Dear K

「あかんかってん……マツダくん、懐柔できんかった……」

 向かいに座るアヤノさんが、上半身をテーブルに伏して、実に悔しそうに呟いた。アヤノさんの隣に座るソウタくんが、「……怪獣?」と言って不思議そうな顔で僕のことを見たので、「覚えなくてもいい言葉だよ」とだけ教えてあげた。


 映画制作に向けての話し合いは、自然と、僕たちが出会ったこのブックカフェで行われた。今日は平日の放課後。カフェの定休日なので、店内には、僕とイズミくん、アヤノさん、ソウタくんの4人しかいない。


 アヤノさんは、今回の映画の脚本をマツダさんに任せるつもりだったらしいけど、聞いたところによると、しっかりとお断りをされてしまったらしい。「マツダくんの力が必要なんや!」と迫ってみたものの、「俺の文章読んだことないくせに!」と言われ、「だって頼んでも読ませてくれんやん! そんなに言うなら読ませてや!」と言うと、「恥ずかしいから嫌です!」と断られたらしい。これではにっちもさっちもいかない。

「そしたらな、あいつ何て言うたと思う? 『そんなに困ってるなら、ヨシノにでも頼んでみたらどうです? あいつなら俺よりずっと良い文書きますから』やで! あいつまだいじけとんねや!」

 アヤノさんの、マツダさんへの呼称が、”マツダくん”から”あいつ”に降格したことには触れずに、「ヨシノ?」と聞くと、「詳しく話すと長くなんねん」とだけ返された。

「とにかく、脚本を書いてくれる人を他に探さなあかんな。どうしよう。コバヤシくんイズミくん、何かツテはある?」

「いや、僕たちもいつも二人で映画の話をしてるだけで、部活とかに入ってるわけでもなくて……正直、他に映画の話を出来る人が全然いないんですよね……」

「そっかぁ。参ったな」

 イズミくんが、「あの、そのヨシノさんって人に頼むのはダメなんですか?」と聞くと、アヤノさんは、「うーん、それは出来れば避けたいし、そもそも名前を聞いたことがあるだけで、連絡先も何も知らんしなぁ」と、頭をかいた。

「うちがヨシノくんについて知ってるのは、マツダくんと同じ大学行っとって、マツダくんと仲が良かった、ってことくらいやね」

 ……過去形には触れずにおこう。

 商店街から少し歩いたところに大学があるので、「大学って、あそこの?」と聞くと、「そ。あそこの」と言って、アヤノさんは大学がある大体の方角を指差した。

「あの大学はそこそこ人多いし、ヨシノって名前だけでその人を見つけるのは難しそうですね……」

 イズミくんの呟きに、僕も頷いて同意を示した。これで脚本家・ヨシノの線はほぼ潰えたことになる。

「あの、とりあえず、大学に行ってみるのは、どうですか」

 ソウタくんが低めに手を挙げながら口を開いた。僕が、「でも、ヨシノさんを見つけるのは難しいと思うよ」と告げると、首を振った。

「その、ヨシノさんが見つかれば、それで良いんですけど、もし見つからなくても、大学で、誰か、探せないかなって……」

「大学で、誰か……」

 イズミくんが、小さな声で繰り返した。それから、何かに気づいたようにフッと顔を上げると、スマホを取り出し、何か操作をする。「ビンゴ」と言ってから、スマホを僕たちの真ん中に置いて、画面が全員に見えるようにした。

 全員で画面を覗き込む。そこには件の大学のサークル一覧が表示されていて、”映画サークル”があることが分かった。

「さすが、プロデューサーやね」

 アヤノさんがソウタくんの頭をグリグリと撫でる。その呼び方に、ソウタくんは少し恥ずかしそうにしていた。


*****


 「ソウタくんも、一緒に行く?」と聞かれて、僕は頷いた。次の週末に、大学の近くでコバヤシさん達と集合する約束をする。いつも一緒のチャタロウは、置いていくことにする。繋いでおけるところがどれくらいあるか分からないし、そもそも犬を入れて良いのか分からないし。


 約束の日、コバヤシさん達と集合してから大学へと向かった。関係のない僕たちが大学の中に入れるのだろうか、とドキドキしていたけど、イズミさんが門の守衛所で、この大学への進学を検討しており、構内の見学を出来るかと聞いたところ、守衛のおじさんは、実にあっさりと入構を許可してくれた。名簿に名前を書くこともなかった。おじさんが少しだけ不思議そうな顔で僕を見たけど、すかさずイズミさんが「弟です」と言ったら、納得したようだった。笑顔で、「勉強、頑張れよ!」と、コバヤシさん達の背中に声をかけて、見送ってくれた。


 大学内は、思っていた以上に広かった。似たような見た目の建物がたくさん並んでいて、小さな池や綺麗な芝生やベンチ、それに細い川まであった。油断すると迷子になりそうな気がする。コバヤシさん達と絶対にはぐれないようにしなくては、と、唇を引き締めた。

