第13話 エピソードタイトルの話
今回の私の「空を走る」、お気づきの方も多いと思いますが、エピソードタイトルはすべてJ-POPの歌詞から引用しています。
これ、使ってみて思ったのですが、名の売れた作詞家の人のワーディングセンスはやっぱり抜群なんですよね。短い字数で情景から心情までビシッと表現している。舌を巻きました。さすがだ、と。自分が小説書くようになって改めて作詞家の描写力というものに感服しました。
ということでそれぞれご紹介しておこうと思います。
第一話のタイトルは米津玄師の「レモン」から。
あの日の悲しみさえ あの日の苦しみさえ
そのすべてを愛してた あなたとともに
胸に残り離れない苦いレモンの匂い
雨が降りやむまでは帰れない
今でもあなたはわたしの光
この曲は、米津玄師自身の作詞作曲です。全部歌詞を読んでも具体的に何があったのかはイマイチ謎なんですが、雨が降ってるのとか今でもあなたは、とかレモンが苦いとか、「あなた」と「わたし」が別れてしまった(それもどことなく死別っぽい)ことが伺えますね。これをロック系の曲でオーソドックスなBメジャーのキーのメロディに乗せてます。暗いけど明るい、幻想的だけどパワフルな、過去を悔やみつつ前向きな、そんな複雑な感情が見事に曲の中で表現されています。
第二話はTMネットワークの1987年の曲、「Come back to Asia」から。作曲は木根尚登、作詞は小室みつ子です。
灼けつく大地の彼方 水へ向かう旅人に
乾いた砂が 足跡焦がして
君をあの街に残し わがままな夢をたどる
転がる石に なりきれないまま
30年以上前の曲ですが、この詞、すごくないですか? これだけの字数で雰囲気から心情まで全部が盛り込まれています。そのまま長編小説の書き出しに使えてしまいます。小説として普通に描写するとこれだけで1万字かかりそうですが、それを60字で表現しきってしまっているという。若き作曲家小室哲哉は天才でしたが、作詞家小室みつ子もまた天才でした。ちなみにこのお二方、血縁・婚姻関係はまったくないただの同姓の人なんだそうです。
曲はシタールっぽい音のシンセサイザーとドラムのロールスネアがいかにも中央アジア的な雰囲気を出しています。ご興味のある方、一度聞いてみてください。動画貼っておきますね。
https://www.nicovideo.jp/watch/sm32876261
ともかく、描写という観点から見るとこの歌詞はすごいと思うのですよ。
第三話は絢香の「にじいろ」から。絢香ご本人の作詞作曲です。
あなたが笑えば誰かも笑うこと
乗り越えれば強くなること
ひとつひとつがあなたになる 道は続くよ
これから始まるあなたの物語
ずっと広く道は続くよ
虹色の雨降り注げば 空は高鳴る
NHKの朝の連ドラの主題歌に使われていましたので、聞けば「ああ、あの曲か」と分かる方も多いと思います。朝ドラのオープニングだけあって、朝にぴったりの元気が出る曲です。若干歌詞が説教臭い気がしないでもないのですが、まあそれは仕方ないとして。お天気雨の虹をバックにした情景にバシッとはまりました。今回の筆致企画のお題のためにあるような曲です。
ホーンセクションとアコースティックギターのスリーフィンガーが軽快な曲調です。雨上がりに傘を振り回しながら少女がスキップして歌っている光景が目に浮かぶようですよね。
第四話は森高千里の「雨」から。ご本人の作詞です。
ひとつひとつ消えてゆく雨の中
見つめるたびに悲しくなる
傘もささず二人黙っているわ
さようならわたしの恋
思い切り泣いてあなたを忘れたいけど
今のわたしは遠すぎるあなたが
雨は冷たいけど 濡れていたいの
思い出も涙も流すから
雨は冷たいけど 濡れていたいの
あなたのぬくもりを流すから
私が大学生のときでした。森高千里の大ファンの友人がいまして。その影響でこの曲もよく聞きました。最初、私は森高千里をイロモノやんちゃ系アイドルだと思ってたんですが、この曲を聴いて認識を改めましたよ。これはただのアイドルじゃないな、と。
森高千里は、このころから女性にも人気が出てきました。同性から支持されたら、それはもはやアイドルではなくてアーティストと言えるんだと思います。この曲は大好きでした。
ん? 1990年だとまだ私、大学生になってませんね。ということはリリースしてしばらく経ってから聞いていたということですか。いずれにしろ名曲だと思います。
これも動画貼っておきましょう。
https://www.youtube.com/watch?v=Xa6GMs9j49A
最後に。
本文中にちらっと出した「On a clear day ~You can see forever」 。これは邦題で「晴れた日に永遠が見える」と訳されています。この邦題のトーンがいいですよね。この曲はジャズのスタンダードナンバーになっていて、たくさんの人による演奏があります。
せっかくですんで貼っておきますね。聞いてみてください。
https://www.youtube.com/watch?v=MrBsxPvbEJs
本文中に出てくるサックスとピアノのしっとりジャズと違って、爽やかなボサノバアレンジです。
葉桜あれこれ、ときどき雪熱、ところにより空走 ゆうすけ @Hasahina214
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