零のユートピア
八雲
第1話 手紙
人の視線を感じるようになったのは一週間前のことだった。
人に恨まれることをした覚えがないし、なんかの事件に巻き込まれた覚えもない。一時期警察に相談しようかとも思ったが、いずれ収まる、と自分の心にいい聞かせた。
そんな出来事が一通の手紙でガラリと変わった。
「おはよう レン」
後ろから聞こえた叔父さんの声に驚いた。
「お…おはよう 叔父さん」
持っていた手紙を背後へと隠した。
「ん?それ手紙?」
「えっとー そのー 友達から!」
「そうか?」
叔父さんが寝室へ戻ったのを確認すると、持っていた封筒を開けて手紙を読んだ。
――水無瀬 蓮 様――
一週間、貴方様の行動を監視させて頂きました。
その結果、国家秘密組織『STO』に推薦をさせて頂くことに決定いたしました。
ご理解とご協力をよろしくお願い致します。
記
場所 国会議事堂前
日時 5月13日 18:00~18:30
******************
レンが学校から帰ったのは午後5時半頃だった。
ただいま、と言いながらリビングの扉をあけると、少し険しそうな顔をした叔父さんがいた。
「お前・・・明日だったよな・・・」
「えっ?」
叔父さんの一言に少し驚いていたレンだが、叔父さんが持っていたものを見て察した。
「その手紙・・・読んだのか」
すまない、と言いながらレンに手紙を返した。
「俺には 行って欲しくない、そう言うしかない ただ、これはお前のところに届いた手紙だ 全てお前が決めろ・・・」
そう言い終わると、リビングから出ていった。
レンには一瞬だったが、叔父さんが一粒の涙を流したのを見逃さなかった。
翌日、朝早くに叔父さんの所へ向かった。
「叔父さん・・・俺決めた 行くことにしたよ」
それを聞いた叔父さんは少し寂しそうな顔をした。
「どうしてもか?」
レンは下を向いて答えようとしなかった。
「行ってこい!」
叔父さんはその一言しか発しなかった。しかし、その一言がレンの背中を押した。
「行ってきます!」
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