サヨナラ、小さな罪
ダメだ。やっぱり、書けない。
ノートパソコンのキーボードの上に置かれたまま、しばらく手の動きが止まっていた。大きな溜め息をついて、諦めて畳の上へと仰向けになった。布団を剥がした夏仕様の炬燵の上で、古いノートパソコンが書きかけの小説を表示したまま、健気にユーザーの帰還を待ち続けていた。パソコンのファンの音が、小さく唸っている。
「腰痛え~……」
寝転がりながら、腰を反らせてみたり腕を万歳してみたりして、凝り固まった肩や腰を少しでも解そうと足掻いた。炬燵と座布団のコンビは、長時間の作業にはやっぱり向いていない。やる前から分かってはいたことだ。
やっぱり、図書館に行けば良かったかな。
ここから一番近いのは通っている大学の図書館で、そこなら机も椅子もちゃんとしたものがあるから、腰への負担も少ないだろう。けれど。
あいつに、会いたくない。特に、今は。
正直に行って、大学に顔を出すのは少し憂鬱だ。知っている人に会いたくない。特に、サークルの連中には。
卒業に必要な単位はほぼ取り終えているし、うちの大学は卒業論文も希望者が取り組むが、俺は希望していない。よって、これから卒業までの約半年は、サークルやバイトや卒業旅行……そういう今しか出来ないことに精を出せる。
……就職先が決まっていれば。
もう一度大きな溜め息をついて、両手で顔を覆い、何度思い出したか分からない、あの時のことを回想する。〝あの時のこと〝というのは、所属している文芸サークルでのことだ。
それほど名門でもない大学の、それほど古いわけでもなく、それほど大規模でもない、有名な作家を輩出した訳でもない、ごくありふれた文芸サークルに所属している。
活動内容は、サークルで年に四回発行している部誌への寄稿と、その発行のための編集作業など。一応、週に一度〝活動日〝と銘打ち集まる日は決まっているが、部誌発行前や学園祭直前などの忙しい時期以外は、暇な者達だけが集まり、お喋りに興じたり、小さな部室に歴々と引き継がれている漫画を読みふけったり、そのままカラオケに行ったり飲みに行ったり……。
要は、年の大半は、大学生らしく適度に遊びながら、ゆるゆると青春を謳歌している文化系サークルだ。
サークルメンバーは、以下のように大別される。
①大学内での居場所を求めて所属している、ライトなメンバー。部誌への寄稿は短編だったりエッセイだったり、はたまた寄稿はせずに完全に飲み会や遊びにだけ参加したり。そんなメンバーも当サークルは歓迎しており、サークル内の半分くらいはこのライトメンバーが占めているとかいないとか。
②作家になりたいと公言している、ガチなメンバー。部誌への毎度の寄稿は勿論のこと、人によっては他所の文学賞に応募してみたり、作家になるためのスクールに入り、大学とダブルスクールをしていたりする。会うたびに「〆切がやばい」と頭を抱えている場合が多い。当然だが、彼らの書く文章は非常にレベルが高く、部誌のクオリティーと厚みを高めてくれる、当サークルにとって非常に重要なメンバー。このガチメンバーは体感2~3割くらい。
③将来、編集者になりたかったり、出版社に入りたかったり、そういった就職を見据えて参加しているメンバー。部誌発行の際は、寄稿はしなくても校正や編集作業等を目を輝かせながら進めてくれるので、そういった作業は得意ではないメンバーからすると神様のような存在。このメンバーも体感2割くらい。
そして、俺はというと……。
「おっす」
部室で何人かで駄弁っていると、ヨシノが入ってきた。時間からして、4限の授業終わりだろう。部室にいたメンバーから思い思いに、「おう」とか、「おつー」などと、返事が返った。
「何、何の話してんの」
