、それよりこの荷物何とかしてください」
企業ロゴの描かれた最大サイズのビニール袋。それ1つ1つがぎっちり詰まっていて1つ持って歩くのもかなりの体力を消費してしまう。
1つだけなら何とか持ち運べるが、残念のことに今回はそれが4つもある。
店の前まで運んでくるのもギリギリだったのに、持ち運びするのには無茶がある。
ちなみに死神は1袋も持ってくれなかった。
袋だけ浮いてしまう。それは気味が悪いからだそうだ。
いや、あなたの存在のほうが気味悪いだろ……
「確かにそうですね~。じゃあ移しちゃいます」
床に置かれていた袋を1か所にまとめると、死神は袖をまくって指を鳴らす。
パチンッ!
そして、袋は跡形もなく消えてしまった。
「どうです? これが死神さんの力ですよ~!凄くないですか⁉ 」
「凄いですね。でも、別に驚きはしませんでした。そのくらい死神なら出来るでしょうし」
「え・・・・・・」
随分と早くやり返せた。これで終わりじゃないけど。
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