第7話
シャワーを浴びてさっぱりスッキリした俺は、Tシャツとジャージに着替えて、タオルで髪を拭きながらリビングに戻ってきた。
さっきは気が動転してて気付かなかったけど、エリスさん。Tシャツの下、何も着けてないですよね。
「いや、それはホントにヤバイって。童貞を殺しにかかってるよ…。」
Tシャツの胸の部分の膨らみを凝視する訳にもいかず、無かった事にして台所に向かう。息子さんが反応してますが、必死に鎮める。色んな意味で身体に悪いわ。
とりあえず?保存食(普通のカップ焼きそば)の封を空け、お湯を沸かす。
いつもお湯が沸くまでスマホをいじって時間をつぶしているので、反射的にスマホを捜そうとした。
「そういえばエリスさん、スマホ返してもらえますか?」
あっちに居る時に、半ば強引に没収されたのを思い出した。結局何で没収されたんだ?
「はい、こちらはお返し致します。」
すっ、とスマホを差し出してきた。今、どっから出したの?
「有難う御座います。で、なんで没収されたんです?」
エリスさんは、一瞬思案して答えてくれた。
「あちらの世界にオーバーテクノロジー。つまり存在しない機械を持ち込むのは世界のバランスを崩しかねない。とのうえからの指示です。ですが、折角異世界に行って頂いているので、同じ様な機能をあちらで使える様にしておきました。」
「あれ、持ち込みNGなんですよね?」
「そうです。なので、スマホを使用しないでも画面が見える様になってます。」
「はい?」
「こちらに帰還する時にスクリーンをタッチしたのでは?」
あぁ、あのノイズっぽくて良く分からなかった「はい・いいえ」ね。
あれ、帰還しますか?って質問だったんだ。いや、スマホにそんな機能無いって。
いいえを選んでたらどうなってたのかは考えたくないな…。
「現在も見えるはずですよ?使い方をお教えしませんでしたっけ?」
「聞いてませんし、そんな時間無かった気もしますよ?」
この人、色々ワザとやっているのではないか?
「メニューオープンと言って目の前に画面を想像してください。」
「え、そんな感じ?メニューオープン!」
VRMMOみたいなメニュー画面を想像したよね。自分から1メートル位の距離に半透明のメニュー画面。あ、どっちかっていうとドラ〇エかな。
すると、はっきりと画面が浮かんできた。
・ステータス
・念話
・メッセージ
・スキル
・アイテム
・???
???って何。ってか、UIくそすぎないか?いつの時代よ。
「まぁ、メニューオープンとか言わなくても見えるんですけどね?」
「何で言わせたんだよ!」
アカン。完全に遊ばれてるわ。
で、一応弄ってみる事にした。軽く触れる(実際には触れていないけど)だけで項目が開くみたいだ。
・ステータス
名前:たかはし ひかる
年齢:26
職業:企業戦士
LV:1
HP :31/31
MP :5/5
体力:F
攻力:F
魔力:F
俊敏:F
運 :F
魅力:F
特技:腹痛
称号:神巫女の加護
:召喚されしもの
:腹痛の闘志
ははは!オールFだってさ!これが笑わずにいられるかい?!職業の企業戦士も意味わからないけど、社畜とか書かれるよりは随分マシか!LV:1なら仕方ないよね!
特技腹痛ってなによ、特技じゃないでしょが!いや、良く腹痛になるけども!
召喚されしものってのは何となく分かるけど、神巫女の加護ってなに?エリスさんの事かな?腹痛の闘志ってなんだよ。不屈のじゃないの?ねぇ、バカなの?人のステータスってここまで自由なものなの??
「ふっ、オールFって。」
今、鼻で笑ったよ?!この人!ショック受けてるんだから止めて!
・念話
対象が存在しません。
・メッセージ
対象が存在しません。
何これ。使えねー!
「念話とメッセージは、こちらの仕様に切り替えられますよ?」
との事で、意識すると確かに切り替わった。
・通話(念話)
・LINE(メッセージ)
試しにLINE開いてみたら、スマホと同じ画面が出てきたよ。
これは凄い!どうなってんの!?
「一応こちらの世界とリンクさせておきました。ですが、こちらで使用するのは止めておいた方が宜しいかと。何もない空中に指を這わせて、独り言とか。絶対通報されます。試してもいいですけど。」
と、エリスさんから有難いご助言を頂戴した。
確かに。普通の人には画面が見えないから、明らかに不審者だわな。スマホあるし、そうそうこっちで使う事は無いか。
お湯が沸いていたので、カップ麺に注ぎ、話しているうちに3分経っていた。
食べながらメニュー弄りを再開する。
・スキル
〇異世界移動 0/1
〇鑑定 1/1
〇異世界移動はさっき使って帰って来たから0みたい。召喚されたのに勝手に帰って来ちゃったよ…。いっか。
〇鑑定っていったら、指定した人とかモノの情報を見れるってやつかな。
「私を鑑定するのは止めた方が宜しいかと。」
「えーっと、しちゃったらどうなります…?」
「二度と帰ってきたくないのだと判断して、スマホ機能を凍結の上、私とのリンクを切断。及び記憶の抹消。二度と関りがない様に手配をさせ「大丈夫で!しません!」……そうですか。残念です。」
セーフ!まだ鑑定してません!危ないよ!
って、残念って何?見た方が良かったの?それとも二度と関りがない様にしたいの?!
「はぁ。鑑定はまた後でにしますよ。」
気を取り直して。次いこ、次。
・アイテム
現在、重要アイテムは所持してません
・???
未開放
なるほど。
分からん。
一言で言うなら、昔のRPGのノリで作ってあるって事ね。
「メニューってエリスさんが作ったんですか?」
「そうですね。知識が無いので、ネットでそれっぽいのをググりました。」
ググりましたって…、ググったんだ。。
「ん?エリスさんが作った?あのふざけた特技と称号も?」
「何の事を仰っているのか分からないのですが。」
あれ?違うの?ちょっと疑ってしまったよ。ごめんね。
「それはそうと高橋さん、余計なお世話かもしれませんが一つ宜しいですか?」
何だろう、改まって。
「はい、何でしょう?」
エリスさんは何時になく真面目な顔でこっちを見た。少しドキってした。だって、この人本当に可愛いんだよ。
「イヤらしい画像はスマホに保存しない方が宜しいかと。」
俺は一瞬頭の中が真っ白になる錯覚を覚えたよ。勝手に見ちゃあかんヤツですよ。彼女とかであっても駄目!ぜったい!なやつです。いや、彼女じゃないけど。
「スマホのロック…どうやって突破したんですか…。」
「ちょちょい。って。」
ちょちょいって。表現が古いって。何でもアリか。
「……勝手にデータ見るのはマナー違反ですからね?」
負け惜しみみたいなセリフになっちゃったよ。
「コスチュームがお好きなんですね。」
余計なお世話だよ!
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