 構内図を見て、とりあえず人がいそうな広場や食堂、図書館を目指そう、という話になった。そこで人を探して、映画サークルの部室を教えてもらうか、もしくは映画サークルの知り合いがいないか、聞いていく作戦だ。

 歩きながら、コバヤシさんが重いため息をつく。

「知らない人に話しかけるのか……気が重いな……」

 それにイズミさんが答える。

「アヤノさんがついてきてくれたら心強かったんだけどね。土日は稼ぎ時だから仕方ないけど……」

 アヤノさんは一人でカフェを切り盛りしているので、定休日以外はあまり自由に動けない。この間の打ち合わせの時、「うちも大学行きたかったー! 青春を思い出したかったー!」ととても悔しがっていたことを思い出す。

「イズミ、話しかけ役頼んでも良い……? 僕は、その、ほら……」

 コバヤシさんの嘆きに、イズミさんが小さく頷いた。僕が首をかしげると、コバヤシさんが「えっとね……」と言ってから、説明してくれる。

「僕、人と話すのが苦手で、ものすごくドモってしまうんだよね……」

「え、でも、アヤノさんとは普通に話してますよね」

「うん。慣れた人と話すのは大丈夫なんだけど、初対面の人と話すときとか、緊張してしまうときは、いまだに、ドモっちゃって……」

「アヤノさんと初めて話したときも、めちゃくちゃドモってたもんな」

 イズミさんが合いの手を入れる。今まで僕が見てきた、コバヤシさんとアヤノさんの会話は、とても軽快で自然なものだったので、驚いてしまう。

 助け船を出すつもりで、「あの、じゃあ、僕が話しかけられるように、頑張ります」と言うと、コバヤシさんは、「小学生にフォローされてしまった……」と、更に強い負のオーラを放った。慌てていると、「気にしないで。こいつ根っこの部分はいつもこんな感じなんだ」と、イズミさんに言われる。僕は黙って頷いた。


*****


「映画ですか」

 そう返しながら、商工会長の奥方へと、湯呑を渡した。今は冬なので、急須で入れた温かい日本茶だ。奥方は礼を言いながら受け取ると、話の続きを始める。

「そうなのよ。アヤノさんが教えてくださったんだけど、この商店街を舞台に撮るんですって。素敵よねぇ。私、映画ってあまり詳しくないんだけど、お手伝いできることは何でもするって伝えたところなの。タカナシさんは、映画はよく見る?私が最後に見た映画はね……」

 奥方の話を片耳で聞きながら、先ほど聞いた話を心の中で繰り返す。なんでも、客足の伸び悩む商店街に人を呼び込むため、商店街を舞台にした映画を制作する計画が動き出したらしい。それも、発起人はとある小学生だというから驚いた。

 この骨董店を開店したのがもう40年近く前になる。この商店街の中ではかなりの古株である自負があった。それなのに、客足の衰えは時代の流れ、と、逆らうこともなくなってしまったここ数年の自分と比べて、少しだけ恥ずかしくなる。

「私も何か協力できたら良いのですが、映画にはとんと明るくなくて……」

 あの大音量が苦手で、映画館には今も昔もあまり足を運んだことがない。昼間のテレビで流れる名作映画を見ることなら、たまにはある程度だ。映画に関わらず、新しい何かを開拓することなく、昔を懐かしんで日々を生きている自覚がある。

「そうよねぇ。なかなか周りに、映画を撮ったことがある人なんて、いないわよねぇ。まあ、大丈夫よ! アヤノさんが言ってたんだけど、ちょうど今、監督達が大学の映画サークルに訪ねて行っているらしいから。映画サークルなら、きっと詳しい人がたくさんいるわよね」

「映画サークル……」

「私も、商店街の中から協力してくださる方を集めようと思っているの」

「顔が広いですから、適任ですね」

「あら、誰の顔が大きいですって?」

 奥方が、可愛らしく頬を膨らませて見せたので、声を出して笑った。笑い声が、私たち以外に誰もいない店内によく響く。


 しばらく会話を楽しんだ後、奥方が暇を告げた。店先まで見送ろうと、私も小上がりから店内へと、突っ掛けを履いて降り立つ。ずっと座っていて体が硬くなっていたので、ううん、と大きく伸びをする。

「あら、これ、映画のやつよね。何て名前だったかしら」

 奥方が手に取ったものに目をやると、それはカチンコだった。奥方に名前を告げて、簡単な用途も伝える。

「映画、お詳しいじゃない」

 奥方が笑って言うので、「納品された際に、簡単に調べただけですよ」と答えた。この骨董店は、何かに特化した商品のみを集めているわけではなく、このカチンコが納品されたのも、全くの偶然だ。