背負っていたリュックサックを下ろし、ヨシノがソファに座っていた俺の隣にドサリと腰掛けながら聞いた。俺は、「合宿の話。今年はどこにするよ?って」と答える。ヨシノが「マジ? 早くね?」と言うと、「早くない! うちの部最大のイベントなんだから!」と、今年の合宿担当がピシャリと言った。ヨシノは笑いながら、「違いない」と答えた。
今は3月。〝合宿〝とは名ばかりの、実際は観光や海水浴などのアクティビティ、花火や肝試しに興じる、ただの〝サークル旅行〝は例年8月頃。行き先は国内だから、旅行の計画にしては確かに早い。
それだけ俺達は、遊びに本気なのである。
「場所もだけど、日にちも決めるのが大変なんだよね。皆、夏までには内定もらって就活終わらせといてよね」
合宿担当が全員に言い含めるように言った。「そんなこと言われましても……」とか、「フラグ立てんなよ~」といった、不安の言葉がそれぞれから溢れた。
ここに集まっている者のうち、半分は3年生だった。3年生の3月と言えば、話題の多くを就活が占める。会うたびに、就活情報を交換しあっている。
この日も、合宿や就活についてああだこうだと話し、あとはこの間終わった期末試験について少しだけ話した後は、ゆるっと解散となった。誰かが、「ご飯行く人~」と手を挙げながら参加者を募る。俺も手を挙げて参加表明をした。ヨシノは、「ごめん、俺パス」と短く告げた。俺が「なんだよ、またスクール?」と聞くと、「そ」とだけ返ってきた。そして、「マツダ、明日時間あれば飯行こうぜ。また読んでほしいのがあるんだよな」と言ったので、「おけ。じゃあ、いつものとこな」と、ヨシノと頻繁にたむろしているファミレスの名前を挙げた。会話を聞いていた、今夜の食事会参加者を募った女子が、「相変わらずラブラブだね~、牛丼コンビは」と笑う。
ヨシノとマツダ。俺の苗字が少し違っていれば、有名牛丼チェーン店のTOP2が揃ったのに……。ということで、俺達はまとめて〝牛丼コンビ〝と呼ばれていた。俺達は声を揃えて笑った。俺達はその呼び名が全く嫌いではなかった。
翌日の夜、いつものファミレスでヨシノと待ち合わせた。ドリンクバーを各々頼み、1つの山盛りポテトを二人で摘まみながら話をするのも、いつものことだ。
「これ、また頼めるか」
ヨシノはそう言いながら、ダブルクリップで纏めた、A4用紙の束を差し出した。「あいあい」と軽く答えながら受け取る。
話を聞くと、今回のA4用紙の束は、某文学賞に応募するためのものらしい。俺はヨシノから度々、印刷した自作小説を渡され、誤字脱字や明らかな間違いを、付箋紙を貼りつつ赤ペンで書き込みつつ、指摘する手伝いをしていた。今回のもそれだ。
作家になりたいと公言し、そのためにはダブルスクールも厭わず、寝る間も惜しんで小説を書いている。ヨシノは、紛うことなく、②のガチメンバーだ。
「助かるよ。何度も読み返して、もう絶対に間違いはない!って思っても、マツダに読んでもらうと、誤字がボロボロ見つかんだもん。凄いよな、本当」
「それ、俺が凄いんじゃなくて、ヨシノの目が節穴なんだよ」
「それな!」
そう言って、ヨシノはカラカラと笑った。
「そういえば、お前も小説更新してたよな。読んだよ。面白かった」
ヨシノが突然、俺が小説投稿サイトに投稿している小説について言及した。俺は恥ずかしくなり、「おお」とだけ言って、ヨシノから目を逸らした。読んでもらえなきゃ悲しいし、読まれても感想がないと不安になるくせに、いざ感想を言われると恥ずかしくなる。我ながら面倒くさい性分だ。
「本当にコンテスト応募しないのか? サイトの画面からポチッとするだけだろ」
