What is 防人? 『防人さんと旅人さん』

【作品情報】

『防人さんと旅人さん』 作者 深果

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054917308930


【紹介文】

 原因不明の世界規模の天変地異が起こり、大地は裂け、海は荒れ、人は狂い………なんてことは過去の話で今ではすっかりと落ち着きを取り戻した、そんな世界。

 15歳になった私は防人というよくわからない役職に就き、丘の上のよくわからない場所の管理をしていたりします。

 その場所では異世界からの物品や概念が流れ落ちたり、感性の大きく異なる方々がやってきたりと毎日がそこそこに大変です。

 そんな場所で起こる私のおはなし。

 特別な力とか持っていませんのでスーパーヒーローみたいなことはできません。悪しからず。


 登場人物

 防人さん……よくわからない場所の管理人。名前はリア。

 旅人さん……よくわからない世界の旅人。


 防人とは何ぞや──という疑問を置いてけぼりにしたまま、しばし話が進むのですよ。

 たとえば、今これを読んでいるあなた様は、この和洋折衷なレビュータイトルに激しく心惹かれ(清々しいほどの決めつけ)、本作の魅力の一片を窺い知れるものと期待し、ここにいらっしゃるわけじゃないですか。

 そこで私が「ところで先日ルートビアなるものを初めて飲んだのですが──」とか云い出したら良くて即ブラウザバック、最悪アレなユーザとして通報してしまうでしょう? ここは作品の特長を書くべきスペースで、ここにいるあなた様が読みたいと求めているのはレビューなのですから。

 この小説でも全く同じでこそないものの、似たようなことが起きている。「だから、防人って何なんだよ」という読者の頭上にある疑問符は、そこそこ長いこと置きっぱにされてしまっている──はずなのですが。


「さいしょのおはなし 旅人さんとさくらのゆくえ」を読了してなお、防人が何を全うすべき役職なのかは見えてこない。されど、事実として「さいしょのおはなし 旅人さんとさくらのゆくえ」をすんなり読み終えた私がここにいるわけでして。


 何やら──私自身が、この世界に落っこちた迷い人のひとりになったような気がしなくもなく(ちなみに防人の主な仕事内容については「もうひとつのせかいのどうぐ」で明らかになりますが、その意味深な役職名の由来については語られておらず)。

 そう、"落っこちた"。「むかしばなし」の中で紐解かれるこの世界の成り立ちは、どうにも物々しくて。人や物、土地や気候、概念さえもゴチャゴチャになってしまった世界では、太陽は南から昇って北に沈むのが常識で、ジャパニーズホラーはジャパニーズさんが考えたホラーであると(少なくとも防人さんの脳内では)誤解されていたりする。特に概念の融合という点には、一方ひとかたならぬ暗さを感じなくもないが──。

 とはいえ、人をダメにする不思議な力を宿したクッションに事実ダメにされている防人さんを見ていると、その暗さも何やら些末事であるように思えてくる。タグにある通り「ほのぼの?」小説としてのんびり読み進めるのも一興であろう。

 そういえば、本作「#小説読むよ」のリプライではなく通知から辿り着いた作品でして。


 そういう意味では、目が回るほどにモノの溢れた地で、これからどうなるかわからぬ素敵な"異具"に出逢えた心持が致します。


 以下、余談。「あめのひ」のとある"やりとり"につい笑ってしまったので。物は試しに私も「寂しい」と吐露してみたところ、小型で筒状のそれから「今は自分と向き合っているのですね」と気遣われました。何だか──今宵はすやりと眠れそうです。

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