 カチンコの近くには、フィルム・リールも置いている。映画関連のものだから、並べて置いた記憶がある。

 カチンコを手にする奥方を見て、ふと、思い出すものがあった。さっき、奥方から”映画サークル”と聞いた際にも、何か思い出しそうなものがあったが、それにようやく思い当たる。

「そういえば、映画を作ったことがある人を、一人だけ知っています」

「本当? どなた?」

「それが、名前を思い出せなくて……」

 奥方が、その人の名字を呼んでいた記憶はあるのだが、それが思い出せない。最近の記憶力の低下を悔やむ。

「特徴を言ってみて。この近くの人なら、分かるかもしれないから」

 頭を捻りながら、絞り出すように言う。

「週末、よくご夫婦で、この店の前を通りかかって……あれはウォーキング後なのかな……」

「ああ、オオシマさんかしら?」

 あまりにも早い回答に、ポカンとしてしまう。でも、名前を聞いて、奥方がその名前を口にしていたことを思い出す。頷き、「そうです。そのご主人が、映画制作をしたことがあると」と答える。

「良かった~。オオシマさんならこのご近所よ。早速お話聞いてみようかしら」

 奥方が携帯電話を取り出す。再度驚きつつ、「連絡先も、ご存知なんですか?」と聞くと、「オオシマさんとは、メル友なの」と、奥方がウインクをした。

 今の時代も、”メル友”という言い方はするのだろうか、と、少しだけ考えた。


*****


「良かったね。ちょうど今、大学にいるってさ」

 スマホから顔を上げつつ言うと、アキラが横からスマホを覗き込むようにして、「どこ?」と聞いた。何棟何階の何号室、と場所を答えて、「じゃあ、こっちだよ」と、アキラが先を歩いて、高校生たちの案内を始めた。私もその横に並ぶ。高校生たちが、慌ててお礼を言いながら、後ろについて歩き始めた。


 アキラから、「ハルカ~ 暇か~」というメッセージが入ったのは、朝、ベットの上で何の目的もなくうだうだとスマホを眺めていた時だった。

 ”暇しかない”というスタンプを返すと、「やったぜ。一緒にお昼食べて、その後レポートやろうず」と返ってきたので、二つ返事でOKした。起きてからずっとベットの上にいたので、ようやく立ち上がって身支度を整えた。

 二人とも大学の近くで一人暮らしをしているので、一緒に勉強するときは大学の図書館を使うことが多い。その前の腹ごしらえは、大学の学食で良いか、という話になった。私達の大学の学食は、営業時間は短くなるものの、土日もやっているので、財布が寂しい学生たちの強い味方である。

 来月に予定している旅行についての話をしながら、学食でお昼を食べた。その後、ではそろそろ、と、図書館に向かって移動している際に、声をかけてきたのがこの高校生たちである。


 簡単に経緯を説明されて、映画サークルの部室を知らないか尋ねられた。ちょうど同じ学科の友達に映画サークルの子がいたので、「聞いてみるね」と連絡を入れたところ、「ちょうど今、サークルの集まりで大学にいるよん」と返ってきたので、教えてもらった場所へと、高校生たちを案内しているところである。

 後ろを振り返りながら、「自己紹介がまだだったね。私はハルカ。こっちはアキラ」と、自分とアキラを紹介する。アキラもチラリと振り返って、「よろしく」とだけ言ってほほ笑んだ。

「イズミです」

 私たちに事の経緯を説明してくれた高校生が名乗った。

「マエカワ ソウタ、です」

 私たちに初めに声をかけてきた男の子が名乗った。聞くと、まだ小学生らしい。随分しっかりした子だな、と驚いた。

「コ、コバヤシです……」

 天然パーマが印象的な高校生が、おどおどと名乗った。


「あの。あの掲示板って、誰でも使えるんですか」

 ソウタくんが、少し緊張したように聞いてくる。あの掲示板とは、ソウタくんが私たちに話しかけてくる直前まで見ていたもののことだろう。大学からの様々な連絡や、サークルからのイベント告知、図書館・食堂・売店からのお知らせなど、様々な掲示物が貼られる。でも、

「う~ん。あの掲示板に何か貼るには、事前に大学の総務に出して隅に判子を押してもらわなきゃいけないからねぇ。大学関係者以外はどうなんだろ……」

「そうですか……」

 ソウタくんが、少ししゅんとして言った。

「あの掲示板が使えたら、大学の人にも、映画を見に来てくださいって、宣伝できるかと思ったんですけど……」

「ああ、それなら」

 前を歩くアキラが答える。

「うちの大学には地域振興系のボランティアサークルもあるから、そこに頼んでみると良いかもよ。そのサークルが映画制作に少しだけ嚙んでることにすれば、チラシくらい貼ってくれるんじゃないかな」