ヨシノに聞かれて、「別に、ヒットしてほしいわけでも、作家になりたい訳でもないし……」と、まるで言い訳するかのように、ボソボソと返す。ヨシノは、ふーん、と言った後、「勿体ねえの」と呟いて、冷めたポテトを口に運んだ。
正真正銘、紛うことなき②のガチメンバーであるヨシノとは正反対に、俺は、〝心の奥底で、作家になれたら良いな、と思っているが、難しいことだと分かっているので、別に作家になりたい訳じゃない、と予防線を張る〝という、④隠れ作家志望メンバーである。何割くらいいるかは分からない。だって、〝隠れ〝だから。普段は①のライトなメンバーを装っている。面倒くさいやつだな、というのは、自分で充分分かっている。
〝隠れ〝な俺にとって、堂々と〝ガチ〝をやっているヨシノは、とても眩しく、時に妬ましく思えた。俺はどうしても、作家志望を公言しておいて、最終的になれなかったら……と、周りの目を気にしてしまう。
でも、ヨシノならきっと、卒業までにチャンスを掴めなくても、関係する仕事に就けるだろう、という気がするし、仕事をしながらも書き続けるだろうし、例え最後まで作家になれなくとも、「ダメだったわ!」と言って、カラカラと笑うのだろう、と思える。そして、誰もそんな彼のことを笑わないし馬鹿にしないだろうと確信が持てる。そんなヨシノが、羨ましかった。
「とにかく、続き楽しみにしてるわ。あれ、もう結構クライマックス近いよな?」
「そうだけど、また最初から書き直したくなってきた……」
「またかよ!」
ヨシノがツッコむ。俺が、お得意の〝書きかけ小説を完結させられない病〝を発症したからだ。いつも、ラストに近づくにつれて、「これ、本当に面白いのか? オチが予想されてて、皆、早く終われよ、って思ってるんじゃないか?」という気がしてきてしまい、筆が止まってしまう。俺の悪い癖で、なかなか治らない。
ヨシノは、「とにかく終わりまで書けー! 話はそれからだー!」と言って、俺の肩をガクガクと揺すぶった。そして、「完結作品じゃないと、どこにも応募できないんだぞ!」と付け加える。
俺は、「だから、どこにも応募する気はねえって!」とツッコみ返した。
4月になり、すっかり数も少なくなった授業の後、バイトも予定もないので、部室でノートPCを開き就活サイトを見ていると、スマホが震えてメールの着信を知らせた。見ると、件名が「ご応募作品の佳作受賞について」とあった。思わず、「えっ」と小さな声が漏れた。周りで漫画を読んだり同じくノートPCに向かったりと、思い思いに作業をしていたメンバー達がチラリとこちらを見たのが視界の端で分かった。
慌ててメールを開き、本文を斜め読みした。心臓がドクドクと鼓動を速めていた。大要を掴むと、ノートPCを荒々しく閉じ、リュックに入れる間も惜しみ、小脇に抱えたまま、慌てて部室を出る。ドアを閉める直前に「お疲れ!」とメンバー達に声をかけ、「お、お疲れ……」と、少し戸惑っているような声を背中で聞いた。
ヨシノが教室から出てくると、すぐに俺に気づいて、「おっす」と声をかけながら近づいてくれた。俺がニヤニヤしてることに気がついたようで、「え? なんだよ?」と訝しむ顔をした。手招きして、廊下の突き当たりの、人が少ないところへと誘導した。
大人しく後ろをついてきたヨシノに、スマホを渡し、先程のメールを読ませた。
それは、大学内で催されている文学賞で、俺が応募した作品が、約10作品の佳作の内の1つに選ばれたことを知らせるメールだった。
メールの内容を理解したヨシノが、バッと顔を上げて俺を見た。驚きと喜びに満ちた顔で、「お前……! 応募してたんなら言えよ!」と、笑顔で怒ってくれた。俺は思わず、ふへへへへ、と、我ながら気持ち悪い笑い声を漏らした。
「え、なになに、これ俺読んだことないよな? 読ませろよ!」
