第9話 どうだった? わたしの曲

# 9

 — ノートの切れ端 —


 「どうだった? わたしの曲」

 「最高さ。Bメロのアルペジオがアンチテーゼとして効いてる」

 「…………」

 「間奏の反復も思索的だよ」

 「あなたっていつもそんな風なの?」

 「そんな風って?」

 「本を読んでばっかり」

 「本は世界だよ。そして、世界は本だ」

 「何のために読むの?」

 「書くためさ」

 「何のために書く?」

 「言葉を探しているんだよ。君に捧げるための」

 「ふうん……ねえ、たまには大声で歌ってみたら? 馬鹿みたいに身体を揺らして踊ってみたら?」

 「それでどうなる?」

 「少しはわかるんじゃないかしら、生きるってことが、愛するってことが、どんなことか」

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