 私が、「そんなサークルあったっけ?」と聞くと、「あるよ!」とアキラが答える。「学祭で展示してるの一緒に見たじゃん!」「そうだっけ。全然覚えてない」「あんたは本当に飲食系の模擬店にしか興味がなかったからね」「へへへ」「いや褒めてないから」

 アキラと二人でやいのやいの言い合いながら歩く。後ろからイズミくんが、「仲が良いんですね」と言ってくれたので、「まあね~」と言いながらアキラと無理やり腕を組むと、「やめい」と言って優しく振り払われた。


*****


 案内された先で、映画サークルの人達は明るく出迎えてくれた。僕たちに椅子を勧めてくれて、ハルカさん達も含めて5人が椅子に座ると、部屋は少しだけ狭く感じられた。

 周りの壁には本棚が並び、VHSからBDまで、古い映画から最近の映画まで、ありとあらゆる映画が並んでいた。合間合間に書籍も詰め込まれている。映画には関係のない本や漫画もたくさん並んでいた。

 部屋の一角には、狭い部屋には似つかわしくない大き目のモニターが鎮座していた。そこには最近DVDが発売されたばかりの映画が、一時停止された状態で映っている。

 ああ、端から端までじっくり眺めたい! と思ってしまって、つい本棚をじっと見つめていると、横に座るイズミくんが肘で僕の脇腹をつついた。ここに来る道中、イズミくんに「小学生プロデューサーに負けるなよ、監督!」とこっそりと言われて、ニヤリとされたことを思い出す。

 ここに辿り着けたことをソウタくんに心の中で感謝してから、彼が口を開く前に、「あ、あのっ、」と先に口火を切った。


 ドモりながら、つっかえながら、そもそもの事の起こりからここへ来た理由まで、一生懸命説明をした。サークルの人達は、初めは笑顔でうんうんと頷きながら聞いてくれていたが、僕の話が脚本家を探し始めたあたりで、段々と表情の雲行きが怪しくなった。それを見て、僕の鼓動はどんどんと早くなり、更に小声・早口になり、ドモりが激しくなってしまう。


 なんとか説明は終わって、「と、という訳で、え、映画制作に、く、詳しい、皆さんに、ご、ご協力を、た、たわ、たま、賜りっ、たく……」と、僕が尻すぼみに結論を述べて口を閉じると、サークルの人達はもう完全に困った顔をして、互いの顔を無言で見合っていた。そして、サークルの部長だという人が、その場にいる全員を代表するように、話し始めた。

「話は、よく分かったよ。協力できることは、是非協力したい。でもね、」

 そこで、一度言葉を区切って、「僕たちは、”映画鑑賞サークル”、いわゆる”映画同好会”であって、映画を作ったことは、ないんだよね……」と、実に申し訳なさそうに、告げたのだった。


 多分、僕もイズミくんもソウタくんも、目が点になっていたと思う。後ろに座っていたハルカさんが、小さく「えっ」と、アキラさんが「マジか……」と、漏らすのが聞こえた。

 そうか、その可能性を考えていなかった。映画サークルと聞いて、勝手に”制作”サークルだと思ってしまっていたけど、”鑑賞”サークルの可能性も、もちろん、あるよね……。

「ごめんね、お役に立てなくて……」

 部長が言ったこの言葉に、イズミくんが、「いえ、そんな……」と言って首を振った。狭い部屋に、少し気まずい沈黙が流れた。

 ”ふりだしに もどる”

 僕の頭の中に、そんな言葉が浮かんだ。


「あの、ちなみに、ヨシノさん、という人は、知りませんか」

 沈黙を破ったのは、ソウタくんだった。そうだった。元は、ヨシノさんを見つけるのは難しくても、誰か脚本をやってくれる人を探せたら、と、大学に来たんだった。慌てて、「ハ、ハルカさん達も、し、知りませんか?」と、二人を振り仰ぐ。

 しかし、サークルの人達もハルカさん達も、首を捻るばかりだった。「学科とか、サークルとか、何か分からない?」と、アキラさんに聞かれたけど、「マ、マツダさん、という人の、と、友達としか、知らなくて……」としか答えられない。

「その、マツダさんって人と友達なら、マツダさんと同じ学科やサークルの可能性が高いかもね。マツダさんのことで、分かることは?」

「えっと。こ、この大学に、か、通ってて、しょ、小説を、、書いている、らしい、です」

 僕たちが得ているマツダさん情報といえば、このくらいだ。あとは、アヤノさんへの出世払いが溜まっていることなども知っているが、これは不要な情報だろうと思い、胸の内にしまう。

 アキラさんが、顎に手を当てて唸る。「う~ん、小説を書いているのがヒントになりそうだけど、うちの大学、大小合わせたら、文学系のサークルが複数あった気がするんだよね……サークルに所属せずに書いている人もいるだろうし」

