夢はぶっちゃけ呪いじゃないよねというお話
『俺達ルームシェアしている友達と何が違うんですか』 第63話 夢 作者 辰井圭斗
https://kakuyomu.jp/works/1177354054892485646/episodes/1177354054895860380
なりたいものってあったかなぁ──というのを最近よく振り返るわけで。
大学時代にちらっとだけ作家っていいな──と思ったことはあるのですよ。ただ、本当にいいな止まりで、だから具体的にどうこうしましたとか、そういう話じゃあないんですけど。小説書く能力を自分の満足のいく領域にまで高めたいと志したことはあっても、その気持ちがはたしてその職に就きたいに至ったことってあったかなぁみたいな。
子どもの頃、“怪獣を造る人”になりたかったのですよ。
特撮に出てくる怪獣や怪人の着ぐるみを造る職業のことなんですけど。小さい頃、まあ男の子って大体ハマるじゃないですか、特撮(笑)
で、私スーパー戦隊シリーズの『忍者戦隊カクレンジャー』を見たときに子どもながら凄い衝撃を受けまして。作中には妖怪軍団──アメコミ風にアレンジされたデザインの妖怪たちが敵として登場するのだけれど。
その造形を一目見て、「うわっ、コレ造りてぇ」って思ったの。
当時、水木しげるの『妖怪大図鑑』を親に頼んで買ってもらう程度には「妖怪」という存在に入れ込んでいたことも踏まえて、ホントに妖怪のデザインが斬新過ぎて(特にカッパとガシャドクロが好き。気になる人はググってみてほしい)。それゆえ、私のおもちゃ箱はヒーローの人形や変身アイテムは一切なく、怪獣のソフビ人形一色だったし、なんならスケッチブックも怪獣・怪人の類でいっぱいだった。
もちろん今でも特撮やゲームに登場する異形を見て、「カッコいい」「このデザイン凄いな」と感動する気持ちはある(特に雨宮慶太さんのそれが群を抜いて好き)。拙作の現代ドラマや恋愛のみを読んで下さっている方にはピンとこないかもしれないが──こと現代ファンタジーには作者の異形を愛する片鱗が見え隠れ──どころか結構むき出しになっていたりする。
ぶっちゃけ異形のデザインを考えている時間が一番心地いい。
さらに、あの頃に比べれば視点の数も増えたわけですから。異形への熱量はより増したと云っても過言ではないのだけれど。それでも、やっぱり「幼い頃のきれいな夢」くらいの位置に収まっている。ただ、これに対して特別悔恨があるかというとそんなこともない。
「俺に言わせればな、夢ってのは呪いと同じなんだ。呪いを解くには、夢を叶えなきゃいけない。……でも、途中で挫折した人間はずっと呪われたままなんだ」
特撮繋がりで思い出したのだけれど、平成ライダーシリーズ『仮面ライダー555』に海堂直也という人物が出てくる。彼の上記台詞が当時中高校生(露骨な年代ぼかし)だった自分にとって中々印象深かったのだけれど──。
ただ、この年になると夢って呪いじゃなかったなぁと。
一時的に呪いとして君臨する期間はあるやもしれませんけれど、やはり鮮度はあるというか。よく夢を諦める理由で大人になって現実が見えた──とか云いますけど、アレ私は違うのではないかと思っていて。たとえば、やる気を出す方法って昨今ググれば色々出て来ますけど、結局じゃあやる気ってどこから湧いてくるのて云ったら、「記憶」からやって来るのですよ。
歳月が流れると、なりたかったものにセットでついてた感情が薄れるんですよね。
こればっかりはどうしても。だから、大人になって現実を知ったから無理だと解ったとか、価値観や趣味嗜好が一変したからというのも理由として一部を担ってはいるのだろうけど、個人的には「コレ多分思い出せねぇんだろうな」と思う。
かつて自分が憧れたものを前にして「すげぇ」「面白い」と目を輝かせることはできても、あの頃目を輝かせていた自分を取り戻すことは難しいよねみたいな、そういう感覚。
だから、海堂さんの名台詞を批判するつもりは一切ないのだけれど(笑)
夢は呪いって甘えだよなぁ──と。
夢は呪いって云っておけばいつまでもつきまとってくれている気がするじゃないですか。でも、哀しいかないつまでもつきまとってくれないのですよ。個人差はあれど。
いつか鮮度が落ちて──記憶から抜け落ちる日が来る。
仕事に情熱や理想を抱いている人ほど離職率が高い──というのは事実としてまあそうなのだけれど、「なったのに思っていたのと全然違った!」より「なりたいものになれなかった」の方が多分ダメージデカいじゃないですか。どうせ生きていれば何かしらダメージは被るのだし、だったらなりたいものを追いかけるに越したことはないんじゃないのというのが最近の見解。
そう、熱が冷めないうちに。
夢は永劫の呪いではいてくれないので。だから、夢は呪いだっていう呪文、自分を鼓舞するメッセージとしてはぶっちゃけビミョーじゃね? なんて思ったり。今回はそんな感じ。
ではまた~。
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