「まあまあ。来月には冊子が発行されるから、それまで楽しみに待ちたまえよ」
「ムカつくわ~。でも、分かった、来月の楽しみにするわ!」
ヨシノはそう言って笑ってくれた。
「あ~、早くサークルのやつらに言いたいな~。皆絶対に喜んでくれるぜ」
「まあ、来月冊子が出たら、部室にソッと置いておこうかな」
「分かった。20冊くらい確保してきて部室に置くわ」
「やめろやめろ」
「全部ペンネームに蛍光ペン引いて、付箋も貼っとくわ」
「マジでやめろ」
やいのやいのと言いながら、スクールに行くために駅へ向かうヨシノと一緒に外を歩く。大学を出てから、商店街を通ってずっと歩くと駅へ着く。俺は商店街を途中で右折して抜けたところにあるアパートに住んでいるので、そこまでは一緒に歩くことが出来る。
商店街を歩いていると、骨董品屋の前で、ラジオ体操をしている老人がいた。骨董品屋の店主で、普段は店の奥の小上がりでずっと本を読んでいるが、この時間の体操が日課らしく、この時間に通りがかると、この体操をお目にかかることができる。いつもの光景だ。
分かれ道で、じゃあな、と言ってヨシノと別れた。俺が〝隠れ作家志望〝であることは、ヨシノにしか明かしていない。ヨシノにだけは、話をしていて本当に良かった、と思った。でなければ、すぐにこの喜びを誰かに伝えることは出来なかった。アパートまでのいつもの道を、スキップで帰った。
5月末、文学賞の受賞作を集めて掲載した冊子が発行され、大学内の各所で配布された。早速一部貰ってきて、一人の時にこっそりと捲った。佳作は冊子の後ろの方にまとめて掲載されており、自作の題名とペンネームを見つけると、急に恥ずかしさが限界を突破して、思わず冊子を閉じてしまった。もう一度恐る恐る開き、確かに自作が佳作を取っていることを確認した。
更にページを捲ると、冊子の一番最後には、審査員からの各作品への講評と、受賞者からの感謝の言葉が載っていた。佳作なので、大賞受賞者よりもずっと文字数は少ないものの、俺の言葉もしっかり載っていた。
思わずニヤついてしまってから、冊子をリュックに丁寧にしまい、部室へと向かった。
部室に着くと、すでに何人かメンバーがいた。いざとなると受賞のことを言い出すタイミングが掴めず、そわそわしたまま、冊子はリュックの中に入ったままだった。
最後に部室を出るようにして、その時に冊子を置いていこうかな、と考えて、必死で平静を装ってPCをいじっていると、ヨシノがいつものように、「おっす」と挨拶をしながら入ってきた。目が合うと、思わず含み笑いをしてしまったが、ヨシノは特に笑わず、涼しい顔のままだった。表情を抑えきれない俺とは大違いだ、などと考えていると、ヨシノに「マツダ、ちょっと良いか」と呼ばれた。
部室から廊下に出ると、ヨシノがドアを閉めて、控えめの声量で「あのこと、もう皆に言ったか」と聞いてきた。「まだ。なんかタイミング掴めなくてさ」と答えると、少しホッとしたように「そうか」と言った。お披露目の場にいたかったのか?と、考えた。
「このまま外に出れるか?」とヨシノに言われ、「え? なんで?」と返すと、「ちょっと話がしたい」と言われた。頭の中は疑問符だらけだったが、特に予定もなかったので、「良いけど……」と答え、部室から荷物を取り、ヨシノに続いて外へ出た。
商店街に入るまで、ヨシノは無言だった。俺は隣で、受賞のこと、ヨシノから皆に上手いこと言ってくれないかな、などと、甘えたことを考えていた。
暫くしてから、ヨシノがやっと口を開いた。
「あれ、読んだよ」
「そうか」
やっぱり、〝読んだ〝報告は、何度経験しても、来ると分かっていても、照れくさかった。
「朝、大学に来て真っ先に貰ってきて、授業始まる前にすぐに読んだ」
「ありがとう」