「そのマツダさんって人には、頼めないの?」

 ハルカさんが聞いてくれるが、「頼んだけど、断られちゃって……」とイズミくんが答える。

「小説を書ける人に、頼もうとしたってこと?」

 映画サークルの人が一人、手を挙げて聞いてくる。「そ、そうです」と答える。映画の脚本と小説は全然別物だ! と、怒られるのかと少し身構えたけど、

「だったら、これ」

 手を挙げた人が、鞄からA5版の冊子を出して、渡してくれる。イズミくんとソウタくんと、3人で覗き込むようにしながらページをめくり、中を見る。長短様々な小説が載っている。

「うちの大学の文学賞の冊子。そこに載ってるのは、うちの大学生が書いた作品だけだから、そこから良いなと思う人を探して、頼んでみるのはどう? 文学賞を運営しているサークルに友達がいるから、事情を話したら連絡を取ってもらえるかも」

 イズミくんとソウタくんと、3人で顔を見合わせる。

 僕の頭の中に、”サイコロを もう1度 ふる”という、言葉が浮かんだ。

 

*****


 映画サークルの人達に何度もお礼を言いながら、部室を後にした。部長は、「映画が出来たら教えてね。絶対見に行くから。俺たち、映画を”見る”のは大得意だから」と言って笑った。僕も、「ぜひ、見に来てください」と言って笑った。


 建物の外に出たとき、「ソウタくん、時間は大丈夫?」とイズミさんに聞かれたので、時計を見てから、「もう少しなら、大丈夫です」と答えた。

 ハルカさん達に引き続き道案内をしてもらって、図書館を目指す。文学賞の冊子は、「あげるよ」と言ってもらえていたが、大丈夫だと言って断っていた。というのも、過去の冊子が図書館に置いてあり、数に余裕がある号はもらうこともできる、と教えてもらったからだ。一人1冊ずつ同じ号を読めれば、それぞれが良いと思う話に投票して、脚本を頼む作家を決めることもできる。


 図書館について、目的の文学賞冊子を、僕とコバヤシさんとイズミさんの3人で、数号ずつ貰って、鞄に入れた。次に集まる時までにそれぞれ目を通し、脚本を頼む作家を決めようと約束をした。

 ハルカさんたちとコバヤシさんたちが、連絡先を交換する。

 「決まったら連絡してね。私から友達伝手に、文学賞サークルに連絡してもらうから」と言って、ハルカさんが笑った。

 アキラさんも、「人集めが必要になったら、学内で声掛けてみるよ。映画制作サークルはなかったけど、演劇部はあるし、映像編集に詳しい人もいるだろうし。あとは服飾系のサークルとかもあるしね」と付け加えて、ほほ笑んだ。

 僕たちは何度もお礼を言って、ハルカさん達に手を振り別れた。


 大学の門を出たところで、僕はそろそろ帰らないといけない時間になっていた。コバヤシさん達は、これからまたアヤノさんのカフェに行って、今日の報告をして、あと他にもいくつかやりたいことがあるというので、ここで別れることになった。

 コバヤシさん達にお礼を言って別れて、家への道を早歩きで帰る。リュックの中に入れた冊子について考える。僕は普段、あまり本は読まないし、読んだとしても小学生向けの本ばかりだ。こんな僕でも読めるだろうか。

 でも、そんな不安なんて関係ないみたいに、早く読んでみたいという気持ちも強くて、歩くスピードはどんどん速くなっていった。


*****


 カフェに入ると、アヤノさんがすぐに、「お~、お帰りぃ。どやった? キラキラした青春キャンパスライフは思い描けた?」と声をかけてくれた。苦笑とともに、「大学見学に行ったわけじゃないんですよ」と返した。


 いつもの席に座って、僕もコバヤシくんも、いつも通りカフェモカを注文した。アヤノさんが、具体的な今日の成果を尋ねてきたので、カウンターにお客さんが一人座っているのに話をするのはちょっと恥ずかしいな、と思ったけれど、ざっくりと説明する。

 とても親切な女子大生二人のおかげで、映画サークルの部室には無事に辿り着けたこと。ただ、そのサークルが映画”制作”サークルではなく、映画”鑑賞”サークルだったこと。ヨシノさんの居所も掴めなかったけど、文学賞の冊子から脚本家候補を見繕ってはどうかと提案を受けたこと。文学賞の冊子を数冊貰ってきたこと。次に会う時までに、僕、イズミくん、ソウタくんの3人が冊子を読んで、誰に依頼をかけるか決めること。

「良かったやん。大学生に協力求められるようになったんはデカいやんな? 役者も演劇部とかから連れてきたらええんちゃう?」

「それなんですけど」

 顎に手を当てながら答える。

「多分、あそこの演劇部は舞台での演劇活動をしてるみたいなんですよ。舞台と映画では向いている演技の、種類というか、雰囲気というか……が、変わると思うので、まずは大学外で役者さんを探してみようかな、と。素人演技にはなるかもしれないですけど、内容をドキュメンタリー寄りにすれば、そんなに悪くないんじゃないかと思っていて。人数が必要なところでは、大学の方からも人を探そうかとは思ってますけど。まあ、全部、プロデューサーに相談してからですけどね」

