第30話 ある日、彼女の歌がラジオから流れてきた

# 30

 — ノートの切れ端 —


 ある日、彼女の歌がラジオから流れてきた。

 確かジェイタウンで散髪している時だったと思う。それは夢見る女の子の歌ではなく、僕の書いた詩を歌ったものだった。


 ♪

 ワシントン・スクエアはいつも優しい。

 僕らの視線は今もそのベンチの上にある。

 救えなかった言葉たちも、塔も、海も、ずっとそこにある。

 僕たちはパンと肉とチョコレートを食べ、何かを想像し、眠る。

 そして、日々、確実に空っぽになっていく。

 それってとても悲しいこと?

 それでも、僕らは信じているんだ。

 いつかきっと何かを取り戻せるはずだって。

 だからまた、あなたが覚えていたら、また会いましょう。

 いつかまたテレグラフで。


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