コツと呼べるほどではないが、小説の戦闘描写についてあれこれ話したい

 ご無沙汰しております。姫乃只紫です。

 挨拶はほどほどに、コツと呼ぶほどではないのだけれど小説の戦闘描写についてあれこれ話したいなと思っている次第。というか、当の私が別段戦闘描写巧くはないので。殊更に書くのが好きだと自負しているわけでもありませんし。ただ、いたずらに物書き歴が長い分、こだわりだけはありますゆえ。満を持して、語ってゆきたいと思います。


 小説の戦闘描写は、静止画タイプと動画タイプのふたつに大別できると考えておりまして。


 静止画タイプは、文章を読んだとき漫画──ときとしてコマ割りありの静止画の連なりとして脳内再生されるタイプ。動画タイプは、文字通り動画として──ヌルヌル動くアニメーションや実写的なスタイルで脳内再生されるタイプにござい。

「作品を読んだとき、それがどんな形で脳内再生されるかなんて読み手によらね?」というご意見はごもっともなのだけれど、まあ聴いて(というより読んで)。事実そうだとして、こういうふうに読み手の頭の中で再生されてほしいよね~という願望は、物書きであれば誰しも少なからずあるとは思うので。 


 さて、このふたつ何が違うかと申しますと時間の流れが違います。


 静止画タイプは、たとえるならジャンプのスポーツ系漫画ですね。どう考えてもその台詞のやりとり(心の声ならまだしも肉声)は残り時間三秒に収まらんでしょうとか、台詞の尺から見てどう考えてもボールの保持時間的な意味でアウトでしょうとか、要は魅せるために「一秒を一秒として捉えない」わけです。必要とあらば残り時間三秒が三十秒にも三分にもなります。

 一方の動画タイプは、極力「一秒は一秒として捉えよう」とします。必然戦闘中に交わされる台詞は最小限となり、視点人物の五感を通した情報がメインとなります。一概に前者を軟派と云うつもりはありませんが、後者の方が幾分硬派なイメージですかね。


 このふたつ、どちらが戦闘描写として優れているか──というお話ではなく、大事なのは単純にその描写があなたの作風とマッチしているかどうかだと思っておりまして。


 例としてジャンプのスポーツ系漫画を挙げましたが、意図して一秒を一秒として扱わないことで名シーンになった場面なんていくらでもあるじゃないですか。もしあのシーンの一秒を一秒として扱っていたら、申し訳程度のリアリティはあったかもしれないけれど、展開としてはひどく味気ないものになっていたかもしれない。

 一方で、僅かでも隙を見せれば命を落とす、一瞬で雌雄を決する──みたいな場面で、明らか物理的に不可能な台詞の応酬を交わされたら「そうはならんでしょ」となるじゃないですか。


 だから、いざ自作を本気で売り込もうと思ったら、この作風を好む読者層が好む時間の流れはこうだろうな──という見立てもある程度必要になってくるのではないかなぁと思われ。


 この「作品によってアクションを通して表現したいと思っている時間の流れがそもそも違う」という事実って結構大事なことだと私は思っていて。この辺りの線引きを曖昧にしたまま、自主企画やらで戦闘描写を批評しあたっりするとそれはそれは無益な争いが起こりがちなので(笑)

 戦闘描写と一口に云っても、重きを置いている時間の流れは、目指している“巧い”は書き手によって違うという事実を改めて心に留めておいてほしいとこいねがう次第。


 ちな冒頭で「大別できる」と書いたけれど、一概に「あなたの戦闘描写は百パーセント○○タイプ!」とかいう分類は難しいと思っています。書き手によっては混在しているケースもあるでしょうし、事実私が動画タイプ寄りの場面によっては混在タイプだったりするので。一概にあなたの戦闘描写はこっちと断言はできないし、そもそもする必要性もないかと。


 ただ、戦闘描写──というより動きのあるシーンを書く上で、この作風にマッチしているのは静止画だろうか、動画だろうか、読み手の頭の中でどういった形で再生されてほしいのかといった旨を自問自答しながら書くのは決して悪くないことなんじゃないかなぁと思います。


 書き手としての視野を広げる的な意味で。

 読み専さんにしても、今回紹介したタイプを念頭に置いた上で戦闘描写を読んでもらえると案外面白い発見があるかもわかりません。戦闘描写については他にも──たとえば「神速」という表現、使った時点ではもう「神速」ではないのではないか問題とか色々茶々入れたいことがありますゆえ。また折を見て更新したいと思っております。

 今回はそんな感じ。ではまた~。

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