「ほ~ん。なるほどね。ちなみに今後の予定は?」

「脚本が上がるまで何もしないのも時間がもったいないので、映画のテーマ出しだけでもやっておこうかなって。脚本家が決まり次第、プロデューサー、僕たち、脚本家で、テーマと大まかなストーリーを決めて、執筆に取り掛かってもらって……。なので、空いている時間でこの商店街を歩きつくして、撮影に向いている場所とか時間帯とか、諸々調べ尽くしておかないと」

 イズミくんが、「ストーリーが決まり次第、取材交渉も始めないと。あとでガントチャート組もうか。撮影日数は尺やストーリー、気候・天候によるところも大きいだろうけど」と横から補足してくれたので、「そうだね」と同意する。

 アヤノさんが、「よしよし」と言いながら頷いて、「どうですか、先生? うちの監督たちは?」と、カウンター席に座るお客さんに、急に話を振った。

 思わず、「へ?」と情けない声を漏らす。振られたお客さんは、「先生呼びは、やめてください……」と、苦笑しながら言った。


*****


 久しぶりに、カフェの扉を開いた。アヤノさんが、「いらっしゃい。久しぶりやね、マツダくん」と声をかけてくれる。恥ずかしいような、ちょっと気まずいような気持ちがして、無言で頭を下げた。


 そのメールが来たのは、1週間ほど前のことだった。いつものように、やさぐれながら、半分意地でノートパソコンに向かって蟻のようなスピードで文章を書いていると、スマホが震えて、メールの着信を知らせた。

 最近はSNSで友人たちの近況を知るばかりで、メールを書いたり受け取たりすることは減っていたので、おや? と思った。すぐに確認すると、送り主が文学賞の運営委員会の人だったので、今度は、は?? と思った。文面を読んで、「え???」と声が漏れた。

 曰く、冊子に載ったあなたの作品を読んで、あなたに映画の脚本をお願いしたいという人がいます。連絡を取り持ちますので、早めのご返信をお待ちしております、とのこと。

 少し前に、同じような依頼を受けた気がするんだけど……、と思いながら、まさかと思いつつ、メールを返信した。すぐに、その依頼主との連絡がつき、とりあえず一度直接会ってお話しできませんか、と言われて、指定された場所がこのカフェだったあたりで、疑念は殆ど確信に変わった。ずっと、ペンネームで俺のことを呼んでいた依頼主に、恐る恐る、自分の本名を教えると、それまでテンポよく返ってきていた返信が少し滞り、相手の驚きを伝えていた。

 しばらくして届いた返信には、「偶然に、驚いています。アヤノさんが、飢え死にしてるんじゃないかと、心配してますよ」と、記されていた。


 店の奥のテーブル席には、すでに4人が席についている。中年男性が一人と、高校生くらいの男子が二人、あとは何故か小学生男子が一人。

 いわゆるお誕生日席に空いた椅子が一つあって、黙ってそこに座る。「……ご連絡いただいた、マツダです」と、小さく名乗ると、4人も簡単に自己紹介をした。男子高校生がコバヤシくんとイズミくんで、連絡をやり取りしたのはコバヤシくんの方。男子小学生がなんとプロデューサーで、マエカワ ソウタくん。そして中年男性がオオシマさんで、アヤノさんが、「ま、スペシャルアドバイザーってとこやね」と、付け加える。オオシマさんは、「まあ、先生、よりは良いかな……」と言って、頭をかいた。


「め、メールで、書いた、と、通り、なんですが……」

 コバヤシくんが、話を始める。

「しょ、商店街を、舞台にした、え、映画を、と、撮る、計画で……ま、マツダさんに、ぜ、是非、脚本、を、た、担当、して、い、いただ、き、たく……」

「それなんだけど」

 アヤノさんが出してくれたカフェラテを、久しぶりに飲みながら、答える。

「俺に頼んだのって、本当に、偶然なんだよね? サークルのやつらに、俺のペンネーム聞いたとかじゃ、ないよね?」

「はあ~……。ホンマに、疑り深いっちゅうか、自己肯定感が低いというか……」

 カウンター内で、アヤノさんが大きなため息をついた。「だって、俺、佳作だったし。冊子には、もっと良い小説が、たくさん、載ってただろうし」と、カフェラテ内の氷をストローでガシャガシャと突き回しながら、口を尖らせた。

