第四話

「パパ、僕やっぱり夢をあきらめない。だから剣を教えてほしい。そしてノアと一緒に学園に行くよ」


 アルトがリビングに入ってきた瞬間、グランの方を見て言った。

 それを聞いたグランたちは、少しでも元気になった安堵感と、現実的なことを告げなければならない罪悪感に阻まれた。


「アルト、前向きな気持ちになってくれたことに対して、お父さんたちはすごくうれしい。剣だっていつでも教えてやる。だが、学園にいかせることはできない。あそこには、剣と魔法の実技試験がある、しかしアルトは魔法を授かっていない。だからほかの道を選んでほしい。なんなら俺たちの防衛団にも入って……」

「ちがうのグランおじさん!アルトは加護持ちだったの!」

「加護持ちか、だがそれがあったとしても魔法は使えない。」

「パパ見ていて。」


 そう言うとアルトは窓の外に向かって手を広げた。


『風よ。我の声に答え、目の前の敵を振り払え【エアーショット】 』


 手のひらから空気の球を撃った。そしてそれは間違いなく、風属性魔法【エアーショット】だった。

 ありえない状況にノア以外の皆が驚きを隠せなかった。


「それは風属性魔法!?どうしてアルトが。」


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「英雄の加護?」

「アルト加護持ってるの!?いったいどんな効果!?」

「見てみるね。」


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 英雄の加護


 ……どんな状況に立たされようとも、勇気と希望を忘れない者を力へと導く。


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「力へと導く?どんな加護か、さっぱりわからないや。」

「で、でもアルトの夢の人からの加護なんだから、絶対に力になってくれるよ!」

「うん、そうだね!あっ、そういえば学園の実技試験に魔法があったよね。僕、鑑定士だから覚えてないや……。」

「アルト、学院行けないの?」

「うん。でも学院に行けなくてもパパと剣の練習して、ノアを守れる英雄になるよ。」

「ん!頑張ってね。でも、アルトと離れるのは嫌だな……」


 そういってノアは僕の手を強く握った。僕も離れたくはない、けどノアが学院に行くことは止めることはできない。なぜなら竜騎士だから。僕は何もできない悔しさに心が痛かった。


「ねえノア、風属性魔法を見せてくれない?」」


 なぜこんなことを言ったのか僕にはわからない。でも魔法という僕たちを阻むものをこの目に見たくなったんだと思う。


「うん、いいよ。」


 ノアは窓を開け、外に向かって手のひらを向けた。


『風よ。我の声に答え、目の前の敵を振り払え【エアーショット】 』


 その瞬間、風の塊が窓の外へと貫いた。


 これが魔法か。それを見ながら、僕も使えたらという淡い希望を抱いてしまった。そんな自分が情けなく感じ、心がより苦しくなった。


「うわっ! 」


 するとその時、スキル【鑑定眼】が発動した。なぜ発動したのかわからず、そして初めの感覚に驚きが声に出た。そして目の前に文字が現れた。


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【エアーショット】


 〈能力〉

 前方に風の塊を放つ。込める魔力量に応じて速さ、大きさが変わる。


 〈使用可能〉

 風属性魔法Lv1


 〈取得可能条件〉

 魔力を込めて詠唱する


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 僕は目を疑った。なぜなら【鑑定眼】は物の性質がわかるだけでありスキルには全く作用しないからである。ましてや能力などはわかるはずがない。


 しかし僕の目の前には能力が書いてあるのである。


 ……取得可能条件?


 信じてみるしかない。僕はノアと同じように手のひらを窓の外に向けた。


「アルト、どうしたの?」


 ノアから見れば、今している僕の行動は理解できないだろう。けどせずにはいられなかった。

 困惑するノアを横目に。僕はすべての魔力と希望を込めて唱えた。


『風よ。我の声に答え、目の前の敵を振り払え【エアーショット】 』


 するとノアのよりも2倍大きく、そして速い風の塊が出た。


 魔法が打てた。その事実に僕はどうやって表したらいいのかわからない喜びに浸った。

 そして少したって横のノアがおどろきのあまり僕の体をゆすり始めてきたときに声が出るようになった。そして僕は叫んだ。


「僕は魔法が使えるんだーー!」


 僕の心に希望の光が差した気がした。

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