第2話 実験
5月13日 午後6時を少しすぎた頃、約束の国会議事堂に到着した。
「キミが水無瀬 蓮君だよね?」
スーツ姿の男性がいきなり話しかけてきた。
「そうですけど…」
「来てくれると信じてたよ とりあえず行こうか」
「あなたは一体…」
「すまないすまない 私はSTO『最先端技術組織』の班長 山神 徹だ よろしくな!」
そう自己紹介が終わるとレンに名刺を渡した。
「立ち話もなんだし、とりあえず入ってくれ」
話によると、STOという組織は国会議事堂の地下にある国家秘密組織。この組織の存在を知ってる者は国会議員の中でもごく一部らしい。
「聞きたいことがあるんですけど…」
「おう!なんでも聞いてくれ」
「この手紙に書いてある『STOによる推薦』って書いてあるんですけど、なんの推薦なんですか?」
「意識転送実験って言ってな、人の意識を別な場所に移動させる、そんな実験だ」
山神の話を聞いてもピンと来なかったが、1番聞きたかった質問があったから、あえて深堀しなかった。
「それともう1つ どうして俺が?」
「・・・」
少しの間沈黙が続いたが、山神の口が開いた。
「俺もホントの事は知らん ただ上から聞いた話だと『お前の家族がSTOにいる』とだけ…」
山神の話を聞いたレンは大きく目を見開いた。
「どういうことだ!」
「だから知らないって言ってるだろ…」
レンは山神の目をじっと見つめた。どうしてだか分からないが、何故か山神が嘘をついていないのが分かった。
「実験するのは明日の朝だ ゆっくり休んでくれ」
そう言われて一室に連れていかれた。
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午前6時過ぎ、いつもとは違う目覚めだっだ。
「おはようございます」
部屋を出てロビーにいた山神に挨拶をした。
「おー!おはよう よく眠れたかい?」
「お陰様で」
「ところで今日の予定なんだけど・・・」
そう言いながら山神はスーツの内ポケットから小さめの手帳を取り出た。
「午前7時に朝食 8時に実験準備 9時実験スタートだ」
レンは少し浮かない顔で、淡々と予定を読み上げる山神の顔を見つめた。
「いきなり手紙を送り付けて『実験だ!』なーんて言われても正直困るよね・・・俺もそうはしたくなかったさ・・・でも、今のキミの状況だからこそやれることだと思えるよ」
少しの沈黙のあと、レンの顔に笑顔が戻った。
「俺・・・頑張ります!」
午前9時 実験室に連れて行かれた。
部屋には鉄製の椅子が中央に置いてあり、周りには実験機材が机に乱雑に置いてあった。
その光景は「実験室」というよりも「拷問室」という言葉が適切な気がした。
指示通りに鉄製の椅子に座らされてオマケに鉄製のヘルメットのようなものを被らされた。
部屋のスピーカーから山神の声が聞こえた。
「水無瀬くん 準備は大丈夫かい?」
その質問に少し間を開けて答えた。
「大丈夫です」
「実験開始だ」
山神の声の後にスイッチが入る音がした。それと同時に、微少の電流がついさっき被らされたヘルメットのようなものに流れ出した。
「身体、神経共に異常なし!」
「コード確認・・・接続完了!」
その声とともに目の前が真っ白になった。
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―――――認証コード接続に成功
頭にAIのような声が響き渡る
―――――身体を作成中
―――――転移を開始します
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