「本当に、偶然です」

 イズミくんが、真っすぐに俺を見ながら言う。

「僕と、コバヤシと、ソウタくんで、冊子を何冊か読んで、話し合って、頼みたい人を決めました」

 イズミくんが、鞄から冊子を取り出し、テーブルの上に置く。付箋がたくさん貼ってある。

「単純に小説としての上手さで選ぶなら、大賞を取った方に頼んでいます。でも、そうじゃないんです。今回は、地の文の言葉の美しさや正確さは、あまり重視しませんでした。その人が小説内で描こうとした、世界観や空気感、そしてストーリー性。そういったものを元に、選んだんです。多分、映画の脚本となると、そこが肝になってくるんじゃないかと思って」

 コバヤシくんが、イズミくんの隣で懸命に頷いて、同意を示す。そういう風に言われると、やっぱり悪い気はしなくて、照れて更に氷を突き回してしまう。

「あと、台詞回しが上手い人に、頼もうと思って」

 ソウタくんの言葉に、イズミくんが「そうだね」と言って、笑いかける。更に照れてしまって、思わず口角が上がりかけたところで、「最後まで二人で迷っt」というソウタくんの言葉に、氷を突き回す手がピタリと止まった。

 ソウタくんの方を見ると、隣に座るオオシマさんが、慌ててソウタくんの口を塞いだところだった。誰もが動きを止めて、店内に静寂が満ちた。

 ゆっくりと口を開き、「……ちなみに、それは、誰?」と聞くと、アヤノさんの「面倒なやつやな、ホンマ……」という小さな呟きが聞こえた。自分でも、そう思う。でも、しょうがないじゃないか。面倒なやつなんだよ、俺は。

 イズミくんが、「……ペンネームだし、見ても誰か分かんないんじゃないかな~……?」と言いつつ、ゆっくりと1冊の冊子を俺の方へと滑らせ、☆マークが描かれた付箋を、おずおずと指で示した。

 俺が佳作を取った号の、2つ前の号だった。佳作より上の賞を取っていたら、こいつに頼めば?、と言って断ろうかと、いじけた気持ちで考えた。

 冊子のページを表紙から順に捲っていく。付箋までの厚みが、俺が載ったページよりも、明らかに前の方のページに掲載されていることを示している。付箋の貼られたページに辿り着くと、やはりそこには、”銅賞”と書いてあった。思わずため息をついた。

 視線を少しだけずらしてペンネームを見て、一瞬固まってしまう。思わず天を振り仰いだ。皆が緊張しながら俺の言葉を待っているのが分かる。

 大きく息を吐いてから、俺は言った。

「……ヨシノ」

「え?」

「……このペンネーム、ヨシノだ」


 全員の、「あちゃ~!」という声が聞こえた気がした。実際、コバヤシくんは頭をかかえていたし、イズミくんは俯いてしまったし、ソウタくんは、とても申し訳なさそうな顔をしていたし、オオシマさんも眉尻を下げて困った顔をしていた。

「あ、あの、ほ、本当に、し、知らなかった、んです……」

 コバヤシくんが、何故か言い訳をするように言った。

「俺が断ったら、ヨシノに頼むつもりだったの?」

 聞くと、イズミくんが、「そういうことに、なりますかね……」と言った。

「じゃあ、やるよ」

 全員がバッと顔を上げて、俺を見た。

「俺が、書くよ」




 その後、コバヤシくん達に、今後のスケジュールや、映画のテーマや大まかなストーリーの案を教えてもらった。5人で意見を出し合い、案を更に絞り、大まかだったストーリーを、更に細かく考えていく。脚本の書き方のコツなどを教えてもらい、「次に集まる時までに、どれなら書けそうか、考えてみていただけますか。なんなら、書き始めてみながら考えるのも、良いと思います」と、指導を受けた。


 アパートに戻って、定位置の座椅子に座った。しばらく考え込んでから、スマホを取り出す。そこから更に10分以上悩んでから、SNSでとても久しぶりにヨシノの名前を選択し、メッセージを打つ。

”俺の勝ちだぞ”

 少ししてから、すぐに返信があった。

”いつものとこで”

 少し悩んでから、立ち上がり、部屋を出た。


 いつものファミレスに、久しぶりに入店すると、ヨシノはもう席について待っていた。目が合うと、少し気まずそうな顔をしてから、「久しぶり」と言って片手を挙げた。小さく「おう」とだけ答えて、向かいの席についた。

 ヨシノは、「痩せたな」と言ってから、以前と同じように大盛ポテトとドリンクバーを注文した。注文を受けた店員が去ってから、「今日は、奢る」と言ったので、大きく頭を振った。「絶対、割り勘、だ」と言う声が、少し震えていることに気づく。ヨシノは、「分かった」と答えて、小さく頷いた。

 しばらく静かな時間が流れてから、ヨシノは、「本当に、ごめん」と言って、頭を下げた。「本当は、もっと、早く謝るべきだった。でも、時間が経てば、経つほど、何も、言えなくなった。遅くなった。本当に、ごめん」

