ひとつの人生と複数のレール」
珈琲みるく
第1話 壊れたブレーキ
翌日は、私の気持ちを無視するかのようによく晴れていた。
しかし…。穏やかな温かさが私の心を癒す。
部屋の掃除が終わり、お茶の準備を支度する叔母の近くで
新聞を静かに読み進める、おじさんがいる。
昨日の今日で、まだなんとなく全体が落ち着かない。
時間まで、色々と書類などを叔母は整理し始めた。
ー。「ごめんください。」
男の人の声がした。
おじさんが、新聞を乱暴にたたみ、声のする玄関先までいった。
「どうぞ、お上がりください。」
男の人は黙って深く頭を下げた。
私の顔を見た途端、
「こんにちは」
と、少し微笑んでいた。
その、男の人は、細身で背も高い。
優しい印象を持ったものの、どこかだらしなさを感じた。
「この度は、本当にありがとうございました」
途端に正座をし、おじさんと叔母さんに深く頭を下げた。
「お久しぶりです。いいんですよ、別に。私の姉ですし、
姉の財産で今回の事は収めたわけですし。」
「はぁ…」
男は困りながら返事をする。
「でも、あんまりなんじゃありませんか?姉は、ずっとあなたを
必要としていたんです。待っていたんです。」
叔母の怒りは止まらない。
「昨日もよく来れたことです。主人に言われたからとて、今日も…
どうゆうおつもりなんですか?」
「まぁ、ちょっと」
おじさんが手を広げながらなだめた。
「悦子の今後の事。まだ3年ってこともある、親のそばに
いることが必要と感じてだな、本田さんを今回お呼びした事だ」
一呼吸置くと
「悦子こっちに来なさい」とおじさんが大きい声で私を呼んだ。
この人が私のオトウサン…
すっかり小さく座っている父の顔を改めてみた。
ひとつの人生と複数のレール」 珈琲みるく @coffee-beans07
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ひとつの人生と複数のレール」の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます