第三話
鑑定士とは、物を見るだけでその性質を理解することができる「鑑定眼」のスキルを習得できる唯一の職業である。
昔は解明されていないものが多くありそのスキルの能力から、鑑定士とは万物の知識をお与えになる神の使いとまで言われていたこともあり、どの職業よりも重宝されていた。
しかし、現在は教会があらゆる物を解明し本に記すことで人々が鑑定眼を持っていなくとも知識を得ることのできる環境となってしまった。
そのため教会から鑑定士はこのホープレイには必要なしとされ、唯一のランク0と評価された職業である。
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「えっ…… 嘘なんで……」
この時、僕の英雄になるという夢が目の前で崩れた音がした。
その後、30人の審議が終わり、ガランとリズと別れ家に帰宅した。その日ランク0の職業であったのはアルトだけであった。
「パパ、どうしてアルトがランク0なの!なんでアルトなの!?」
「ノア静かにしなさい。」
「アルトはずっと英雄になりたいって言ってたんだよ!それなのにこんなことあったらダメだよ……。それに私は学院に行くのに、なんでアルトは一緒じゃないの?こんなことになるなら私……竜騎士なんて職業いらなかった!」
「ノア黙りなさい!それ以上いったら許さないぞ!」
「 ……パパなんて大っ嫌い!」
ノアは泣きながらリビングを出て行った。
「ほんとうにすまんグラン。うちの娘が失礼なことを、親として謝罪する。」
「大丈夫だから顔を上げろよ。それにこんなにもアルトのことを思ってくれる子がいてあいつは幸せものだよ。」
「そう言ってもらえるとありがたい。その大丈夫かアルト君の様子は。俺たちに何かできることがあるかい?」
「アルトは強い子だ。時間がたてば元気になるはずだ。ダビル達にはこれからも変わらずにアルトと仲良くしてやってほしい。それが今の願いだよ。」
「もちろんそのつもりだよ。」
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「ねぇアルト入ってもいいかな?」
ノアはアルトの部屋の扉の前で尋ねてみたが、返事は返って来なかった
心配になったノアはそっとドアを開けた。そして目に映ったのは、部屋の本棚の前で泣きながらいつもの本を読んでいるアルトの姿であった。
「ねぇノア……僕これからどうしたらいいのかな。」
「アルト……」
「知っているノア?鑑定士って戦闘能力が全くない最弱の職業って言われてるんだって。やっぱり僕、英雄になれないのかな……」
「そんなことない!アルトならなれるよ!」
「なれないよ!もう僕は英雄になることはできないんだ……。ノアはいいよね竜騎士でさ。」
「そんなことない!私だってこんな職業… 」
「こんな職業?一番強い竜騎士が?そんなこと言わないでよ……。僕にはもう無理なんだからさ。こんな本……!」
その瞬間、アルトは自分が持っていた本を破ろうとした。
「アルト、それだけは絶対にだめ!」
「なんで、手を放してよ!僕は……僕はもう」
取り合いになり、ノアはアルトから本を奪った。そして本をとられないように
自分の後ろに隠した。
「なんで僕の夢をあきらめさせてくれないの?」
「あきらめたらアルトじゃなくなっちゃう。」
「どうして?あきらめても僕は僕のままだよ。」
「私の知っているアルトは!優しくて、何かに夢中になると誰の声にも気づかないくらい集中してるその姿がかわいくて、みんなと仲が良くていつも笑ってて、私といつも一緒にいてくれる。なによりいつも英雄になることを夢見てる人なの!」
「ノア……」
「だからアルト、元気になってよ……。そしてまた私に英雄になる夢の話してよ。」
僕は思い出した。ノアはいつも僕のそばにいてくれることを。
みんなが僕の夢の話を聞いて無理だと言うけど、ノアだけはいつも僕の夢の話をそばで聞いてくれて、そしてそれが叶うと信じてくれたことを。
なんで僕はノアを泣かしてるんだろう。僕のことを一番信じてくれる人を。
「ごめん、僕が間違ってたよノア。」
「アルト……?」
「僕は英雄になる夢をあきらめない。そして絶対に叶えて見せる!だからまた僕の夢の話をそばで聞いてくれない?」
「うん!ずっとアルトのそばで聞く!」
窓から、光が差し込みノアの笑顔がより一層、美しく輝いていた。
そうだ僕は一人じゃない。僕のことを信じてくれるノアもいる。最弱の職業といわれようともそれを受け入れて、ノアを守れる英雄になってみせる!
そう心に刻み、アルトは自分を受け入れるためにステータスオープンと唱えた。
「なにこれ?」
「どうしたのアルト?」
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名前 アルト・ルーベンス
種族 人間
職業 鑑定士 ランク0
性別 男
レベル 1
体力E(0)
魔力E(0)
筋力E(0)
頑丈E(0)
敏捷E(0)
器用E(0)
知性E(0)
幸運E(0)
職業スキル
「鑑定眼」
ユニークスキル
「瞬間移動」 「言語理解」
スキル
アイテムボックスLv1 幸運上昇Lv1
加護
「英雄の加護」
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そこには神羊の紙には記載されていなかった「加護」が存在していた。
「英雄の加護?」
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