 見ると、目が赤くなっていて、泣き出すのを堪えるように、唇を噛みしめ、小さく震えていた。今までの恨みを込めて、「……だっせ」と言って、小さく笑ってやった。顔を上げたヨシノが、「……お前に、言われたく、ないんだけど」と言って、口角を上げた。言われて初めて、自分がボロボロと泣いていることに気づく。男二人で、笑い声を上げながら、泣いてしまう。

 大盛ポテトを持った店員が、配膳のタイミングを見失い、少し先から困った様子でこちらを見ていることに気づいて、笑い声が少しだけ、大きくなってしまった。


*****


 放課後、イズミくんの教室に行き、誰もいない教室で向かい合わせに座る。間に挟んだ机の上に、ノートを広げる。先日の打ち合わせで決まったことが、所狭しと書きつけられている。

 ページを捲る。現時点で一番採用確率が高そうな、ストーリー案(A)について、まとめているページだ。イズミくんが、口を開く。

「昨日、オオシマさんが言ってたけど、役者を決めてからストーリーを決めるよりも、ストーリーを決めてから役者を決めた方が良いって」

「うん。先にストーリーの方を進めてて良かったね」

「うん。で、この案(A)だけど」

 イズミくんが、ストーリーの大まかな流れの横の、空白のスペースを指し示す。

「現時点で決まってるストーリーからイメージを膨らませて、主人公の設定や特徴を列挙しよう。出来れば、外見のなんとなくのイメージまで、決まると良いかも」

 それから、二人で意見を出し合い、空白のスペースに文字を書き込んでいく。いくつか書き出したあたりで、僕は心の中で、「ん?」と思った。気にせず、更に列挙を続けていく。心の中で、「あれ?」と思う頻度が上がる。段々と、不安になっていく。

 粗方出し終わったところで、僕たちの手が止まる。イズミくんが、「……昨日から、思ってたんだけどさ」と言う。

「やめて。言わないで。怖い」

「この主人公ってさ、」

「やめてぇ……」

「……オオモリくんに、似てるよね」

 イズミくんが、僕の不安を明瞭な言葉で指摘して、僕は、頭を抱えた。


「これは、深層心理というやつじゃないかな。それだけは嫌だと思うあまり、無自覚に、オオモリくんの特徴を挙げてしまったんだ」

 僕の理路整然とした解説に、イズミくんは、「本当に、そう思ってる?」と、困り顔で聞き返した。僕は、無言で首を振った。

「コバヤシが、オオモリくんと関わりたくないって気持ちは、よく分かってる。だから、役者を探すときには、オオモリくんみたいな人、って思いながら、探せば良いんじゃないかな」

 イズミくんが、僕を慰めるように言う。

 僕は、小さく、「オオモリくんみたいな人って、他にいるのかな……?」とこぼす。イズミくんも、黙り込んでしまう。


 この映画制作プロジェクトが始まってから、”監督”と呼ばれることが度々あった。最初は恥ずかしくて仕方なかったけど、イズミくんやソウタくんが、プロジェクト成功のために一生懸命動いているのを見て、照れている場合じゃないと、気持ちを引き締めたばかりだった。

 監督なら、プロの監督なら、人選に私情を持ち込むだろうか。

 答えは、”否”だ。


「分かった」

 僕は、顔を上げて、決意に満ち満ちた表情で、宣言した。

「一応、念のため、オオモリくんに、話をしてみよう。どうせ、断るに決まってる。万が一、いや億が一、了承されても、プロデューサーに会ってもらって、プロデューサーにOKをもらえるとも、決まってないしね」

 イズミくんは、「前向きなんだか、後ろ向きなんだか……」と、ため息まじりに言った。


 次の日の放課後、オオモリくんに声をかけて、二人で話がしたいと持ち掛けた。オオモリくんの周りにいた、サッカー部員たちには、すごい目で睨まれたけれど、オオモリくんは「いいけど」と言って、僕についてきてくれた。

 人気のないところに行って、話を切り出した。映画の主演というのは、いかに難しくて大変で面倒で責任が重くつまらなくて最悪な仕事であるか、強調しながら話をする。

「だ、だから、ぜ、絶対に、い、嫌だと、お、思うし、ぜ、全然、こ、こ、断って、もらって、構わない、ん、だ、だけど……」

 ど、どうかな? と、小声で付け加える。緊張でドモりすぎて、話しきるのに時間がかかった。でも、これだけ言って、断らないわけがないだろう。

「いいけど」

「え」

「だから、いいけど。映画、出ても」

 人生で一番、神様を呪った瞬間だった。


 オオモリくんと、(渋々)連絡先を交換して別れた。戻ってきた僕の表情を見て、イズミくんは、無言で合掌した。


 その夜のことだ、オオモリくんからメールが来たのは。

 タイトルは、”拝啓 コバヤシ様”。

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