ここで、沈黙の時間が流れた。少し不安になる。ヨシノは、〝読んだ〝報告の後は、すぐに「面白かった」の言葉を付けてくれる。今回はそれがなくて、そわそわして、思わず聞いた。
「……つまらなかった?」
「いや。というより、お前らしくないなと思った」
「ああ、なんだ」
やっと腑に落ちて、胸を撫で下ろした。
「ほら、俺ってさ、いつもラノベとかライト文芸もの書いてるだろ? でも、あの文学賞って結構純文学系じゃん。だから、ラノベ系じゃ通らないかなと思ってさ。純文学に挑戦してみたんだ」
「ああ、そうだったな」
「な? 俺、いつもラノベばっかり読んでるからさ、純文学書けるか不安だったけど、いつもヨシノの小説読んでたから、それを思い出しながら書いてみたんだ」
ヨシノへの感謝の意も込めて、伝えた。
ヨシノは、ふと足を止めて、俺を見た。俺も思わず足を止めて、ヨシノを見つめ返す。
「でもさ、似すぎじゃん」
「は?」
「似すぎじゃん。俺が前に書いて、お前に読んでもらったやつに」
「そうだっけ」
「そうだろ」
「……じゃあ、ごめん。別に似せるつもりはなかったんだけど。ヨシノの小説が、頭の中に無意識に残ってたとかかも」
「どうだか」
ヨシノは、珍しく苛立ったように吐き捨てた。思わず、俺もムッとしてしまう。
「んだよ、それ」
「だから、無意識とかじゃなくて、意識してパクったんじゃねーのって言ってんの」
「はあ? ちげーし。なんでそんなことしなきゃいけねーんだよ」
「お前が自分の力でラノベ以外は書けねーからだろ」
「はああ? んだよそれ。意味分かんねー」
「自分で書こうとして、書けねーから俺のを思い出してパクったんだろ?」
「ちげーよ!」
思わず大きな声が出た。商店街を行き交う人達が、俺たちを振り返るのが分かった。でも、一度堰を切ってしまうと、止められなかった。
「そもそも、なんでお前の作品をパクってまで応募しなきゃいけねーんだよ。そこまでして、あんな賞欲しくもねーし」
「お前っていつもそれだよな」
ヨシノの表情が険しくなったのが分かる。
「本当は作家になりたいくせに、そんなことないふりして。賞が貰えたら嬉しいくせに、あんな賞だなんて言って」
図星だ。思わず、グッと言葉に詰まった。絞り出した、「……俺は、お前みたいには、なれないから……」という言葉は、我ながら、弱々しかった。
暫くの間、ヨシノは無言で俺を睨んだ。
「分かった」
俺は、ヨシノを真っ直ぐに見つめながら言った。
「お前の小説のことなんて忘れて、正真正銘、俺の言葉で、小説を書く。書いてみせる。それで、お前のなんてパクらなくたって書けるって、証明する」
あと、と付け加える。
「卒業までに、俺の小説で賞を取って、デビューしてやる。就活もやめる。俺は、お前みたいに、バイトも就活もスクールも、なんて器用に両立出来ないから」
そこでやっと、ヨシノの表情が苦々しくなった。
「おい、就活は続けろって」
「うっせー。どうせやるなら、全力でやる。じゃないと、俺には、無理なんだよ!」
そう吐き捨てて、ヨシノは捨て置いてアパートへと駆け出した。
そして、今に至る。
あれ以来、ヨシノとは連絡を取っていない。会うのが怖くて、部室にも顔を出していないし、楽しみにしていた合宿も、不参加にした。
この小説を完成させて、そして小さくても良いから何かの賞を取って、無実を証明したかった。でも、焦れば焦るほど、何もあたまに浮かんで来ない。就活を進めていないことも、焦りを増加させた。
畳の上からむくりと起き上がると、もう一度大きなため息をつき、キーボードへと、ノロノロと手を伸ばした。
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