第11話

 エリスさんがシャワーから出た様だ。


 今向こうに行けば、エリスさんの裸体がぁ――……って、いかんいかん。あの人怒らせると何されるか分からないから、気を付けよう。


「服、お借りします」


「あ、良いんですよ。男物ですみません」


 そもそもこの家に女物何て無いしな。今は我慢してくれ。


「いえ、男物でも構いませんが……消毒ってしてありますか?」


「俺は汚物か!汚くないですよ!」


 潔癖なのかな?そうだよね?単に俺の事が嫌いとかじゃないよね?!


「そうですか……では、有難くお借りしますね」


 そう言って冷蔵庫に向かい、缶コーヒーを取り出し、自然な流れでそれを飲んで居る。


「そう言えば、エリスさんの世界ってコーヒーってあるんですか?」


 あの真っ白な世界で缶コーヒーが出て来る事は考えづらい。いや、あるのかも知れないけどね。


「ふぅ……コーヒーは初めて口にしましたが……そうですね。アラビカ種のコーヒー豆を直火焙煎で仕上げて、1~2日後にミルで挽いて、そうですね……あまり贅沢な事は言えないのでメリタでも良いので、しっかり沸騰させたお湯を沸かし、約1分程冷ましまて。あ、これは温度が高すぎると香りが飛んでしまうそうなので少しだけ温度を下げます。ペーパーフィルターの」

「ちょちょ!待って待って!」


「……はい?どうしました?」


「いや、いくら何でも詳し過ぎませんか?!」


 コーヒー豆の営業の方ですか?!


「いえ、この世界の常識なのでは?」


「違います。寧ろ何言ってるのか理解できませんでしたし」


 その常識とやらを俺にも教えてくれ。


「……そうですか……」


 エリスさんが少し考えてるみたいで……。


「いや、まぁ、そこまで深く考える事でも無いですけどね?」


「てへぺろっ」


「いや、そんな真顔でてへぺろされても。つーか、それも常識では無いですからね?」

 

 誰だよ、こんな適当な常識を吹き込んだ奴は!


「違うのですか……難しいですね。あぁ、そうでした。質問の答えになって無かったですね。コーヒーは私どもの世界には存在しません。と言うよりも、そもそも飲食はしないです。必要在りませんから。ですが、この世界に来てからそれが必要な身体になったようです。責任とってくださいね」


「いや、誤解を招く言い方!つーか、俺のせいでは無いですよね?!それに責任とって嫁に貰いたい位ですよ!」


 あ、しまった。最後完全に余計な事を言ってしまった……。


「あ、あの、エリスさん?最後のはその何て言うか「ノーサンキューです」……え――」


 被せて断って来たよ。いや、まぁ俺が悪いな今のは。うん。


「と、とりあえず、今後はエリスさんも飲食の必要があるって事で……元々エリスさんの服とか必要だと思ってたのですが、食料品も買いに行きましょう」


 兎にも角にも、エリスさんの服が優先だな。あと、下着か。……下着は流石に俺では選べないもんな……。まぁ、店員さんが何とかしてくれるでしょう。


「高橋さん、私はこの世界で必要な貨幣を持っていないのですが」


「はい、そこは俺がどうにかしますので」


 仕方ない。それ位はどうにかしますよ。


「見返りは何もないですよ?」


「分かってますよ。そんな事気にしないで下さい」


 まぁ、それなりに蓄えもあるし、服の一着や二着余裕でしょうよ。




 俺はこの時、女性の服の値段があんなにするとは思って無かった訳だけども。


 

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